おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

えっ!まだキーボードで入力してるの? 2倍速入力も狙える「音声入力」に乗り換えよう

 数年前まで「音声入力」と言えば、誤認識だらけの使い物にならないものでした。しかし今、状況は一変。AIの進化により、日本語で自然に話すだけで驚くほど正確にテキスト化してくれる時代になったのです。

 もはや音声入力は「未来の技術」ではなく、あなたの目の前にある「今日の技術」なのだといえます。

(本稿は、「メルマガの父」として知られる深水英一郎氏による寄稿です)

  • ■ 音声入力が秘める3つの革命的メリット

    ◯入力速度が2倍以上に:
    熟練したタイピストでも1分間に100文字程度。音声入力なら200〜300文字も可能です。速いだけではなくミスも減るという調査結果があります。

    ◯キーボードを打っていた両手を自由に使える:
    資料を見ながら、歩きながら、料理をしながらでも入力できる解放感。

    ◯思考と入力の一体化:
    頭に浮かんだアイデアをそのまま文字に変換できる自然さ。

    ■ 驚異的な進化を遂げた音声認識技術

     こうした音声入力の進化を支えているのは、AI技術そのものの飛躍です。近年では、文章生成だけでなく、音声認識の分野でもAIの性能が飛躍的に向上しています。

     たとえば半導体メーカーとして知られるNVIDIAも、音声認識に最適化されたAIモデルを開発しています。同社が5月1日に公開した最新技術(※1)では、なんと1秒で60分の議事録を文字起こしできるようになりました。1時間分を1秒ですよ!信じられない速さです。

     そして私たちの身近なデバイスも静かに進化を続けています。かつては「認識ミスだらけ」「誤字だらけ」「漢字変換もめちゃくちゃ」だった音声入力が、今では早口でも、ささやき声でも、驚くほど正確に変換してくれるのです。

     「音声入力の時代」は、もう始まっています。

    ■ 音声入力がもたらす「手の解放」という革命

     音声入力の進化が、私たちの生活や働き方にどんな影響を与えるのか?注目すべき変化のひとつが、「手が自由になること」。

     これまでキーボードやタッチスクリーンに縛られていた私たちの手が解放され、入力しながら別の作業ができるようになるのです。

     資料をめくりながら議事録を作成したり、歩きながらアイデアをメモしたり、調理しながらレシピを検索したり。こうした「ながら入力」が実現することで、私たちの作業効率は飛躍的に向上します。

     OpenAIのサム・アルトマンCEOも、2025年春に開催されたテックイベント「AI Ascent 2025」のトークセッションでこのテーマに触れ、音声モードで特に興味深かったこととして「話しかけながらスマホをクリックできるようになったこと」を挙げています。

     さらに彼は、「音声は(ChatGPTにとって)非常に重要」と述べ、将来的により高品質な音声機能が登場すれば、「多くの人が使いたがるだろう」と展望を語っています。

    ■ あなたのデバイスにすでに搭載されている音声入力機能

     もしこれから始めたいと言う場合には、特別なアプリは必要ありません。あなたのデバイスにはすでに高性能な音声入力機能が搭載されています。

     スマホではキーボード上のマイクアイコンをタップするだけ。Macユーザーならfnキーを2回押すだけで起動できます(特にApple Silicon搭載機種は高性能)。Windowsユーザーも、Windowsキー+Hで簡単に音声入力モードに切り替えられます。

     現状では、Apple製品の音声認識精度が一歩リードしています。「あのー」「えーっと」といったフィラーを自動的に除去し、「改行」「まる」「てん」といった音声コマンドにも対応しているのです。Windowsも追いかけていますが、まだ細かい点で差があるようです。

    ■ さらに高度な専用アプリの世界

     OSの標準機能を超える専用アプリも登場しています。私はMac・iOS向けの「SuperWhisper」や、Mac・Windows向けの「AQUA Voice」(※3)を使っています。特に「AQUA Voice」は文脈を理解し、同音異義語も正確に変換してくれる優れものです。

     例えば「短歌」と「単価」の区別。標準の音声入力では混同されがちですが、AQUA Voiceなら文脈に合わせて適切に変換してくれます。これはもう単純な音声認識を超えた、AIによる編集アシスタントの領域です。

