東京都は都民参加型キャンペーン「あしたの東京プロジェクト」を2023年度も実施。その第1弾のイベントとして、10月14日に「多摩グリーンツーリズム」を立川市で開催しました。
イベントでは参加者たちが地元の農業関係者などと交流を深めながら農業体験や地産食材を試食。農業の魅力とその難しさなどを学びました。
「あしたの東京プロジェクト」は東京の「いいところ」をあらためて感じ、新しい魅力を一緒に生み出していくのが目的。今回は、東京で伝統的に生産されてきた江戸東京野菜を中心に、現在も数多くの農産物が生産されている多摩地域でイベントがおこなわれました。
■ トマトや小松菜を収穫
開会式の後、最初におこなわれたのは農業体験。スマイル農園でトマトやラディッシュ、小松菜などを収穫したり、サニーレタスの苗付けを体験したりしました。
スマイル農園の豊泉さんによると、こちらでは年間で45種類ほどの農作物を育てているとのこと。今、サトイモやニンジンなどの値段が高くなっているが、これは9月の台風や種をまいた時期に雨が降らなくて暑かったりしたのが原因。「ニンジンは、これからもずっと高いです。ごめんなさい」などとユーモアをまじえながら説明します。
トマトはピンクの目印が付いているものが収穫可能なもの。参加者たちはハサミを持ちながらピンクの目印があるトマトを探します。みなさん夢中になり、豊泉さんが「僕の話、聞いていませんね」と突っ込む場面も。
ラディッシュや小松菜なども「どれが良いかなぁ」と選びながら楽しそうに収穫します。収穫する際、あまり強く握ってしまうと折れてしまうので、「優しく」と豊泉さん。収穫体験は終始なごやかに進みます。
ちなみに小松菜の品種には「〇〇み」「〇〇な」など女性の名前が付いているものが多いそう。豊泉さんが好きな小松菜は菜々美。さらに最近の旬な名前の付け方は「はっけい」(八景島)など地名をいれることだそう。
収穫体験が終わると、サニーレタスの苗付けへ。苗は穴を掘って埋めた時に土を親指と人差し指でキュッと押すのがポイント。これで空気を抜くのだとか。成長すると葉っぱが大きくなるので手の大きさ程になった時が収穫時期と説明。「(家で)育ててみようかな」「育っていく過程が見られるのが良い」など参加者たちも楽しそうです。
■ ウド農家へ
農業体験が終わると、須崎農園へ移動してウドの見学。ウドといえば、地中に掘った室(むろ)という大きな穴の中で育てるイメージ。ただ、立川市うど生産組合の宮野さんによると、今の時期(10月ごろ)は室の中にウドは無いそうです。
現在は普通の野菜と同じように畑でウドを育てている段階。その後、冬に栄養が蓄えられた根株を畑から掘り起こして室に植えるのだとか。
実際にウドがある状態で作業をする時は、酸欠にならないようにロウソクに火をつけながら作業をするといいます。ロウソクに火が付いているということは室の中に酸素がある状態ということです。
希望制で参加者たちは室の中へ。3.5メートルほどのハシゴを使用して降りていきます。上と下にはスタッフがいて、しっかりとハシゴを固定していましたが、やはり参加者たちは慣れていないこともあり、恐る恐る慎重に降りていきました。
須崎農園の宮野さんによると、室の中の適温は18度ほど。冬になると温度が低下するのでドラム缶のようなものに薪を入れて燃やし、温度を上げるそう。ただし、20度まで温度を上げるとウドが腐ってきてしまうので、微妙な調節が難しいそうです。
室の中を体験した参加者たちは、「案外、狭かった」「土が粘土のようだった」「にゅるにゅるしていた」などの感想をもらしていました。室の中に入った子どもたちからは「もう1回、入りたい!」という意見も。初めての体験に嬉々としていて興奮した様子でした。
■ 農家さんと一緒にランチ
貴重な体験を終えた参加者たちはランチタイムへ。立川の農業関係者たちと立川の野菜やお肉を使用したお弁当を食べるランチ交流会がおこなわれました。
お弁当には古川畜産の「柔豚(やわらとん)」というブランド豚を使用した料理も。脂身が甘く柔らかいのが特徴です。その他にも参加者たちが収穫を体験したスマイル農園の小松菜がおひたしになっていたり、伊藤養鶏場の卵を使用した玉子焼きがあったり……。ブロッコリーや長ネギも地元の農家さんが作ったもの。
参加者たちは同じテーブルについた農業関係者の人たちに様々な質問をしながら、和気あいあいと食事を楽しんでいました。食後のデザートには立川の柿も。皮ごと食べられて柔らかく、参加者たちの顔も自然と笑顔になります。
■ 立川は都内有数の農産地
お腹がいっぱいになった後は立川市産業振興課の小室さんによる立川農業をテーマにしたトークセッションがおこなわれました。
小室さんによると、立川市は農地面積や総農家数、農業産出額などが北多摩17市の中ですべて1位。都内でも有数の農産地だそうです。立川市の農地は旧砂川地域に集中。五日市街道に沿って櫛型になっており、街道に面した部分は住宅地に。住宅地を抜けると農地が広がっているそうです。
スマイル農園の豊泉さんに野菜の特色について話を振ると、「なんでもある。なんでも作れる」と回答。日本の中心に位置していて気候が良いので、多くの野菜を作ることが可能と語ります。
果物について小室さんは梨やブルーベリー、柿などが主な特産品だと紹介。ジャムやアイスなどの加工品も増えているそう。特色としては、技術は必要であるものの、野菜と同じようになんでも作れること。
畜産は立川市内に肉牛1軒、乳牛3軒、養豚2軒、養鶏2軒の合計8軒の畜産農家があります。お弁当の中に入っていた「柔豚」のほか、「東京烏骨鶏」や「東京軍鶏」、「東京牛乳」などのブランドも。ちなみに立川は植木の生産本数も都内一。ケヤキやハナミズキは全国的にも有名だといいます。
■ 実際に販売されているお店へ
トークセッション後は、多摩地域で廃棄予定のペットボトルを再利用したペットボトルランタンのワークショップを体験。ペットボトルに和紙を巻いてランタンを作ります。参加者たちには和紙とペンが配られ、思い思いの絵を描いたり、文字を書いたりしていました。
イベントの最後は農家さんたちが作った野菜や果物が販売されているところを見学するために、「ファーマーズセンターみのーれ立川」にバスで移動。
店長の小山さんによると、ここには立川ならではのものがたくさん販売されており、先ほど参加者たちがお昼に食べた柿やブロッコリーも販売しているそうです。
参加者たちは、みかんの詰め放題や買い物をしたりするなど、最後に立川の特産品をお土産に、満足そうにイベントを終えました。
取材協力:あしたの東京プロジェクト広報事務局
(取材・撮影:佐藤圭亮)