おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

深海魚ハンター西野勇馬さんクログチイワシを釣る 相模湾では極めて稀な例

 様々な深海魚を釣ることから「深海魚ハンター」の名で知られる西野勇馬さんが、相模湾でクログチイワシを釣りあげました。

 クログチイワシは、2021年に新種として認定されたヨコヅナイワシの近縁種で、駿河湾での報告例はあるものの相模湾で見つかるのは非常に珍しいとのこと。深海釣りの公式記録では、報告されているものの中では日本初・世界初の例となりました。

  •  西野さんに話をうかがうと、クログチイワシを釣り上げたのは2022年5月29日のこと。神奈川県の葉山マリーナから、同行者1名とともにレンタルボートで出発したそうです。

     普通の釣り以上に何が釣れるか分からないのが、深海釣りの醍醐味。西野さんは「深海“釣”査」と呼んでいますが、この時も世界記録や日本記録の更新に備え、ゲームフィッシングの国際ルールに則った釣法(針数2本以内、リールは手巻き)で臨みました。

     神奈川県真鶴沖の相模湾中央部に到達したところで、仕掛けを下ろします。ラインはPE3号、ハリスはナイロン80号に2本針仕掛け、エサはスルメイカの切り身を使用し、水深750mだったとのこと。

     狙う水深が非常に深いため、時間がかかるのも深海釣りの特徴。クログチイワシを釣り上げた際は「海底に重りが着底するまで約10分、ヒットするまで約15分、巻き上げが24分かかりました。トータルで約40分ほどかかっています」と西野さんは話してくれました。

     深海魚がヒットした際の引きはどんなものなのか、尋ねてみると、意外にもあまり感じられないとのこと。「ただ、海面に上がってきた時は見たこともない魚だったので興奮しました!」と、その時の様子を語ってくれました。

     釣り上げたのは、重量1.15kg、全長54cmのクログチイワシ。クログチイワシはセキトリイワシ科クログチイワシ属に分類され、水深約1000mより深いところに分布していると考えられているそうです。今回は水深750mでしたが、海底から釣り上げられているので、底を伝って泳いできた個体なのかもしれません。

    クログチイワシ(西野勇馬さん提供)

     全体的には黒褐色ですが、頭の後ろの方など体の一部には青や明るい赤褐色の部分も見え、微妙な色合いが重なっているようにも感じられます。

    クログチイワシ頭部のアップ(西野勇馬さん提供)

     駿河湾から採取され、2021年に新種として認定された巨大な深海魚、ヨコヅナイワシもセキトリイワシ科クログチイワシ属。ヨコヅナイワシは今のところ駿河湾のみでしか見つかっていませんが、クログチイワシも駿河湾で捕獲された例が多く、相模湾で今回釣れたことは非常に稀な例なのだとか。

     西野さんによると、クログチイワシを国際ルールに従って釣り上げた例は報告されていなかったそうで、今回の釣果が日本ゲームフィッシング協会(JGFA)によりオールタックル部門での日本記録として認定されました。今後、世界記録の審査結果も出ることになっており、世界記録に認定されるかも注目です。

    クログチイワシ日本記録の認定証(西野勇馬さん提供)

     この個体は「相模湾から採取されたクログチイワシの貴重な例」として、神奈川県立生命の星・地球博物館(小田原市)で魚類を研究している瀬能宏さんに、標本として寄贈されました。まだあまりよく分かっていないクログチイワシの分布や生態について、新たなデータを提供してくれそうです。

     今回の「深海釣査」で、1日3〜4投という限られたチャンスの中、西野さんはクログチイワシのほか、イバラヒゲ(ソコダラ科)、モミジザメ(アイザメ科で「深海鮫エキス」スクワレンの原料ともなる)も釣り上げたのだそう。クログチイワシを釣り上げる様子はYouTubeにも動画がアップされており、未知のものを目にした興奮が伝わってきます。

    <記事化協力>
    西野勇馬さん(@nanukazame1)

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 「深海のゴジラ」ことヨロイザメを釣り上げ世界記録に 深海魚ハンター・西野勇馬さん、48冠達成
    インターネット, びっくり・驚き