    ■ AIが自動修正してくれることでさらに速度UP

     キーボード入力では入力したそのままがテキスト化されますが、音声入力ではAIが間に入ることで多少の言い間違いも自動修正してくれます。

     これはAI検索でも同じこと。少々の間違いがあっても、AIは意図を汲み取って適切に対応してくれるのです。

    ■ AI時代の検索と音声入力の相性

     AI検索では、単語の羅列ではなく文章形式で詳細な情報を伝えることが増えています。AIに与える情報が多いほど、より良い回答が得られるからです。

     そうなると入力量も増加。ここでも音声入力の速さが大きなアドバンテージになります。思いついたことをそのまま話しかけるだけで、詳細なプロンプトが完成するのです。

    ■ 「Vibeコーディング」から「Vibeライティング」へ

     最近、プログラマーの間で流行している「Vibeコーディング」という作業スタイルがあります。これはノリでAIと対話しながらプログラムを作る手法です。

     技術的な知識や厳密な設計よりも、「こんなことをやりたい」という感覚を自然言語で伝えることが重要になります。そのため、音声入力との相性も抜群なのです。

     この流れは「Vibeライティング」にも拡大していくはずです。つまり、AIと会話しながら文章を作り上げていく新しい執筆スタイルです。

     もともとAIエディターは、開発者がコードを書くための支援ツールとして普及しましたが、これはそのまま文章執筆にも応用できます。

     AIとおしゃべりしながら文章を作り上げていく新しい執筆スタイルで文章を書く人は今後増えてくると思います。もしかしたら小説をAIとの対話で書いてベストセラーを出す作家も、もうすぐ登場するかもしれません。

    ■ 音声入力が変える未来のオフィス風景

     このように、音声入力は今後さらに便利でストレスなく使える技術となり、コンピューターになにかをさせる際には音声入力を使う人が増えていくものと思います。となると近い将来、会社のオフィスではパソコンに向かってボソボソ喋る人たちの姿が多数観察されることになるのでしょうね。

     まぁ少し奇妙に思えるかもしれませんが、それが効率的で自然な働き方になるんじゃないかと思います。

     あなたも今日から音声入力を試してみませんか? 一度その便利さを体験したら、もうキーボードだけの入力には戻れなくなるかもしれません。

    <参考>
    ※1:Parakeet TDT 0.6B V2(Parakeet)
    ※2:OpenAI’s Sam Altman on Building the ‘Core AI Subscription’ for Your Life(2025/5/13)
    ※3:AQUA Voice

    【寄稿者 深水英一郎 プロフィール】
    https://x.com/fukamie
    創作者コミュニティ「次世代文学・次世代短歌」の呼びかけ人をやっています。
    ネット黎明期にインターネットの本屋さん「まぐまぐ」を個人で発案、開発運営し「メルマガの父」と呼ばれる。Web of the Yearで日本一となり3年連続入賞。新しいマーケティング方式を確立したとしてWebクリエーション・アウォード受賞。元未来検索ブラジル社代表で、ニュースサイト「ガジェット通信」を創刊、「ネット流行語大賞」や日本初のMCN「ガジェクリ」立ち上げ。シュークリームが大好き。

    あわせて読みたい関連記事
  • 華の会メール・バナー
    PR

    オトナ世代の恋愛マッチング

  • 華の会メール・バナー
    PR

    趣味でつながる30代からの恋愛マッチング \華の会メール/

  • 「ひろゆきに裁判で勝った人」が考える「金融庁が広報動画にひろゆきを起用」したことの危険性
    インターネット, 社会・物議

    「ひろゆきに裁判で勝った人」が考える「金融庁が広報動画にひろゆきを起用」したこと…

  • プレゼンリモコンに電子書籍のページめくりという新しい役目を与えよう(深水英一郎氏寄稿)
    ライフ, 雑学

    プレゼンリモコンに電子書籍のページめくりという新しい役目を与えよう(深水英一郎氏…

  • 泣き顔はどれ?
    社会, 雑学

    「泣き顔」「眠い顔」「よだれ」の絵文字を見分けられますか?(深水英一郎氏寄稿)

  • NFT解説マンガのセリフ、どこが間違ってる? 深水英一郎
    インターネット, サービス・テクノロジー

    NFT解説マンガのセリフ、どこが間違ってるかわかる?(深水英一郎氏寄稿)

  • 図解 組織開発入門 組織づくりの基礎をイチから学びたい人のための「理論と実践」100のツボ 坪谷邦生:著
    社会, 経済

    組織開発の全体像を捉える本——書いた人にきいてみる(深水英一郎氏寄稿)

  • 「ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律」著者:堀元見、ききて:深水英一郎
    社会, 経済

