ウェーハの欠陥検査のスループット向上および化学情報可視化の実現に貢献
株式会社日立ハイテク(以下、日立ハイテク)は、国立大学法人東京大学(以下、東京大学)が開発した高分解能Laser-PEEM*1の半導体製造プロセスへの実用化に向け、共同研究(以下、本研究)を進めており、研究内容を2024年11月12日(火)~15日(金)に京都府で開催されるMNC2024(International Microprocesses and Nanotechnology Conference 2024)において、共同発表します。
[画像: https://prtimes.jp/i/49375/169/resize/d49375-169-d0b01424d3d9556af1c0-0.png ]
Laser-PEEMは、半導体製造プロセスにおいて用いられているSEM*2と比較して高速な画像解析が可能なことに加え、東京大学が開発した高分解能化技術を用いることで素材の持つ化学情報の観察やナノレベルの立体構造の非破壊観察が可能です。本研究では、高分解能Laser-PEEMでの半導体分野への応用について実証実験を実施し、その有用性を確認しました。
今後も、半導体メーカーのお客さまのタイムリーなニーズを収集し、製造・出荷のプロセスにおける課題解決につながる製品としての実用化に向けて、東京大学と連携した研究を継続して実施していきます。
*1 Laser-PEEM(Laser-Photo Emission Electron Microscope):レーザー励起光電子顕微鏡
*2 SEM(SEM Scanning Electron Microscope):走査電子顕微鏡
■背景
半導体デバイスの性能向上とともに微細化・高集積化が進み、現在では極端紫外線(EUV)リソグラフィーを用いてナノレベルの回路パターンが形成されています。デバイスの微細化・高集積化に伴い、製造プロセスでは回路パターンの3次元的な加工精度および局所的な材料特性の変化が、これまで以上にデバイス性能に大きな影響を与えるようになっています。このため、多点かつ多様な検査・計測が必要になっており、今後も検査のスループット向上に対するニーズが高まるとされています。
こうした中、日立ハイテクは高い再現性とスループットによって、半導体製造を支えてきたノウハウを生かし、さらなるお客さまの課題解決に向け、高分解能なLaser-PEEMを開発した東京大学と2020年から共同研究を進めてきました。
■高分解能Laser-PEEMの特長を用いた本研究の実証内容
1.ナノスケールの観察を迅速に実現
Laser-PEEMは、電子線ではなくレーザーを観察対象全体に照射し、観察対象から放出される電子をカメラで取得することで観察画像を取得します。これにより、より広範囲かつ高解像なデータを一括で取得することができ、電子線を走査させるSEMと比較して大幅に検査プロセスの短縮化に貢献できることを本研究において検証しました。
2.素材の持つさまざまな化学情報を観察可能
半導体製造プロセスにおいて、主にレジスト塗布→露光→現像の3つのプロセスがあります。回路パターンの形状を検査するには、現状、現像を経てウェーハ面上に形成される凹凸パターンを検査しています。潜像パターンと呼ばれる、露光直後に形成され、実際の表面上には凹凸がないものの化学的に刻まれたパターンでの検査が可能になれば、歩留まりの向上に貢献できるとされています。本研究では、高分解能Laser-PEEMを潜像パターン観察に適用し、高解像度かつ高スループットで観察可能なことを実証しました。本機能はSEMでは不可能だった技術であり、今後新しい検査市場の創出も期待できます。
3.ナノ構造の非破壊観察可能
高分解能Laser-PEEMは、約10~100ナノメートルの深さを検出可能なことから、ウェーハ内の欠陥の有無やその原因を、非破壊のまま「透かして」観察できることを実証しました。これまで不良の原因解析のためにウェーハを加工して実施していた作業を非破壊で実施でき、今後さらに三次元化が進むとされる中、加工にかかる作業工数の削減と、より高精度な解析に貢献します。
■今後の展望
日立ハイテクは、電子線技術や光学技術を用いた検査・計測装置を提供することで、お客さまの半導体デバイスの開発・量産における多様な加工・計測・検査ニーズに対応してきました。今後は東京大学が開発した高分解能化技術と、日立ハイテクの自動化と安定化技術および幅広いお客さまとのネットワークを組み合わせることで、高分解能なLaser-PEEMを最先端の半導体製造プロセスの検査・計測に適用する可能性を切り拓いていきます。
さらに、観察対象に関する情報をより多く取得できるLaser-PEEMは、半導体分野だけでなく、幅広い分野の産業や基礎科学の研究への貢献も期待できると考えられおり、幅広い社会課題の解決に向けた技術の応用においても研究を進めていきます。
日立ハイテクは、今後もプロダクトにデジタルを加えた革新的なソリューションをタイムリーに提供し続け、お客さまとともに新たな価値を追求・創造し、最先端のモノづくりに貢献します。
■関連情報
本日2024年11月7日、東京大学連携研究機構マテリアルイノベーション研究センター(MIRC)、同大学物性研究所、同大学大学院新領域創成科学研究科より本内容に関連したプレスリリースが発行されました。詳細は以下リンクをご覧ください。
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=24999
■日立ハイテクについて
日立ハイテクは、医用分析装置、バイオ関連製品、放射線治療システム、半導体製造装置、分析機器、解析装置などの製造・販売に加え、モビリティ、コネクテッド、環境・エネルギーなどの産業分野における高付加価値ソリューションの提供を通して、幅広い事業領域においてグローバルな事業展開を行っています(2024年3月期日立ハイテクグループ連結売上収益は6,704億円)。強みである「見る・測る・分析する」というコア技術をベースに、事業を通してさまざまな社会課題解決および持続可能な社会の実現に貢献していきます。
詳しくは、日立ハイテクのウェブサイト(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/ )をご覧ください。
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日立ハイテクと東京大学が半導体分野における高分解能Laser-PEEMの実用化に向けた共同研究を推進
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