「ハブ毛」をご存じでしょうか?自転車の車輪の中央に取り付ける輪っか状のブラシです。特に流行していたのは、1970年から1980年ごろ。車輪をカラフルに彩っていましたが、近頃はめっきり見かけなくなってしまいました。

 そんな「ハブ毛」に情熱を燃やし、今もなお普及のために、ハブ毛の魅力を発信したり、自らハブ毛の販売をしたりといった活動を行っているのはツイッターユーザー「もつなべ」さん。

 一体ハブ毛の何が、もつなべさんの心を突き動かすのか……その魅力について、話をうかがいました。

自転車の車輪についてる「アレ」 昭和を感じるアイテム「ハブ毛」の復刻・普及を目指すもつなべさんの活動に注目

■ ハブ毛の製造終了……それならば自分で作るしかない

 もつなべさんがハブ毛の世界にハマったのは2017年のこと。自転車を購入した際に、友人から「ママチャリを買ったのならハブ毛つけたら?」と提案があったことがきっかけでした。

もつなべさんの自転車

 初めのうちはなんとなく付けていただけでしたが、使っているうちにだんだんと愛着が湧くように。本来の役割である「掃除がしにくいハブを掃除してきれいに保つ」という機能性や、見た目のアクセント、実は大正時代から存在していたという歴史などを調べているうち、気が付けばすっかりハブ毛の魅力にとりつかれていたそうです。

 しかし、その頃目にしたのが「ハブ毛製造の最後の会社とされる三優商会が、ハブ毛の素材がなくなり次第ラインナップを縮小し、あと3年ほどで閉業する見込みである」というニュース記事。心の中に留め置きつつ、それから4年がたった2021年のことでした。ハブ毛の消耗に伴い買い替えをしようとしたところ、同一品が販売されていないことに気がついたのです。

 時の経過を実感すると共に、これからどうしようか……と頭を悩ませていたところ、閃いたのが「自分で作る」という案。すぐに製造方法を調べ上げ、道具を揃えてはみたものの、納得の行くクオリティはそう簡単に得られず。最終的に工場を探して依頼する形をとることとなりました。

■ よりハイクオリティな復刻を目指し、品質向上に努めている

もつなべさんが販売するハブ毛

 現在もつなべさんが販売を行っているハブ毛は、委託製造ではあるものの、単純な復刻ではなく、よりハイクオリティな復刻を実現しています。

 毛材は紫外線に強くて脱色がしにくく、毛が倒れてしまってもお湯につけることでまた毛が立つような素材に変更。芯材も鉄から錆びにくいステンレスに変更するなど、自ら積極的に関わり、品質の向上に一切の余念がありません。

品質にもこだわって作られています

 毛並みも美しく揃っており、まさに現代版ハブ毛と呼ぶにふさわしいクオリティに仕上がっています。鮮やかなカラーも目を引きますね。

■ 「ハブ毛を日本の景色の一部に」 大きな夢を持って普及活動を続けていく

 今ではハブ毛がすっかり生活の一部になったもつなべさん。日本の自転車文化を語る上で欠かせないアイテムとして、存続させていかなければならないという使命感を持って、その魅力を伝える活動を継続しています。

 今後はそのネットワークをさらに拡大し、ハブ毛を再度普及させていきたいのはもちろんのこと、海外から来た人にも「日本の自転車には謎のブラシがハブについている、ハブ毛を見ると日本に来たと感じる」というくらい日本の景色の一部にしたい、そして世界的自転車競技の場で活躍するバイクにもハブ毛がついているのを見たい、と大きな野望を語ってくれました。

 「昔見たことがある」という方がいる一方、「初めて見た」という多いであろう「ハブ毛」。昭和レトロに大きな注目が集まっている現代において、再度爆発的にヒットする可能性を十分に秘めていると言えそうです。

スポーツバイクにも似合います

<記事化協力>
もつなべさん(@motunabe888

(山口弘剛)