2020年の年末、アメリカのロボット企業ボストン・ダイナミクスが、またもや凄いロボットたちのダンス動画をYouTubeに投稿しました。モータウンのボーカルグループ、コントゥアーズ1962年のヒット曲「DO YOU LOVE ME」にのせて、3種類4体のロボットたちが踊りまくる様子には、巧みな制御技術が隠れています。

 2020年12月11日にソフトバンクグループから、韓国の現代自動車グループへと11億ドル(約1130億円)で売却されたボストン・ダイナミクス。年末の12月29日に、およそ半年ぶりとなる動画を公式YouTubeチャンネルにアップしました。

 ロボットたちがダンスする曲は、1962年にリリースされたコントゥアーズ3枚目のシングル「DO YOU LOVE ME(NOW THAT I CAN DANCE)」。全米R&Bチャート1位に輝いたダンスナンバーです。

 ボストン・ダイナミクスの動画タイトルは「Do You Love Me?」となっていますが、曲のタイトル後半部「Now That I Can Dance(ぼくは踊れるようになったよ)」を動画の内容に託した、秀逸なものとなっています。原曲を知っている人からすると、ニヤリとしたのではないでしょうか。

 最初に登場するのは、重量80kgというヒューマノイドタイプの「アトラス(ATLAS)」。プロローグの「君はぼくの心を打ち砕いた……ぼくは踊れなかったから。すごすごと立ち去るしかなかったけど、ぼくは帰ってきた。君、見ててごらん。ぼくは踊れるようになったんだ!」というセリフに合わせてお芝居をします。

 そして、曲が始まると同時に大の字(スプレッド・イーグル)ジャンプ!ダンスが始まります。歌詞に合わせてマッシュ・ポテトやツイストなど、ダンスのステップを軽々とこなす2台のアトラス。ダンスパーティというシチュエーションのようです。


 2台のロボットがシンクロしてダンスのステップを踏むのも優れた制御技術なのですが、さらに4脚歩行ロボットの「スポット(SPOT)」が加わります。異なるタイプのロボットで複雑な動きをシンクロさせるのは、さらに高度なもの。

 この時3台のロボットが見せる「ランニング・マン」というステップは、小さくジャンプしながら両足を前後にスライドさせ、その場で走っているように見せるもの。ジャンプする際の出力制御が適切に実行できるだけでなく、手や脚の動きで重心が狂いがちになるのですが、体幹部分は全くブレていません。

 さらに、箱を持ち運びできる物流作業用ロボットの「ハンドル(HANDLE)」が加わり、ロボットのダンスは3種類・4台に増えます。2つの車輪でバランスを取って動くハンドルは、アーム部分とお尻を振りながら踊ります。

 異なる種類のロボット複数台が強調してダンス(複雑な動き)をするのは、将来ロボットが作業現場で幅広く活動するために必要不可欠な技術。それを分かりやすい形でデモンストレーションしている訳です。

 それぞれのソロパートもあるのですが、ここでは各ロボットがどのように姿勢制御をしながら踊っているかがよく分かります。コマ送りしてみると、動きの中でどこを動かし、どこを動かさないことでバランスを取っているのか、設計思想が垣間見えます。

 すごく楽し気に踊っているように見える4台のロボット。この動きをプログラミングして、撮影するまでにどれくらいの時間がかかったんでしょうね……でも、技術のアピールを楽しい形で分かりやすく見せるボストン・ダイナミクスの姿勢は、技術者としても楽しめるのかもしれません。


 ちなみに、これらのロボットのうち、4脚歩行ロボットのスポットは2020年9月からアメリカだけでなく、カナダ、EU、イギリスを対象とした販売が始まっています。公式販売サイトでのお値段は7万4500ドル(約767万円)で、1000ドルのデポジットを前払いし、6~8週間でお届けとあります。将来は購入したユーザーが、オリジナルのダンス動画をアップする日が来るかも……?

<出典・引用>
ボストン・ダイナミクス YouTube動画

(咲村珠樹)