「思いのほか好評で、試作もほとんど羽ばたいてくれたので、セキセイインコ改良ver口を開けて。ゴマは少し減らしてほっぺの色調整!」

 8月のとある日、Twitterユーザーの黒和@湘南デコッた~ズさん(以下黒和さん)が投稿したのは、まったり佇んでいる「セキセイインコ」たちを納めた写真。

 普段から、趣味である釣りに関するツイートをされている黒和さんですが、少々趣が異なる内容です。一体どうされたのでしょうか。ん、試作?ゴマは減らして?

 実は冒頭のセキセイインコは、本物の鳥ではなく食べ物。和菓子の「練り切り」の技法で作られています。そしてこれを作ったのは、黒和さんご本人。

 黒和さんのもう一つの顔は、神奈川県寒川町(さむかわまち)にある和菓子屋「吉祥庵」の店主。「公式Twitter担当者」として、ご家族で経営されているという吉祥庵の様々な情報を日々投稿されています。

 今回、セキセイインコを練り切りで作ったきっかけを聞いてみると、「元々釣りがらみで、魚の『フグ』を形どった練り切りを7月に作ったんですけど、これをTwitterで投稿したらえらく大反響でして。その反響を聞きつけた知り合いが、『今後は鳥を作ってほしい』ってリクエストされて作ったんです。で、まずは文鳥とオカメインコを作って、そこからのセキセイインコなんです」と、教えてくれました。

 ちなみに、フグの練り切り菓子ツイートも拝見したのですが、フグ独特の膨れっ面や、ピンと横だった尾びれなども見事に再現されたもの。大きさ的に本物ではないとは分かりますが、それにしてものクオリティ。「遊び心もあった」と仰る黒和さんですが、元来の和菓子職人としての技量も、大変に優れておられることが伺えます。

 今回のセキセイインコについても、黄&緑、青&白という独特の羽毛の色が本物と同じ比率で再現され、目元の部分は黒ゴマを使ったりと細かいところまで見事に表現。

 「これでもフグのときよりはだいぶ作業を簡略化してるんですよ(笑)」と、黒和さんは笑いながら答えてくれましたが、2つのセキセイインコに使用している餡にしても、黄&緑のタイプにはゆず餡、青&白のタイプはこし餡と分けており、食べる部分に関してもこだわりが。筆者は以前、製菓関連の仕事に携わっていたことがあるのですが、いやいや十二分に凄いですよとただただ感心するばかりでした。

 実は吉祥庵は、元々は「どら焼き」が一番人気で、練り切りはここまで数が出て行く商品ではなかったそう。しかしながら、フグから始まった一連のTwitterの反響で注文が殺到したとのことで、「何がきっかけになるか分からないもんですね」と、黒和さん自身もこれには大変驚かれたそうです。

 なお現在吉祥庵では、練り切り菓子については数に限りがあるため、種類を取りそろえての購入を希望する方は事前予約が必要。また神奈川県外の方には、昨今のコロナ禍も踏まえて通信販売のみでの対応になります。こちらについても、事前に吉祥庵に連絡をしてからの対応。さらにフグに関しては、通販限定にしているとのことです。

<取材協力>
黒和@湘南デコッた~ズさん(Twitter/Instagram:@kurokazu_45)
和菓子處 吉祥庵

(向山純平)