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相次ぐ「ちいかわ」コラボ商品の転売、過去にユニクロが転売屋に打ち勝った事例とは

 日本マクドナルドは5月24日、ハッピーセット「ちいかわ」第二弾について、早期販売終了したと発表しました。第一弾に引き続き、たった2日間で終了という異例の事態に、ネットでは困惑の声が広がっています。なお、30日から予定していた第三弾(第一弾、第二弾の再販)についても、実施しない方針です。

  • ■ 青雲、ジーユー……相次ぐちいかわコラボの転売行為

     「ちいかわ」と企業コラボ商品を巡っては、ここのところ連日のように早期完売のニュースを目にします。

     日本香堂とコラボした限定パッケージの線香「青雲」は即日完売し、ジーユーとコラボしたサマーコレクションも販売開始日の午前中には一部商品が品薄に。後日、改めて予約販売を行う旨の発表を行うなど、後手の対応に追われている状況です。

     これが本当に欲しい消費者のもとに渡っているならまだしも、目につくのはやはりオークションサイトやフリマサイトへの出品、いわゆる転売目的での購入です。定価の数倍もの値付けを行い、利益を得ようとする行為が後を絶ちません。

     こうした事態を受け、ジーユーやユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングは、メルカリと包括協定を締結し、情報連携を通じて新商品発売前後の注意喚起や権利侵害品対策を強化。

     例えば、特定の商品についてアプリ上で「価格が一時的に高騰する可能性がある」と注意喚起したり、高額転売や転売目的での購入など、ルール違反の出品に対して削除対応を実施するといった対策に乗り出しています。

    ■ 転売屋対策に真っ向から挑んだユニクロの事例

     需給予測を混乱させる転売行為は迷惑極まりませんが、実はこれに真っ向から挑んだ事例があります。それは先述のユニクロが、2023年11月にちいかわ、サンリオとトリプルコラボしたフリースパジャマを販売したときのことです。

     当該商品はユニクロ感謝祭の目玉商品として告知され、ウィメンズとキッズのラインナップで親子で楽しめることもあり、発売前から激しい争奪戦になることが予想されていました。

     いざ当日を迎えると、オンラインストアはすぐに繋がりにくくなり、商品をカートに入れても決済に進めないといった事態が発生。悪い予想が的中した形となりましたが、驚いたのはその後です。いつまでたっても商品がいずれのサイズも売り切れにならなかったのです。

     おなじころ実店舗でも同じことが起きていました。実は筆者は以前アパレル業界に長く勤務していたことがあります。その関係で、ユニクロにも知り合いのスタッフが多く、当時商品の売れ行きについて聞くと、「売れてはいるけど在庫は切れていない」という話を耳にしました。そう、ユニクロは「とにかく多く生産して、早期に完売させない」という方針をとったのです。

     結局その日の夕方になってもオンラインストアにサイズの欠品はなく、別の知人の話によると実店舗においても「閉店前でも選び放題」の状態だったとのこと。もちろんフリマサイトやオークションサイトへの出品も散見されましたが、これらは全く売れていない状況でした。だってまだ店舗で定価で買えるのですから。

    2023年当時のスクリーンショット

     しかし、これはいわゆる「作りすぎ」を生んだようで、結局その後の年末年始には商品の値下げを行わざるを得ない事態に。特にアパレルの場合、値下げは利益を大きく傷めますから、売っても利益がほとんど出ない、という状況にもなりかねません。

     企業力を生かした大量生産で転売屋に打ち勝ったものの、ユニクロ側もそれなりのダメージを受けた、といったところでしょうか。このため同系列のジーユーでは、今回のコラボ商品の販売後に即予約販売を告知することで、値下げのリスクを回避したものと推測できます。

     これはもちろんほかの業種でも同様で、やはり在庫過剰はさまざまなリスクを背負うことになりますから、生産に慎重を期す企業の判断ももちろん尊重するべきでしょう。

     糾弾されるべきなのは、やはり需要を見越して買占めを行う転売屋たち。フリマサイトやオークションサイトにおいても、営利目的の転売行為への厳格な対策が、今後ますます重要となるでしょう。

    (山口弘剛)

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  • 山口 弘剛‌Writer

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    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

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