昨年11月、千葉駅で開催されたイベント「千葉えきまつり」で謎のパフォーマー「DJ駅員ツヨシ」が登場し、卓越したスクラッチで注目を集めました。
その正体は、千葉駅に勤務する現役駅員であり、DJの世界大会で3連覇を達成した偉業の持ち主。駅という日常の空間に新しい風を吹き込んだ、JR東日本千葉支社のユニークな取り組みに迫ります。
■ DJ世界大会3連覇の持ち主「DJ駅員ツヨシ」
千葉駅とその周辺の活性化を目的として、毎年秋に開催されている「千葉えきまつり」。商業施設「ペリエ千葉」「C・one(シーワン)」「そごう千葉店」が主催し、JR東日本、京成グループ、千葉都市モノレールなど千葉駅に乗り入れる鉄道会社が協力しています。
ダンスなどのステージやキッチンカー、体験イベントが行われる中、大勢の人だかりができた一角がありました。
駅員の制服に身を包み、左右のターンテーブルを操って目にも止まらぬ速さのスクラッチを繰り出す「DJ」。駅のコンコースという場所、堅い制服姿とリズミカルなビートとのギャップが注目を集め、スマートフォンを手にその様子を撮影する人も。なんとも不思議な光景はSNSにも投稿され、話題となりました。
突如現れた謎のDJの正体は、「DJ駅員ツヨシ」さん。普段は千葉駅に駅員として勤務し、改札口の案内やきっぷの販売などを担当しています。
そんなツヨシさんのもう一つの顔は、クラブDJ。16歳からキャリアをスタートさせ、DJの世界大会「IDA WORLD DJ CHAMPIONSHIPS」のスクラッチカテゴリーで2020年に念願の優勝を果たし、2022年までタイトルを防衛。世界大会3連覇という驚くべき経歴の持ち主です。
「16歳の時にDJを始め、仕事に支障が出ない範囲で、仕事終わりや休日を利用して活動しています」とツヨシさん。現在も駅員としての仕事と並行して、精力的に活動を続けています。
■ 上司の熱い後押しで「駅内DJ」実現 職場の厚い理解が作り出した晴れ舞台
現役駅員にして現役クラブDJ、インパクト抜群な“二足のわらじ”生活を送るツヨシさん。しかしなぜ今回、駅でDJパフォーマンスを行うことになったのでしょうか。その背景には、上司の熱い後押しがあったといいます。
「DJとして活動していることは上司にも知られており、配属当初から声をかけてもらうことができました」とツヨシさん。現在も活動面において、職場からは厚い理解を得ているそうです。
そんな中、昨年の「千葉えきまつり」でイベント企画を担当していた上司が、ツヨシさんにDJとしての「出演」をオファー。夢のような「駅内DJ」が実現しました。
■ 改札口を通るお客さんがリズムに乗って…… 駅ならではの「ノリ方」に感動
「駅施設を会場としたDJ経験はもちろん初めてだったので、不安と期待が入り混じる気持ちでした」とツヨシさん。機材や場所の選定、音量の設計や司会担当の社員との打ち合わせなど、通常業務と並行しながらの準備に苦労しつつ、同時にやりがいも感じたといいます。
「DJ環境としての駅構内は、クラブなどの施設と比較するととても開放感があり、野外イベントに出演している気分でした。普段はスクラッチパフォーマンスが中心なので、多種多様なお客様が利用する環境での選曲には悩みましたが、同僚や先輩、音楽仲間にも相談し、アドバイスを得ながら選曲しました」
そして迎えたイベント当日。来場者の反響は予想を大きく超えるものでした。
「改札口を行き交う幅広い年代のお客様が、同じリズムに乗り楽しんでいる光景は、DJとしてなかなか経験できない素晴らしい瞬間でした。1日目に小さいお子様から選曲のリクエストをもらい、2日目にその曲をかけたところ、その子も遊びに来てくれていて、とても喜んでくれました。その子の楽しそうに音楽を聴く姿が今でも印象に残っています」
「DJ駅員ツヨシ」のパフォーマンスは大成功。イベント関係者や同僚からも「DJを初めて見た!」「また見たい!」と、多くの応援の声が寄せられたそうです。
■ 次回の開催は未定も「依頼があれば調整していきたい」
現時点では、今後同様に駅でDJイベントを披露する予定はないとのこと。しかし、「地域のお客さまと創り上げるイベント等の出演依頼があった場合は調整していきたいと考えています」とのことです。
アーティスト性を持った現役駅員の才能を見抜き、駅という公共空間でのパフォーマンスを柔軟に実現させたことは、日常の交差点である千葉駅に新しい空気を持ち込み、非常に意義深いことだったと言えるでしょう。
ツヨシさんの活動に理解を示し、ユニークな取り組みを実現させたJR東日本千葉支社の「慧眼」は、今後も私たちを驚かせてくれるに違いありません。駅員という仕事柄、ツヨシさんの顔や姿は非公開ですが、千葉駅を利用する際に「この人が『DJ駅員ツヨシ』かも……」と想像を巡らせるのもまた楽しいかもしれません。
取材協力:JR東日本 千葉支社
(天谷窓大)










































