おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

甘い囁きが筒抜けに……AI“彼女”アプリで個人データ漏洩 40万人分の会話・画像が外部公開状態に

update:

 甘い言葉、秘密めいた告白——。AIコンパニオンだけに打ち明けたはずの会話が、実は外部に漏洩していた可能性がある。そんな悪夢のような事件が明らかになりました。

 開発者を共有する2つのAIキャラクターアプリ「Chattee Chat」と「GiMe Chat」から、40万人以上のユーザーによる約4300万件のメッセージと、60万件超の画像・動画が外部に公開されていたと海外で報じられています。この規模の情報漏洩は、AIコンパニオン型アプリの信頼性を揺るがすものです。

  • ■ 漏洩した中身 メッセージ、画像、性的コンテンツまで丸見えに

     今回の漏洩を明らかにしたのは、リトアニアを拠点とするサイバーセキュリティ専門メディア「Cybernews(サイバーニュース)」。同社は報道活動と並行して、世界各国の公開サーバやアプリの脆弱性を調査・報告する独自の研究チームを有しています。

     Cybernewsが現地時間10月8日に公表した内容によると、漏洩データには「氏名やメールアドレスなど直接的な個人識別情報は含まれていなかった」としつつも、次のような情報が確認されたといいます。

    ― ― ―

    ・40万人以上のユーザーに関する情報

    ・4300万件超のメッセージ

    ・60万件超の画像・動画(性的〔NSFW〕なコンテンツを含む)

    ・アプリ内購入ログ(例:一部ユーザーは最大で1万8000ドル=約270万円を課金)

    ・IPアドレスや端末識別子

    ・認証トークン

    ― ― ―

     Cybernewsの調査チームは、漏洩の原因を「開発元の重大なセキュリティ不備」と指摘しています。

     問題の2つのアプリを開発したのは、香港拠点のImagime Interactive Limited社。同社はプライバシーポリシー上で「お客様の個人情報とプライバシーの重要性を深く認識し、慎重に取り扱う」と明記していますが、実際には「該当サーバに認証やアクセス制御が一切設定されていなかった」といいます。

     なお、現時点では個人を特定する情報などは確認していないとしていますが、IPアドレスや端末識別子が含まれていたことから、他の漏えいデータと照合されれば個人特定につながるおそれがあるとCybernewsは警告しています。

     本件は8月29日に発見され、9月5日に開発元へ通知。サーバは9月19日に閉鎖されました。また、実際に悪意ある第三者がデータへアクセスしたかは不明なものの、主要なIoT検索エンジンによりすでにインデックス化された状態だったそうです。

    ■ 甘い言葉がバレる恥ずかしさ 見られたくない囁きを見られる恐怖

     「好き」「会いたい」「あなたがいないと寂しい」――そんな告白が、他人の目に触れてしまったら。

     AIコンパニオン型アプリでは、多くのユーザーが相手を恋人のような存在として、甘い言葉を囁き心情を打ち明けています。

     そうしたプライバシー性の高いサービスにも関わらず、起きてしまった今回の情報漏洩。心を預けたはずの相手との会話が、実は外部にも筒抜けだったという事実は、多くのユーザーに衝撃を与えたことでしょう。

     Cybernewsの研究者は「この漏洩は、ユーザーがアプリを完全に信頼して私的な感情を共有する一方で、開発者側のセキュリティ管理が著しく不十分だったことを示している」と厳しく指摘しています。

    ■ 国内にも広がるAIコンパニオンサービス ユーザーは注意を

     そして、このニュースは決して対岸の火事ではありません。日本国内でも、AIと恋人のような会話を楽しめるアプリやボットサービスが増えつつあります。

     こうした体験型AIサービスを使う際には、最低限「プライベートな内容を送信する前に、利用規約・プライバシーポリシーをよく読む」「データ漏洩リスクを念頭に置き、過度にセンシティブな内容はAIに送らない」「定期的に設定を見直し、2段階認証やアクセス権管理を活用する」といった、個人レベルで取り組める対策を行っておくのが良いでしょう。

     AIコンパニオンとの会話は、便利で甘美なひとときかもしれません。ただし、そのサービスを運営しているのは人。どこかでミスを犯し、今回のように情報を漏洩させる出来事が今後また起きないとは限りません。甘い囁きが誰かの目に触れても大丈夫なように、万一に備えて会話はどうか慎重に。

    <参考・引用>
    cybernews「AI girlfriend can’t keep a secret: app leaks intimate conversations of 400K+ users

    (山口弘剛)