    「深海のゴジラ」ことヨロイザメを釣り上げ世界記録に 深海魚ハンター・西野勇馬さん…

  • 口の中からコンニチワ!ノドグロに隠れていた謎の生き物に15万いいね
    インターネット, おもしろ

    ノドグロの口を開けたら…中から“謎の白い生物”がひょっこり

  • 深海魚ハンター・西野勇馬さん 相模湾で2例目となるレア種「マルバラユメザメ」を釣り上げる
    インターネット, びっくり・驚き

    深海魚ハンター・西野勇馬さん 相模湾で2例目となるレア種「マルバラユメザメ」を釣…

  • 深海魚ハンター西野勇馬さんがマルバラシマガツオを捕獲 データのある標本は極めて稀な例
    インターネット, おもしろ

    深海魚ハンター西野勇馬さんがレア種「マルバラシマガツオ」を捕獲

  • 2023年に釣って嬉しかった魚ランキング
    ライフ, 雑学

    釣り人に聞いた「釣って嬉しかった魚ランキング」 タイが1位を獲得

  • イチハラビロウドザメを釣り上げた西野さん
    インターネット, びっくり・驚き

    深海魚ハンター・西野勇馬さん 9月に釣り上げた超激レア深海ザメ「イチハラビロウド…

  • 高速バス車両モデル
    商品・物販, 経済

    「バスでバス釣り」ダジャレみたいなルアー爆誕 西日本JRバスとバス釣り具メーカー…

  • 画像提供:西野勇馬さん
    インターネット, おもしろ

    深海魚ハンター西野勇馬さん 超激レア深海ザメ「イチハラビロウドザメ」を捕獲

  • 浴室に4匹のウナギ
    インターネット, びっくり・驚き

    浴室に4匹のウナギ 「私なら発狂する」「美味しそう」「ウナギ釣りあるある」など様…

  • 深海魚ハンター西野勇馬さん "生きた化石"ギンザメを釣り上げる
    インターネット, 社会・物議

    深海魚ハンター西野勇馬さん ”生きた化石”ギンザメを釣り…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく
    エンタメ, 舞台

    宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

  • 白石麻衣、【フラット35】新CMで魅力をプレゼン 最近の“ハマりもの”も明かす
    エンタメ, 芸能人

    白石麻衣、【フラット35】新CMで魅力をプレゼン 最近の“ハマりもの”も明かす

  • 世界初の4人乗り4足歩行ロボット (c)2025 三精テクノロジーズ株式会社
    イベント・キャンペーン, 経済

    4人乗りロボや対話AIも登場 「ビジネスチャンス EXPO」東京ビッグサイトで開…

  • 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

  • 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み
    エンタメ, 芸能人

    松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み…

  • 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

  • トピックス

    1. この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート

      学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展…
    2. フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造

      フォロワー1万人超の“焼き芋アカ”が美容アカに SNSで繰り返される「アカウントロンダリング」の構造

      SNS上には今日も、「○○が当たる!」といったプレゼント告知があふれています。いまや日常の景色と言っ…
    3. 汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      汗冷え対策は「ヒートテックの下にエアリズム」 ユニクロ公式発の裏ワザが再び話題

      屋内と屋外で寒暖差が大きく、着る服に悩みがちなこの季節、SNS上で「エアリズムの上にヒートテックを着…

    編集部おすすめ

    1. 宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      宝塚・宙組特別メニューから“酢”消える 「酢が退団?」とSNSざわつく

      11月22日午前、X(旧Twitter)のトレンドに「宙組公演特別メニュー」が一時浮上し、ファンの間で大きな話題となりました。きっかけとなっ…
    2. ミラノで開催「IQOS Curious X Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      ミラノで開催IQOS X SELETTI「Sensorium Worlds」現地取材 五感に響いたIQOSの“世界観”

      フィリップ モリスが、イタリアでイベント「Sensorium Worlds」を開催。今回は、この壮大なイベントの模様とともに「IQOS To…
    3. 「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      「シテの花」作者が続報投稿 前担当の不備めぐり編集部と協議、認識を整理

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月18日18時、新たな投稿を…
    4. 松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      松山ケンイチ「誰も傷つけない悪口選手権」を開始 SNS時代に投げかける新たな試み

      俳優の松山ケンイチさんが11月17日、自身のXアカウント「松山ケンイチ(@K_Matsuyama2023)」でユーモア企画「誰も傷つけない悪…
    5. 悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      悔しさと葛藤を語った「シテの花」作者 掲載順問題が大きな反響呼ぶ

      小学館「週刊少年サンデー」で連載中の漫画「シテの花 -能楽師・葉賀琥太朗の咲き方-」の作者・壱原ちぐささんが11月17日、作品の掲載順に関す…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト