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名前の数だけドラマがある?「名前入りカセット展2019」に行ってきた

 子どもの頃、ファミリーコンピュータ(ファミコン)のカセットに自分の名前を書いていた、という人って実は多いんです。ファミコン全盛の時代には友達の家に集まっては一緒にプレイする。ということが頻繁に行われていました。このため、カセットを持参して集まることも珍しくなく、他人のものと間違えない・間違われないためにも書いていたのです。

 そんなカセット1000本以上を展示し、持ち主が現れたら返すイベント「名前入りカセット展2019」が秋葉原のフライハイカフェ(東京都千代田区神田和泉町 1-6-7)で開催されるというので、前夜祭に行ってきました。

  •  「名前入りカセット展2019」を運営している名前入りカセット博物館は、名前の書かれたゲームソフトを持ち主へ返すことを目的とした非営利団体。中古市場を中心に、館長の関純治さん自ら収集・管理し、それらをWEBページにて公開。現在、1300本以上のゲームソフトを保護(登録済は920本)しています。

     その名前入りカセット博物館が、ゲームソフト開発会社のフライハイワークスが秋葉原で運営するフライハイカフェとコラボし開催されているのが「名前入りカセット展2019」。入場無料で11月16日~12月8日まで開催されています。

     前夜祭が行われたのは、開催日前日の11月15日。名前入りカセット博物館館長の関さんやバカタール加藤さん(週刊ファミ通元編集長)、フライハイワークス代表の黄政凱さんが登場しました。

     実は筆者も子供の頃はゲームに夢中で、ファミコンやスーパーファミコン、プレイステーションなど、それぞれ100作品くらい持っていました。そして、もちろん名前もソフトに書いていました。ちなみに、当時、筆者が読んでいたゲーム雑誌は、残念ながら週刊ファミ通ではなく、マル勝ファミコンでしたが……。借りパクされたソフト(友達に貸したままのソフト)もあるため、もしかしたら展示されているかも……と、ドキドキワクワクしながら会場に向かいました。

     フライハイカフェに到着すると、すでに壁一面に名前入りカセットが飾られていました。「ファミスタ(プロ野球ファミリースタジアム)」や「スパルタンX」、「バンゲリングベイ」など、様々なソフトが並べられている中、なぜか「燃えプロ(燃えろ!!プロ野球)」が10本以上ならんだ「燃えプロゾーン」も……。ソフトを見ているだけでも、当時プレーしていたことを思いだし、童心に返ることができます。

     イベントが始まると、関さん、バカタール加藤さん、黄さんの3人がビールで乾杯。アットホームな雰囲気で前夜祭はスタートしました。イベントでは、関さんが名前入りカセットを集めたきっかけや、名前入りカセットにまつわる思い出などが紹介されました。

     そもそも関さんは小さい頃、ビックリマンチョコやミニ四駆などに興味はなく、「ファミコンに全資金(お小遣い)を投じていた」そうで、関さん曰く「学生時代は、友達の家がたまり場になっていて、TVゲームと麻雀漬けの生活を送っていた」とのこと。

     しかし、学生のためお金が無く、やりたいゲームをやることができなかったため、就職してゲーム制作会社で働き始めると、当時やりたかったゲームを買い始め、そのうち「全種類いってみっかぁ……」と、コレクション生活がスタートしたそうです。

     友人と車で遠征もするようになり、ファミコンのカセットを150本くらい集めてくると、ここで問題が発生。レアなソフトが多くなり始め、1本にかかる値段も高くなり、仕事も忙しくなって、コレクションに時間を使えなくなってしまったとのこと。

     そんな関さんでしたが、2003年10月3日、アメリカのサンディエゴで運命的な出会いをします。それが、仕事でサンディエゴを訪れた際、ゲーム店で見つけた「Teresa」(テレサ)と書かれているNES(Nintendo Entertainment System/海外版ファミコン)の「リンクの冒険」でした。これを見つけた瞬間、関さんは当時、名前入りのソフトを避けていたため、名前が入っていたことにガッカリしたのですが、お店を出た時、「ん?待てよ?……名前!!」と閃いたのだとか。

     そして、名前入りカセットを集めようと方向性を変えたことで、関さんのコレクションへのモチベーションが復活。抱えていた問題点も解決しました。

     問題点の1つ目は、お店に足を運んでコレクションすることが楽しかった関さんですが、ネットで買える時代になってしまったことで、逆にモチベーションが下がってしまいました。しかし、名前入りカセットは、お店に行かないと名前があるかどうか分からないので、行く必要があること。

     2つ目は、コレクションにかかる費用高騰の問題。名前入りカセットは、基本的にジャンク品としての扱いのため、100円や10円など、安く手に入れることができました。3つ目は、レア商品になってくると、なかなか対象のソフトが見つからず、コレクションが進まない問題。これも、名前入りカセットは誰も見向きもしないため、どんどん集めることができたとのこと。

     4つ目は、自分以外にもファミコンのカセットは集めている人がいて、その人の方が自分よりも多く集めていたりするなど、隣の芝が気になる問題。この問題も、ライバルがいないため、ノビノビ集めることができました。

     関さんのコレクションの意識が「捕獲」から「保護」に変わった、名前入りカセットとの出会い。関さんの中で決めた名前入りカセット購入のルールは、名字のみやイニシャルのみの場合は300円以内、フルネームだと500円以内、住所や電話番号、悪口など、ユニークなものは1000円以内。さらに、外国人のものや著名人と同姓同名のものは「時価」(基本は購入)とのことです。

     同姓同名の中には、「マツモトヒトシ」や「ナカヤマミホ」、「カトウアイ」などがあり、以前、テレビで取り上げられた時、本人に確認したら、残念ながら松本さんのものではなかったとのこと。また、ユニークなもので言うと、名作ソフト「ポートピア連続殺人事件」のカセットに「コイツが犯人」と書かれてあり、ネタバレしたものもあったそうです。

     名前入りカセットは「考古学」だと語る関さんの、名前入りカセットの醍醐味は「妄想」。カセットに書かれている名前や言葉から妄想することが楽しいそうなのですが、そのうち、その妄想の答え合わせもしたくなり、持ち主に会って返そうという気持ちが沸き上がってきたとのことです。

     そんな関さんが、今まで出会った名前入りカセットで印象に残っているのが、「S62.3.12 バースデイプレゼント こばやしあきひろ」と書かれた「アスレチックワールド」というファミトレ(ファミリートレーナー)のカセット。このカセットに関さんは「泣ける」の一言。親の愛を感じる1本ですね。

     「名前入りソフトコレクション=人生ドラマのコレクション」と豪語する関さん。名前入りカセットの持ち主が現れた場合、3つのお願いをしているとのこと。それが、「手渡しする」「思い出の話を聞かせていただき、みんなとも共有させていただく」「元の持ち主の言い値で買い取ってもらう」こと。

     しかし、今まで持ち主に返せたのは1例のみ。基本的に、みなさん「いらないから手放した」というのが大きな理由だそうです。言われてみれば、たしかにそうだ……。これまでテレビ番組で取り上げられて本人に会えたり、関さんがニコ生で配信中に持ち主のお兄さんが見て、弟に聞いてくれたりしたこともあったのですが、本人は受け取りを断ったとのこと。

     自分の名前入りカセットを探している人は、「名前入りカセット展2019」で探してみるのも良いかもしれませんね。ちなみに、筆者の名前入りカセットはありませんでした。「名前入りカセット展2019」(入場料:無料)は、秋葉原のフライハイカフェで、12月8日まで開催しています。

    取材協力:名前入りカセット博物館

    (取材・撮影:佐藤圭亮)

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