    堀元見1万字インタビュー「ビジネス書って同じことばっか書いてない?」(深水英一郎…

  • ALIFE | 人工生命 ―より生命的なAIへ 著:岡瑞起 ききて:深水英一郎
    社会, 経済

    生命を人工的に再現するALIFEとは——著者にきく(深水英一郎氏寄稿)

  • M5Stack/M5Stickではじめる かんたんプログラミング
    インターネット, サービス・テクノロジー

    M5Stackでビジュアルプログラミングを学ぶ——著者にきく(深水英一郎氏寄稿)…

  • 水上バス浅草行き
    社会, 雑学

    共感をPOPに呼び起こす短歌——岡本真帆歌集「水上バス浅草行き」(深水英一郎氏寄…

  • 短歌部、ただいま部員募集中!
    社会, 雑学

    十代の心の揺らぎの傍に短歌を——著者にきく(深水英一郎氏寄稿)

  • 深水英一郎(ふかみえいいちろう)現代歌人・エッセイスト

    記事一覧

    短歌や詩を書いています。『短歌の日』呼びかけ人 、短歌投稿企画『ついうた』主催 | 笹舟にちょうどよい笹にみとれて川に転落したことがあります | 基本いつでものんきです | シュークリームが好き | 日本でのCGM・フリーミアムモデルの先駆けとなるメルマガプラットフォーム「まぐまぐ」を個人で開発したため「メルマガの父」と呼ばれる。まぐまぐは Web of the Year 年間総合大賞を受賞、日本一のWebサイトとなりました | Twitter https://twitter.com/fukamie

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 短歌の日
    イベント・キャンペーン, 経済

    短歌バトルにクイズも?ネット短歌企画者があつまる「短歌の日」スタート 5月7日ま…

  • 「ひろゆきに裁判で勝った人」が考える「金融庁が広報動画にひろゆきを起用」したことの危険性
    インターネット, 社会・物議

    「ひろゆきに裁判で勝った人」が考える「金融庁が広報動画にひろゆきを起用」したこと…

  • プレゼンリモコンに電子書籍のページめくりという新しい役目を与えよう(深水英一郎氏寄稿)
    ライフ, 雑学

    プレゼンリモコンに電子書籍のページめくりという新しい役目を与えよう(深水英一郎氏…

  • 泣き顔はどれ?
    社会, 雑学

    「泣き顔」「眠い顔」「よだれ」の絵文字を見分けられますか?(深水英一郎氏寄稿)

  • NFT解説マンガのセリフ、どこが間違ってる? 深水英一郎
    インターネット, サービス・テクノロジー

    NFT解説マンガのセリフ、どこが間違ってるかわかる?(深水英一郎氏寄稿)

  • 図解 組織開発入門 組織づくりの基礎をイチから学びたい人のための「理論と実践」100のツボ 坪谷邦生:著
    社会, 経済

    組織開発の全体像を捉える本——書いた人にきいてみる(深水英一郎氏寄稿)

  • トピックス

    1. 松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋は8月19日から一部店舗限定で「担々麺ハンバーグ」を販売中です。鉄板にのったハンバーグに担々麺が…
    2. 7億円の当せん番号決定の瞬間を目撃!「サマージャンボ」抽せん会参加レポ

      7億円の当せん番号が決まる瞬間を現地取材!サマージャンボ抽せん会レポート

      1等・前後賞合わせて7億円が当たる「サマージャンボ宝くじ」と、1等・前後賞合わせて5000万円が当た…
    3. 加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      お笑いタレントの加藤茶さんが、まさかの“自分ゲー”に挑む。テレビ神奈川の新番組「第三学区」(だいさん…

    編集部おすすめ

    1. たいちくんX投稿より

      ゆりにゃさん元パートナー、Xで未練吐露→ネットの反応は冷ややか

      インフルエンサー・ゆりにゃさんの、公私にわたる元パートナーである「たいちくん」こと齊藤太一氏が、8月17日に自身のX(旧Twitter)を更…
    2. 匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名で質問やメッセージを送れるサービス「Peing-質問箱-」が、2025年8月29日をもって終了することが発表された。運営は8月15日付で…
    3. マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗を訪れた記者が感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗で感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドは8月11日、ハッピーセット「ポケモン」のポケモンカードキャンペーンを巡る混乱について公式サイトで謝罪しました。期間限定カードを…
    4. 「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      大学進学や就職で交友関係が広がると、今までの人生で見たことがない苗字を持つ人と知り合いになることがよくあります。見慣れない苗字に遭遇したとき…
    5. 「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      累計販売90万本を超える人気作「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』~おわらない七日間の旅~」が、初めてスマートフォンで遊べるようになり…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト