2020年7月5日投開票の東京都知事選挙。その中のある候補者が、選挙ポスターおよび選挙公報にアニメ「コードギアス」シリーズに登場するキャラクター、ルルーシュを想起させるコスプレ姿で登場していることを受け、制作会社のサンライズが「サンライズおよび製作委員会、作品関係者とは一切関係がありません」と注意喚起をしています。

 2020年の東京都知事選挙には、現職・新人合わせて26名が立候補を届け出、選挙戦を展開しています。選挙運動に関しては、公職選挙法第百二十九条〜第百七十八条の三の規定に従って実施することとなっています。

 候補者はポスター掲示場に第百四十三条に規定された大きさのポスターを掲示し、街頭演説ができるほか、第百四十二条に規定されたサイズ・枚数のビラを配布したり、選挙公報や政見放送において自らの主張を表明したりすることが可能です。特に選挙ポスターや選挙公報については、候補者の政見を忠実に反映させる必要があるため、基本的に候補者の主張がそのまま(選挙公報においては、選挙委員会に提出された原稿のまま)掲載されます。

 自由な主張ができることもあり、各候補者は様々な工夫を凝らしたポスターや選挙公報掲載用の原稿を作るのですが、中には強い印象を残したいがため、奇策を使う候補者も。特に候補者名や政党名の表記、候補者の容姿で“ウケ”を狙うケースがあります。

 今回話題となっている候補者は、アニメ「コードギアス」シリーズに登場する仮面の男、ゼロ(ルルーシュ/のちのL.L.)のコスプレをしてポスターや選挙公報に登場。これに対し、アニメを制作した株式会社サンライズは、以下のような「重要なお知らせ」を2020年6月24日付で公式サイトにアップし、公式Twitterアカウント(@SUNRISE_web)で告知しました。

■2020年東京都知事選における選挙活動について
 2020年東京都知事選において、「コードギアス」シリーズのキャラクター「ルルーシュ」をイメージあるいは強く想起させるコスプレ風衣装によるポスター等を用いた選挙活動を行っている候補者の方がいらっしゃいますが、株式会社サンライズおよび製作委員会、作品関係者とは一切関係がありません。

 これに対し、当該候補者は自身のTwitterアカウントで「ごめんなさい。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」と陳謝。しかし公職選挙法第二百十五条(選挙の自由妨害罪)の規定により、発行されてしまった選挙公報、掲示された選挙ポスターについては、選挙が終了するまで撤回することができません。

 当該候補者は、前回2016年の都知事選挙にも立候補しており、前回以上に強い印象を有権者に与えようと考えた結果だったようです。しかし候補者の反応を見ると、今回はさすがに悪ノリがすぎた、という面があったのかもしれません。

 注目を集めて主張を聞いてもらい、得票につなげるため、選挙の候補者は様々な方法を考えます。選挙戦術はなかなか「正解」の出ないものですが、今回の騒動はそれを象徴するものなのかもしれません。

<おことわり>
当記事は公職選挙法第百四十八条(新聞紙、雑誌の報道の自由及び評論等の自由)の規定に準拠し、選挙の公正を害さないよう、候補者の氏名や政党名については具体的な言及を避けています。

※画像は株式会社サンライズ公式サイトのスクリーンショットです。

(咲村珠樹)