2023年8月から導入されたX(Twitter)の収益化プログラム。投稿を行えば収入が得られるという、まさに夢のような仕組み……のはずでしたが、あれから3か月。やはり現実はそこまで甘くなかったもよう。

 11月14日、漫画家の「ぬこー様ちゃん」さんは、自身の「クリエイター収益ダッシュボード」を公開し、「ついに200ドルを割った」と、つぶやいています。インプレッションは変わらないということですが……50万フォロワーを有するぬこー様ちゃんさんでこの状況は……かなり厳しい。

漫画家の「ぬこー様ちゃん」さんは、自身の「クリエイター収益ダッシュボード」を公開

 ぬこー様ちゃんさんが公開した「クリエイター収益ダッシュボード」によると、初回は半年間分が2271ドル、その次が8月5日から19日分が598ドル、次が641ドルと順調に収益を増やしていたことが確認できます。

 9月前半には2週間で974ドルになりましたが、収益はここがピーク。9月後半は658ドル、10月前半は562ドル……と少しずつ額が少なくなり、10月後半には一気に少なくなり233ドル、そして11月前半の最新版では173ドルになっています。

2023年2月1日から2023年11月11日までの各月収益

 収益化の条件とされるのは「X Premium(Twitter Blue)への加入」「3か月で500万インプレッション達成」「フォロワー数500人以上を獲得」の3点。

 ぬこー様ちゃんさんと言えば、Xのフォロワー数は50万人超え、月間インプレッション数は4億にものぼるという、人気クリエイターのひとりであることは間違いありませんが、それでも日本円にして約2万6000円とは。他の方はもっと厳しい状況にあると推測できます。

■ 収益減の原因は参入者の増加とリプbotの存在?

 鳴り物入りで始まったXの収益化プログラムですが、それにしても一体なぜここまで下がってしまったのでしょうか。もちろん参入者が増えた、というのも一因ですが、それ以上にいわゆる「リプbot」と呼ばれるアカウントの存在が増えすぎたことが大きいように感じます。

 本来リプライは、気になった投稿に対しての意見や感想を述べるものですが、リプbotは反響の大きい投稿に対してなら、どこにでも現れ、特に意味のない一言をつぶやいて去っていきます。要は他人の投稿にあやかり、自分の投稿のインプレッションを伸ばすことが目的とされています。

 これでも収益分配が得られてしまうという仕組みであるがゆえ、増加の一途をたどってしまったのでしょうが、本来収益を得るべきクリエイター、インフルエンサーからしたらたまったものではありません。しかもリプ欄が見にくくなるというおまけ付き……。

■ 収益の元になる広告の仕様にも問題が

 また、ぬこー様ちゃんさんは編集部の取材に「広告入れる人が少ないんですかね?」と語っています。収益はもちろんXに表示される広告のクリック数や表示数から発生していますが、これをミュートしたりブロックしたりできる仕様にも問題があるように感じます。さらに最近は詐欺広告も出回っている始末……。

実際にあった詐欺広告(画像に広告表記がないのは投稿ページを直接撮影したため。当初は「広告」がついていました)

 広告主の立場からすれば、せっかくお金を払って広告を出しても、表示を遮断されてはたまったものではありません。これでは広告を出しあぐねる気持ちも良く分かります。ちなみに、ぬこー様ちゃんさんの元にも「広告を出しませんか?」という連絡が頻繁に届くのだとか。

 もちろんもらえるだけでも十分ありがたいものですが、現時点ではその恩恵は一過性のものだったと言わざるを得ない状況。今後リプbotが対策され、広告の仕様が変われば、元に戻る可能性もありますが……いずれにせよ、Xの収益のみで生計を立てていくことは非常に難しいでしょう。

<記事化協力>
ぬこー様ちゃんさん(@nukosama

(山口弘剛)