メディアに「深海魚ハンター」として登場し、これまでに釣りで43種類の世界記録(重量ベース)を樹立している大学生の西野勇馬さんが、また記録を樹立。9月に釣りあげた深海魚のバラムツが、24kgラインクラスでの日本記録に認定されました。
魚の中でも、とくに深海魚釣りに情熱を注いでいる西野さん。2020年9月26日、小網代(神奈川県三浦市)沖の相模湾で開催された深海魚釣り大会で、体長172㎝のバラムツを釣り上げました。
バラムツとしては、大きさの面で自己ベストの大物だった今回の釣果。重さの面でも30kg超はあると見込まれましたが、計量用の秤が壊れてしまったため、一旦冷凍保存して新しい秤が到着した後、計量を実施しました。
結果、このバラムツは34.10kgであることが判明。耐荷重60㎏以下のライン(ミチ糸)であればOKの「オールタックル部門」の日本記録(2013年7月25日に中前悦尚さんが和歌山県白浜沖で釣り上げた34.30kg)には届かなかったもの、使っていたラインの強度別になっている「ラインクラス部門」で、24kg以下クラスでの日本記録に認定されました。
耐荷重の上限が60kgまであるオールタックル部門と違い、ラインクラス部門は、限られた強度のライン(ミチ糸)に対し、どれだけの大物を釣りあげられるかが問われます。耐荷重24㎏のラインで、10kg以上重い34kgのバラムツを釣り上げたというのは、それだけ魚の力を利用しつつ、うまく釣り上げたという証拠。
先日、このバラムツを釣り上げた際の記事でお話をうかがった時、バラムツを食べてみたいという友人のairu@ねこ娘さん(@arinconyanco)と、解凍して食べる予定だと話していた西野さん。お味の方はいかがだったんでしょうか。
バラムツは、その身の中に人間が消化できないワックスエステルという脂が多く含まれており、食べるとお腹を壊す(油脂瀉下)ことから、一般の流通が禁じられています。なので、味については釣ったものを自己責任で食べるしか、確かめる方法はありません。
ワックスエステルの危険性について、よく理解している西野さん。慎重に調理し、微量ずつ味見することにしたそうです。
西野さんは、以前も塩焼きや刺身でバラムツを味見したことがあるとのことで、その時は「危険と言われるくらいなのでかなり美味しかった」そう。今回は趣向を変え、照り焼きにしたそうですが「こってりしたタレを付けたので上手く絡んで これも美味しかったです!」という感想を話してくれました。
初体験となったご友人、airu@ねこ娘さんの感想をうかがうと「大変なことになることを分かっていながらも箸が止まらなくなるほど美味しかった」そうです。
困るのが、この「美味しい」という点です。つまり、お腹を壊すことが分かっていながら、つい美味しくて食べすぎてしまい、後でヒドイ目に遭う……という罠があり、理性のブレーキが必須。一般への流通が禁じられている理由が理解できますね。
西野さんはちゃんとした知識の裏付けがあり、限られたほんのわずかの量だけでストップすることができますが、一般の方は興味半分で食べようとしてはいけません。その点は強調しておきます。
これまで数々の深海魚を釣り上げてきた西野さん。これから狙ってみたい魚種を尋ねると「これまで釣ったことがない深海魚全てです(笑)。その中でも特に釣りたいのがラブカ(原始的なサメで「生きた化石」)、ミツクリザメ、リュウグウノツカイ、ギンザメ(名前に反してサメの仲間ではなく古代魚に近い。歯が鋭く延縄漁のワイヤを食いちぎることも)、オオサガ(漢字では「大逆」と書く。水揚げ時に水圧の急変で目が飛び出るため「メヌケ」の名で市場に流通。筆者が食べた経験からすると美味な白身魚)、アブラボウズ(テレビアニメ「戦翼のシグルドリーヴァ」にも登場した魚で大きいものでは90kgクラスになる。脂がのって美味しいが大量に食べるとお腹を壊すことも)です」とのこと。
ミツクリザメは捕食の際、口が大きく飛び出すという特異な構造を持っていますが「ミツクリザメはすぐに餌を飲み込んでしまう可能性もあるので 針を飲まれないように釣らないといけないので更に難易度高そうです」と西野さん。そのほかにも大きさや生態の特異さから、難しそうな魚種が目立つので、次にどんな深海魚を釣り上げるのか、西野さんの挑戦が気になりますね。
※初出時より内容を一部変更いたしました。食べた感想についての部分で、ご紹介していた方以外のコメントも掲載されておりました。この点、削除するとともに関係者の方には心よりお詫び申し上げます。
<記事化協力>
西野勇馬さん(@nanukazame1)
airu@ねこ娘さん(@arinconyanco)
(咲村珠樹)