お笑い芸人・横澤夏子さんのネタに「結婚式の司会者」というものがあります。新郎新婦が1時間58分遅刻してしまったため、本来2時間の披露宴のところ司会者が残り2分ですべてのプログラムを仕切るという内容です。
そんなお笑いネタのように、怒涛の勢いで行われる結婚披露宴が、世界には存在するようです。
■ 待ち時間は1時間40分、プログラムは10分で完遂!
ベトナム在住の「プロレタリャ*ブルシットジョブ」さん(正式名称は半角カタカナ表記。以下、プロレタさん)がこのほどXに投稿したのは「招待状に書いてある時刻に40分遅れて着いてみたらまだ親族しか座っていないベトナムの結婚式場」の画像。
画像に写っているのは広々とした披露宴会場ですが、驚くべきは空席の多さ。というより空席しかありません。前方、スクリーンがある方に数人が座っている様子はうかがえますが、それ以外はほぼ空席。
開始40分前と言われれば頷ける空席具合ですが、プロレタさんの投稿にある通りこの画像が撮影されたのは「招待状の時刻から40分後」のこと。会場に入った瞬間に「あ、あれ? 間違えた?」と困惑してしまいそうな光景です。
実際、プロレタさん自身も部屋を間違えたかもしれないと焦ったそうで、同時刻に開催されていた別の会場の案内を確認。しかし目の前の空席だらけの空間が、自分が呼ばれた会場であることは間違いなかったとのこと。
投稿後、プロレタさんはツリー形式で披露宴の様子を実況。実際に始まったのはプロレタさんの最初の投稿からさらに1時間ほどあとです。つまりは招待状の時刻から遅れることおよそ1時間40分後のこと。
新郎新婦が入場して披露宴が始まるなり、ケーキカット、シャンパンタワー、両家の両親入場、スピーチ、乾杯といったプログラムが怒涛の勢いで行われていく様子が、短文で綴られています。
そしてすべてが完了するのは、実況開始から約10分後。じ、10分!?
待機が1時間40分、実際の披露宴は10分というなんともアンバランスな時間配分は、日本の場合とはあまりにもかけ離れており、頭の中のクエスチョンマークが止まりません。
■ ネクタイを締めて参加すると逆に目立つ?ドレスコードもゆるい
今回プロレタさんが参加したのはベトナム南部で開催された、友人の結婚披露宴。実はベトナム南部の披露宴はかなりカジュアルで、その時々によって多少の差はあるものの、遅延することは珍しくないそう。平日の昼間に開催されたり、当日いきなり誘われることもあるのだとか。
しかしさすがに1時間40分遅れはレアなのでは……?と思ったので、ベトナム現地メディア「Tuoi Tre News」の記事を見てみると、南部の都市ホーチミンでの出来事として似たような話が報じられていました。記事タイトルの時点で「時間通りに行く? それとも遅れて行く? ホーチミンの結婚式ゲストたちの永遠のテーマ」とあり、すでにそれを象徴しています。
本文では「(みんなが集まらないので)待ち時間が1時間以上も延びた」「時間通りに到着しても始まらない」といった体験談から、「(長く待たされて)イライラしたが、時間通りに到着した自分のせいだ」という悟りの境地に達した人の声。「長い時間待たされた時のため、パーティーの前に軽食をとっておくとよい」といったアドバイスも紹介されています。
夜の披露宴の参加者は、多くの人が午後5時半か6時ごろに仕事を終え、いったん家に帰って着替えてから来るため、結果的に遅刻が多いのだとか。
さらにプロレタさんの話によると、南部はドレスコードもゆるめで、同席していた女性陣の服装はカクテルドレス、オフショルダー、超ミニスカートと多彩。男性陣はポロシャツ、チノパン、サンダルでも問題なし。むしろ、日本の披露宴に参加する気分でネクタイを締めて出かけたプロレタさんは、少し目立ってしまったみたいです。
ただ一方、ベトナム北部は時間通りに始まるとのことで「遅延がベトナムの結婚式文化!」というわけではありません。しかしいずれにせよ、南部と北部でここまで形態に差がつくのは非常に興味深いです。
そして今回のプロレタさんが参加したのは結婚式の中でも披露宴。挙式は別で、当日の朝6時ごろに行われていたそう。朝6時……?
披露宴の開始(招待状に記載の時刻)が17時30分だったそうですから、挙式と披露宴との間はおよそ12時間あります。
いったいなぜそんな間が……と思ってプロレタさんに尋ねてみると「暑いからですね」と非常に明快な理由が返ってきました。
ベトナム南部は1年を通して日本の8月のような気候のため、朝の涼しい時間の挙式が好まれるそう。同じ理由で昼間の披露宴開催も避けられ、夜になるとのこと。なお挙式は披露宴と違い、参加者は全員正装をするそうです。
■ ベトナムの結婚式は複数回行う?
そのほか日本にはないベトナムの結婚式文化として「(結婚式は)だいたい2回ですね」とプロレタさん。ここでいう2回とは挙式と披露宴をそれぞれ1回とカウントするのではなく、挙式と披露宴の1セットを2回行うということを指します。
「新郎新婦それぞれの地元でやる」といった理由があるようですが、今回プロレタさんが参加した式がそれに該当するか不明です。ただあくまで2回が珍しくないだけであり「1回も3回もあります。ご家庭次第です」とプロレタさんは話しています。
しかし日本人的には「結婚式でさえここまで緩いなら、日常生活も同じくらい、あるいはそれ以上に時間の縛りがないのだろうか……」と思ってしまいますが、意外とそうでもないそう。
「時間の縛りが厳しい点は厳しいです」とプロレタさん。夜9時閉店のスーパーが8時45分で入店できなくなったり、オフィスワーカーは定時ぴったりで帰るなど、必ずしも日常生活全てで時間の縛りがないわけではないとのこと。仕事で残業などしようものなら「日本人は時間にルーズだ」と怒られることもあるようです。
「結婚」という同じ慣習を共有しつつも、その実態は国によって大きく異なる。世界の広さを実感するエピソードですね。
世界のみなさんご覧下さい、「招待状に書いてある時刻に40分遅れて着いてみたらまだ親族しか座っていないベトナムの結婚式場」がこちらです。
ドウゾゴカンダンクダサイ… pic.twitter.com/xgiYGWNK6t
— プロレタリャ*ブルシットジョブ (@leo2web) October 12, 2025
<記事化協力>
プロレタリャ*ブルシットジョブ さん(@leo2web)
※正式表記は半角カタカナ
<参考・引用>
Tuoi Tre News「To be on time or not: That is the question for wedding guests in Ho Chi Minh City」
(ヨシクラミク)










































