ドクロの目の中から無数に生えるきのこ。遠目でみると、そのブチブチ感がなんだかトンボの複眼のようにも見えてきます。こちらのきのこを生育しているのは“きのこリウムさん”。その名のとおり、きのこを水槽やガラス容器で育てる「きのこリウム」にとり組んでいます。友人にきのこ鑑賞会に誘われたことをきっかけにきのこ愛に目覚めたのだとか。

 Twitterの投稿では「ドクロきのこが神戸の展示会に向けてウォーミングアップを開始しました」と紹介されており、これ以上に成長するものなのかとそのビジュアルにゾワっとしつつも、きのこの生命力に驚愕してしまいました。

 きのこは一体どのようにしたら生えるのかを聞いたところ、おが屑にきのこの菌を植え付けてブロック状にした「菌床」と呼ばれるものを使い、湿度・温度を調節することできのこを生やすのだそうです。また別の方法として、原木にきのこの菌を植え付けるやり方もあるとか。きのこリウムさんは、その両方の方法を使ってきのこを育てているそうで、特に、原木からきのこの菌を植え付けるやり方は、菌を植え付けてからきのこが発生するまで約1年がかり。かなりの時間がかかるため大変な育て方のようでした。

 ドクロの目から生えているきのこは「エノキタケ」とのこと。スーパーでよく売られているものは、白くて細長く束になっていますが、「本当にこれがエノキタケ!?」と疑ってしまうほどその見た目は、シメジに似ています。しかし、きのこリウムさん曰く「本来のエノキタケはこのような見た目です」とのこと。スーパーで売られているものは、食感の良い柄の部分をわざと長く徒長させて育成したものだそうです。

 きのこリウムさんは観賞用のためにきのこを育成していますが、育てたきのこは食べないのか気になり質問したところ「エノキタケですので加熱すれば食べられますが、真似をされて健康被害がでても一切責任を持てないので“絶対に食べないでください”といつも言っています」と、あくまでも鑑賞用とのことでした。こちらの作品のエノキタケは、発芽してからだいたい5日目の状態だそうで、寿命は1週間~2週間程度とまるでセミの寿命のように、きのこも儚い人生だそうです。

 きのこリウムさんが育てているきのこは、晩秋から冬にかけて発生する種類がメイン。エノキタケのようなきのこは気温が下がってきたら生えてくるとのこと。「湿度はもちろん高く維持する必要があります。苔のテラリウムの中は湿度が高い状態を保てるので、きのこの発生にとっても良い環境と言えます」と、きのこを育てるのには、湿度が一番重要ということでした。

 今までに育てるのが難しかったきのこについて聞いたところ、「ヌメリスギタケ」と「タモギタケ」とか。前者は、広葉樹の枯れた幹や倒木、切り株などに群生し、表面にボツボツとした柔らかい突起が特徴のきのこ。食用としても出回っているそうですが、毒きのこの「スギタケ」や「スギタケモドキ」と似ているため、注意が必要だそうです。後者は、発生させるのがなかなか難しいそうで、うまく育成できても3~4日で成長しきってしまい、その後すぐに枯れてしまうとのこと。タモギタケは、鑑賞用にはどちらかというと不向きなきのこのようです。

 このきのこは育ててみたい!というものはあるか質問したところ「これは不可能に近いので実現は無理だろうと思っているのですが、ベニテングタケのきのこリウムを作りたいです」と、食べると嘔吐、下痢、一時的な精神の錯乱などを起こす強い毒性を持つ毒きのこに挑戦してみたいと好奇心旺盛なきのこリウムさん。2019年2月2日・3日開催の生きたきのこの姿を観賞する「KOBEきのこコケ展2019」で、きのこリウムさんの作品が展示されます。興味がある方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

■KOBEきのこコケ展 2019
【開催日時】2月2日・3日(9時~17時)
【開催場所】花と緑のまち推進センター
【住所】兵庫県神戸市中央区諏訪山町2-8
【URL】https://www.kobe-park.or.jp/hanamidori/
【料金】入場無料

<記事化協力>
きのこリウムさん(Twitter:@kinocorium / Instagram:@kinocorium

(黒田芽以)