    あわせて読みたい関連記事
  • マクドナルド「にんげんっていいな」パロディ巡り勘違い?権利表記に「生成AIかと」
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    マクドナルド「にんげんっていいな」パロディ巡り勘違い?権利表記に「生成AIかと」…

  • ウィキペディアのページビュー
    インターネット, サービス・テクノロジー

    AI時代でウィキペディア苦境 人間の閲覧数8%減、財団が警鐘

  • ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロティカ解禁」方針
    インターネット, サービス・テクノロジー

    ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロテ…

  • ヤマト運輸、元従業員が取引先情報を不正持ち出し 2社に流出、営業活動での使用も確認
    企業・サービス, 経済

    ヤマト運輸、元従業員が取引先情報を不正持ち出し 2社に流出、営業活動での使用も確…

  • OpenAI、新動画生成モデル「Sora 2」発表 アプリで“カメオ出演”も可能に
    インターネット, サービス・テクノロジー

    OpenAI、新動画生成モデル「Sora 2」発表 アプリで“カメオ出演”も可能…

  • ChatGPTの画面(編集部撮影)
    インターネット, サービス・テクノロジー

    OpenAI、ChatGPTに「ペアレンタルコントロール」導入 未成年利用の安全…

  • 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった
    インターネット, おもしろ

    邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くな…

  • 派閥論争に新たな試み きのこ派・たけのこ派を顔判定するAI「MOTHER」誕生
    イベント・キャンペーン, 経済

    派閥論争に新たな試み きのこ派・たけのこ派を顔判定するAI「MOTHER」誕生

  • AI提案の“衣なしケンタ”に異議あり 「ケンタを食べる意味がないやろがい!」(画像はイメージ)
    インターネット, おもしろ

    AI提案の“衣なしケンタ”に異議あり 「ケンタを食べる意味がないやろがい!」

  • 配信サービス上の「AI生成楽曲」を見分けるツール「Spot-if-AI」 95%の高精度で判定
    インターネット, サービス・テクノロジー

    配信サービス上の“AI生成楽曲”を見分けるツール「Spot-if-AI」 95%…

  • 山口 弘剛‌Writer

    記事一覧

    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • チョコクロ尽くしの「サンマルクカフェ福袋」発売 実用的×かわいいラインナップ
    商品・物販, 経済

    チョコクロ尽くしの「サンマルクカフェ福袋」発売 実用的×かわいいラインナップ

  • 「ホリデーマックフルーリー」11月19日より期間限定販売 広瀬すずさん&宮崎あおいさんの新CMも放映
    企業・サービス, 経済

    「ホリデーマックフルーリー」11月19日より期間限定販売 広瀬すずさん&宮崎あお…

  • 「犬も猫吸いをする」ほっこり瞬間 仲良しコンビの日常写真が注目
    インターネット, おもしろ

    「犬も猫吸いをする」ほっこり瞬間 仲良しコンビの日常写真が注目

  • SUZUKI「KATANA」型ピザカッターに1000個限定の新色レッド登場 通販サイトで予約開始
    商品・物販, 経済

    SUZUKI「KATANA」型ピザカッターに1000個限定の新色レッド登場 通販…

  • 3COINS「サンタさんの足跡」レビュー 「本当に来た!」を演出できるワクワクアイテム
    インターネット, おもしろ

    3COINS「サンタさんの足跡」レビュー 「本当に来た!」を演出できるワクワクア…

  • パワーアップした「セブン‐イレブン 福袋 2026」 予約受付が11月18日開始
    商品・物販, 経済

    パワーアップした「セブン‐イレブン 福袋 2026」 予約受付が11月18日開始…

  • トピックス

    1. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…
    2. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    3. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…

    編集部おすすめ

    1. 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月18日18時、新たな投稿を…
    2. 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      俳優の松山ケンイチさんが11月17日、自身のXアカウント「松山ケンイチ(@K_Matsuyama2023)」でユーモア企画「誰も傷つけない悪…
    3. 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月17日、作品の掲載順に関す…
    4. 今年もやってきた“本番環境の事故録” Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      本番環境などでの失敗談が集結 Qiitaの「やらかしアドベントカレンダー2025」開幕

      稼働中のサーバーでの作業ミスによるトラブルの顛末をつづる「本番環境などでやらかしちゃった人 Advent Calendar 2025」が12…
    5. 床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      床掃除はおまかせ!「モップ機能つき生ルンバ」と化すビションフリーゼがかわいい

      頭をぐりぐり動かしながら、床の上を滑っていく1匹のワンちゃん。飼い主さんが「モップ機能つき生ルンバ」と呼ぶビションフリーゼ・せとくんの動画が…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト