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有名Xアカウント「パキちゃん」のなりすまし現る 何が目的なのか?インタビューしてみた

 X上において30万人以上のフォロワー数を誇るインフルエンサー「パキちゃん」のアカウントが、2月下旬に突如凍結。その原因について様々な憶測が飛び交うなか、次々と現れたのが、いわゆる「なりすまし」と思われるアカウントでした。

 語尾に「ゆ」を付ける特徴的な文調やアイコンがそのまま使われ、一見すると本物のようにも見えるアカウントのひとつと今回コンタクトを取る事に成功。なぜなりすましているのか、その経緯や目的を聞いてみました。

  •  知らない方のために軽く説明しておくと、「パキちゃん」は匿名の自称風俗嬢。ありふれた肩書きのアカウントがSNS上で目立っていた理由は、やはりフォロワーからの質問への回答が的確である点でしょう。

     主に夜職に従事する女性や既婚者、未成年等から寄せられる性や病気、DV、虐待といった、知り合いに相談しにくい悩み相談に真摯に向き合い、アドバイスを行うという活動が支持を集めていました。しかし一方では、パパ活アプリやチャットレディアプリなどに誘導、斡旋するようなポストも行っていたことから、批判的な声も多く寄せられていた人物です。

    凍結されたパキちゃんのアカウント

     そんなパキちゃんのアカウントが凍結した数日後となる2月27日17時過ぎ、おたくま経済新聞のXアカウントが、突然パキちゃんのなりすましアカウントのひとつからフォローされました。ユーザー名は「NEO(ねお)パキちゃん@さぶ@さぶ」。

     当該アカウントはこの時点で既にフォロワー数は1万を超えており、ぱっと見ではパキちゃん本人が凍結後に運用している、いわゆるサブアカウントのようにも感じられます。

    匿名質問箱「mond」にて偽者であることを明言

     しかし、プロフィールに貼られていた匿名質問箱「mond」へのリンクを見てみると、凍結前に本物のパキちゃんが運用していたmondページへと誘導され、「NEOぱきちゃんって垢はぱきちゆ?」という質問に対し、本人が「偽物だゆ」と答える質問箱が表示されました。どうやら自らがなりすましであることは隠していないもよう。

     自ら偽者であることを明確にしている点だけで言えば、通常のなりすましアカウントとは違うように感じられますが、だとしたらいったい何が目的なのでしょうか。考えれば考えるほど、謎は深まるばかり……。

     そこで、DMを通じて連絡を行うと、すぐに返事が。なんでも「軽い気持ちでなりすましアカウントを作ったら、1日で大勢のフォロワーが付き驚いている」とのこと。さらに先方より取材の打診があったため、いろいろと話を聞いてみることにしました。

    ■ 「なりすまし」の中の人に直撃 その目的は?

    -- この度はインタビューに応じていただきありがとうございます。まずは、このアカウントについておうかがいします。立ち上げ自体は2022年2月となっており、過去に企業が行うプレゼント企画に応募したような形跡もありますが、元々はそのような目的で運用していたのでしょうか?

     ご推察の通り、懸賞応募用アカウントとして使っていました。懸賞が趣味でして、計13アカウントを使用しています。

    -- 今回「軽い気持ちでなりすましアカウントを作った」とありますが、そもそもリスクある行為です。何か目的があってのことなのでしょうか?

     パキちゃん凍結の話題を見かけて悪ふざけでやりました。フォロワーが増えたら、それはそれで達成感ありそうで、やってみたかったというのもあります。

    -- ちなみに元々アカウント主様はパキちゃんのファン、またはフォロワーだったりしたのでしょうか?

     知ってはいました。クオリティコントロールというか運用というかブランドビルディングというか、が秀でていると感じていましたが、ファンでもフォロワーでもありません。

    -- ちなみになぜ弊社のアカウントをフォローされたのでしょうか?弊社のことも元々ご存知だったのでしょうか?

     はい、知っていました。元々ネットゴシップは大好きでまとめ回覧が日々のルーティンです。おたくまさんを知ったのは、2年前くらいかな……にわかですみません。インターネットゴシップについて取材する貴重な媒体と認識しています。なのでコンタクトを取りました。

    ■ あくまで「偽者」を隠さず 今後はどう運用していくのか?

    -- プロフィール欄に自身がなりすましであることを示すリンクを貼っていますが、あくまで偽者であることを隠すスタンスではない、ということでしょうか?

     「本物か偽者か明言はしない」って感じでやろうかなと考えています。リンク貼ったのは悪ふざけですね。あと、本物のパキちゃんの質問箱は継続して運用されてるので、そこへの導線があればいくらかの「赦され」が発生するかな、と。

    -- 元のパキちゃんのように、お悩み相談などを行うつもりは?

     今のところするつもりないです。炎上の種になりそうなので、凍結リスク回避です。また、私の力量では対応しきれないと思います。ライトな質問くらいなら、とは考えています。

    -- 時折投稿にて送金アプリのアフィリエイトや、大手ディスカウントショップのお得情報を載せていますが、こちらは企業PRなどではなく、自主的に投稿しているものでしょうか?

     せっかく万垢(フォロワー1万以上のアカウント)になったので「健全なマネタイズ」はしたくて、とっかかりを作ってみました。企業からの依頼ではありませんし、もちろんその関係者でもありません。

    -- 図らずも多数のフォロワーを抱えることとなったこのアカウント、今後どのように運用していくつもりなのか、現段階で考えていることなどあればお聞かせください。

     「健全なマネタイズ」と、「わかって乗っかってきたフォロワーとの雑談」くらいです。あと軽く「犯罪への啓蒙」とかかな。

    -- 「犯罪への啓蒙」という言葉が出ましたが、そもそもなりすましも犯罪まではいかないにしろ人を欺く行為です。今後アカウントの削除予定や、特徴的なアイコン、ハンドルネームを変更する予定はあるのでしょうか?

     今のところは考えていません。……が、今後の流れしだいでしょうか。現時点ではなんとも言えません。

    -- ……まさかアカウントの転売を考えていたり?

     金額次第では気持ちが揺らぐかもしれませんが、今のところはないです。

    -- なりすましで多くのフォロワーをすぐに得られてしまうことは、おっしゃる通りインターネットらしくもあり、一方で使いようによっては犯罪に利用しやすくなるといった、大きな危険性もはらんでいます。反射的にフォローをした方たちに向けて、何か伝えたいことがあればお聞かせください。

     フォローするしないなんて、大した事ではないので脊髄反射で良いと思います。「なりすましで多くのフォロワーをすぐに得られてしまうこと」も危険っちゃ危険ですけど、こんなの昔からあるわけで、犯罪と直接結びつけるのは早計と考えます。「詐欺とかオンカジとかP活は止めた方が良いゆ」が伝えたい事でしょうか……。

    -- 最後に、本物のパキちゃんに一言お願いします。

     「なんか……影響力を利用させてもらってごめんね」といったところでしょうか。

    * * * * *

     上記のやり取りはDM及び通話にて行ったものですが、口調や言葉の端々から、あまり罪悪感を抱いたり、反省をしているようすは見られず。フォロワーが増えて多少戸惑いはしたものの、このままうまくマネタイズに結び付けることを考えているようです。

     この行為の是非を判断することは、X社が行うことであり、一記者がどうこう言える立場にはありませんが……偽者であると暗に匂わせているにもかかわらず、「本物のパキちゃんだ」と、信じてすぐに多くのユーザーがフォローしてしまっていることに、SNS社会の危うさを感じざるを得ません。

     おたくま経済新聞では以前より、著名人になりすましたアカウントが、詐欺等の犯罪を働いていた、という注意喚起の記事を何度か掲載しています。今回のアカウント主は、犯罪は行わないと明言しているものの、もしもこれが悪意に満ちたアカウントであればどうでしょうか。多くの方が被害に遭っていた可能性もゼロではないでしょう。

     「パキちゃん」を名乗るアカウントは、今回のアカウント以外にも数十件存在しており、中にはすでに3万件以上のフォロワーを持つアカウントも。しかし、X上には本物のパキちゃんはもう存在しません。先述の匿名質問箱「mond」でも明言されています。

     偽アカウントだとわかっていたとしても、あなたがフォローを行うことでフォロワーが増え、本物だと信じてしまう方がいるかもしれません。また、どのような動機や目的があったとしても、なりすましはXルールで明確に禁止されている行為です。

     なりすましを行う人、なりすましに騙される人、その双方が少しでも減ることを願って、おたくま経済新聞では今後もネットに潜むさまざまなウソへの注意を呼び掛けていきたいと思う次第です。

    <記事化協力>
    NEO(ねお)パキちゃん@さぶ@さぶ(@obasan130kg)

    (山口弘剛)

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  • 山口 弘剛‌Writer

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    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

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