おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

ちょんまげ頭で面接に合格!令和を生きる侍「とりにく」さんに話を聞いてみた

 ちょんまげと言えば、多くの方が江戸時代の男性にみられた髪型の一種と認識しているかと思いますが、なんとこの令和の世にも、ちょんまげ頭の侍が存在したもよう。彼の名前は「とりにく」さん。

 決してコスプレではなく、日常的にちょんまげ頭で過ごしており、先日はなんとその頭のまま飲食店のアルバイトにも採用が決定したとのこと。Xで大きな注目を集めたとりにくさんに話をうかがってみました。

  • ■ 和服好きが転じてちょんまげを結うように

     とりにくさんのXプロフィールを見てみると、アイコンはにこやかに笑うとりにくさん本人の写真が使われています。もちろん髪型はちょんまげで、和服着用、タイムライン上もその姿であふれかえっている等、本当にちょんまげを愛してやまない様子。

    とりにくさんのXプロフィール

     いったいちょんまげの何にここまで惹きつけられたのかをうかがうと「実のところそこまで深い理由は無く『ただの髪型と思っている』『やりたいからやった』にとどまってしまいます……」との回答が。とりにくさんにとって、この姿はごく自然なことであるようです。

     そのうえで、「あえて掘り下げるならば」と語ってくれたのが、「元々趣味が古かった」というエピソード。「日本人なら一着くらいは和服を持ちたい」という思いから、5年ほど前より日常的に着物を着用するようになり、伸びた髪を殿様風にまとめてみたところ「そうか!ちょんまげにすればいいんだ!」と閃いたのだそう。

    剃髪前のとりにくさん

     それから力士のような剃らないちょんまげ(総髪)を結っていましたが、頭の形に微妙に合わず。トップのボリュームを抑えれば、相対的に奥行きのあるシルエットになると気付いたことから、以降剃髪するようになり、現在の髪型で落ち着いたそうです。

    剃髪前後のちょんまげ姿

    ■ 沖縄料理店に採用決定 もちろんちょんまげのまま勤務

     そんなとりにくさんが、アルバイト面接に合格したとXで報告を行ったのが4月16日。面接前にはきちんとちょんまげでも良いか確認をとり、当日はさらに着物を着用し、現地に赴きます。

    面接時の格好

     あらかじめ写真を送付していた為、実際の面接時も大きな驚きはなく「あぁ本当にこの格好なんだ」といった様子で、淡々と行われたもよう。結果的に採用となったので、とりにくさんの人柄が認められたということでしょう。

     沖縄料理店とちょんまげの相性も気になるところですが、現在はすでに勤務を開始しており、もちろんちょんまげで勤務。接客時も思いのほか極端な反応をされる方は少ないそうで、「まさか店員がちょんまげだとは思いもしないので、何かの見間違いだろうと思われている方も多くいるのでは?」と推測しています。

     一緒に働く従業員や顔見知りのお客様には一貫して、「珍しいし初めは驚くけど、慣れると案外普通というか自然に見えるよね」と好評とのこと。そのうち名物店員として、とりにくさん目当てに来店する方も増えてくるかもしれませんね。

    ■ 意外にも?メリットの多いちょんまげ頭 困るのはかしこまった場面

     それにしても、ちょんまげを結うのはもちろん、維持もとても大変そう。外出する時どのくらいの時間をかけてセットしているのかうかがうと「最低限の形にするだけであれば5分程度、時間に余裕のある時や特別なイベントの際は2~30分ほどかけて結います」と、意外にも標準的なセット時間。

    髪を解いた様子

     さらに、油と元結(紐)さえ買ってしまえば維持できる髪型なので、床屋に行く必要がなくお金の節約にも繋がることに加え、ただ散歩に出かけるだけでも色々な方に声をかけられるので日々退屈しないのだとか。思っている以上にメリットは多いようです。

     一方、お葬式などかしこまった場面ではカツラを被ったり、友人と遊ぶ時にあちらこちらで声掛けや写真撮影を求められるので遊びどころではなくなる、といったデメリットも。髪型に問題があるわけではないものの、否が応でも目立ってしまう……というのはやむを得ないところでしょうか。

     時代を先取り……ではなく、大きくさかのぼってしまったわけですが、服装にリバイバルブームがあるように、ちょんまげや和装が広く一般的に受けいれられる社会になってほしいですね。

    ■ 日本の伝統文化や工芸を存続させる仕事に就きたい 令和の侍の夢は大きい

     アルバイトに応募する前には、大学を中退したというとりにくさん。まさに目前にはさまざまな道が開けているわけですが、今後についてうかがうと「採用いただいたバイト先でコツコツと働きお金を稼ぎ、まずは一人暮らしを」と、実に現実的な回答が。

     もちろんこれだけでなく、その後は「本格的な髪結の技術を勉強しようと思っています、そのかたわら絵のスキルも磨きたいです」といった目標も。今も実際に人の髪を結ったり、学生時代から積み重ねた絵画を継続したりと、自己研鑽に余念がありません。

    とりにくさんが描いた自画像

     さらに、将来は「まだざっくりとしていますが、一つ明確なのが何かしら日本の伝統文化や工芸を存続させる仕事に就きたいということです」とのことでした。

     もうすでに伝統の存続に一役買っていそうな風貌ですが、そのちょんまげ頭の中にはもっともっと先を見据えた絵が描かれているに違いありません。今後の活動にも注目が集まりそうです。

    令和の侍の夢は大きい

    <記事化協力>
    とりにくさん(@tarakosan114

    (山口弘剛)

    あわせて読みたい関連記事
  • 企業・サービス, 経済

    遊女をテーマにした粋な江戸土産ブランド「新吉原」が初のショップオープン

  • イベント・キャンペーン, 経済

    東北道、羽生PA(上り線)に池波正太郎「鬼平犯科帳」の世界が登場

  • エンタメ

    ロンドン大英博物館で「春画」特別展1月5日まで開催

  • コラム・レビュー

    宮部みゆきインタビュー、最新作『桜ほうさら』に込める思いは“家族だけが世界の全て…

  • 【名作映像案内】次郎長富士
    コラム, 雑学

    【名作映像案内】第1回 次郎長富士

  • 【おたく温故知新】第四回 江戸のフルアクションフィギュア
    コラム, 雑学

    【おたく温故知新】第四回 江戸のフルアクションフィギュア

  • 山口 弘剛‌Writer

    記事一覧

    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 伝説のカンフー映画「酔拳」吹替版、YouTubeで1か月限定無料配信
    エンタメ, 映画

    伝説のカンフー映画「酔拳」吹替版、YouTubeで1か月限定無料配信

  • ゼニガメ希望のはずがピカチュウ!? 手作りケーキに起きた“育児あるある事件”
    インターネット, おもしろ

    ゼニガメ希望のはずがピカチュウ!? 手作りケーキに起きた“育児あるある事件”

  • カービィが駅員さんに変身!阪急電車コラボのガシャポン登場
    ゲーム, ニュース・話題

    カービィが駅員さんに変身!阪急電車コラボのガシャポン登場

  • 回し車の裏に「職人」発見 ハムスターの意外すぎる行動に爆笑
    インターネット, おもしろ

    回し車をまさかの手回し ハムスターの「職人」すぎる行動に爆笑

  • 絵本「ねずみくんのチョッキ」シリーズ、初のTVアニメ化が決定 誕生50周年の節目に
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    絵本「ねずみくんのチョッキ」シリーズ、初のTVアニメ化が決定 誕生50周年の節目…

  • 「男児を育ててるな」と実感する瞬間 廊下で壁登りする姿に共感続々
    インターネット, おもしろ

    「男児を育ててるな」と実感する瞬間 廊下で壁登りする姿に共感続々

  • トピックス

    1. 丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      丼にサンマが丸ごと横たわる衝撃 牛角の「秋刀魚ラーメン」実食レポ

      焼き肉チェーンの牛角は9月4日より、サンマを丸ごと一尾のせた「牛角流秋刀魚ラーメン」を販売しています…
    2. 伝説のカンフー映画「酔拳」吹替版、YouTubeで1か月限定無料配信

      伝説のカンフー映画「酔拳」吹替版、YouTubeで1か月限定無料配信

      ジャッキー・チェン主演の名作アクション映画「酔拳(吹替版)」が、Prime Videoの「シネフィル…
    3. 小学生の耳からシャーペン消しゴム 耳鼻科で無事摘出

      小学生の耳からシャーペン消しゴム 耳鼻科で無事摘出

      小学6年生の男児が耳の痛みを訴え受診したところ、耳の奥からシャープペンシルの消しゴムが摘出されました…

    編集部おすすめ

    1. 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      エイベックスの松浦勝人会長は9月4日、自身のX(旧Twitter)で新たに「松浦顧問制度 シーズン1」を立ち上げたことを報告した。内容は「月…
    2. 「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる……」Xで飼い主さんにこうつぶやかれたのは、4羽の白文鳥さんたち。添えられた写真には、4羽が棚の上に連なって集まり、まるで連…
    3. 法事でオリジナルTシャツ!?音楽フェスのような斬新な引き出物が話題

      法事で配られた家紋&没年入りTシャツが話題 “フェス感”漂うセンスに爆笑

      法事の引き出物(お返し)といえばお菓子やカタログギフトが王道ではないでしょうか。しかしときには予想だにしない品をもらうこともあるようで……。…
    4. 災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      フィリップ モリス ジャパン(PMJ)が、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)と共同で、避難生活に特化した支援ネットワーク…
    5. 「週刊文春」2025年9月4日号(8月28日発売)

      週刊文春、最新号表紙は「白紙」 48年続いた和田誠さんの表紙絵に幕

      総合週刊誌「週刊文春」は、2025年8月28日発売の9月4日号で48年間にわたり表紙を飾り続けたイラストレーター・和田誠さんの絵を終了し、大…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト