ほとんど生き物のような動きで知られる、アメリカの企業ボストン・ダイナミクスが作るロボット。制御するアプリケーションをどんどんバージョンアップし、そのたびに私たちを驚かせてくれますが、今度は4脚歩行ロボット「Spot」が踊り始めました。
2018年10月16日にYouTubeで公開された「Up Town Spot」と題された動画。マーク・ロンソンさんがブルーノ・マーズさんと共演した「Uptown Funk」という曲にのせて、ボストン・ダイナミクスの4脚歩行ロボット、Spotがヒップホップダンスを披露しています。
まずは軽くリズムをとったかと思えば、体をひねりながら右前脚と左後脚でステップ。体をひねっているため重心が常に移動して、バランスを取るのはロボットにとっては結構大変なのですが、Spotは滑らかな動きで難なくこなします。
続いて横への大きなステップ。今度は同じ側の脚を同時に上げて、大きく重心移動をしています。この時、体を支えている側の脚は体を押し出す役割も果たしており、動的平衡を保ちながらスムーズに体を平行移動させています。
今度はジャンプしながら体を90度回転させ、カメラに対して横を向く状態に。ここで披露するのはヒップホップの「ランニングマン」というステップ。
このステップ、まず片方の脚を上げた状態から、下ろしながら軸足を後ろへとスライドするのですが、この時軸足で軽くジャンプして体を浮かせ、軸足にかかる荷重を逃しながら動かす必要があります。そして後ろに下がった軸足のあったあたりに、上げた脚を下ろして一連の動きは終了。これを繰り返すステップです。人間だと「体を軽く浮かせる」のは無意識にできてしまう動きですが、これを機械にやらせるための制御はどうやってるんでしょう……。
そしてさらにジャンプしながら正面向きの体勢。左後脚だけをステップしてリズムをとりながら、マニピュレータを伸ばします。続いて体をくねらせるのですが、ものを掴むマニピュレータの先端部分は位置が固定されています。今度は後ろ向きになって、お尻をフリフリ。各関節のモーターがきれいに連携して、滑らかな動きを実現しているのが分かります。
また横向きになったSpotは、後脚だけで体を支えながら前脚を開いたり閉じたりするステップ。自然にやってるので、重心位置をリアルタイムで計算しているということを忘れそうです。
最後はなんと、ムーンウォークをしながらフレームアウト。ランニングマンができるんだから、確かに荷重の量を調整してやればムーンウォークも可能な訳ですが、こともなげにできてしまうことに驚きです。
これほど複雑な動きの制御を「自然に」行っているSpotですが、この目的は人間と同じ環境で協調して動くこと。人間をサポートするロボットに必要な技術なのです。
現在、ボストン・ダイナミクスは竹中工務店やフジタの協力のもと、東京のビル建設現場でSpotを動かす試験を行っています。カメラなどセンサー類とナビゲーションシステムを使い、ロボットが動く上では障害となるものがたくさんある工事現場で、ちゃんと移動ができるかデータを収集しています。
工事現場は部材などによる段差が多く、慣れない人はつまづいたりしてしまいますが、2018年10月11日にYouTubeで公開された動画では難なくクリア。ものが搬入されたりして刻々と変わる環境でも、ちゃんと動線を見つけて歩いていきます。
狭い階段の踊り場も、クルリと回りながら連続して降りて行くシーンも。段差の対処能力が向上していることがうかがえます。
ボストン・ダイナミクスによると、2019年の後半にはこれらの試験で得られたデータをもとに、新しい制御アプリケーションを提供できるようになるとしています。
※画像はBoston Dynamics公式YouTubeチャンネルからのキャプチャです
(咲村珠樹)