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本書カバー+フォト・アーカイブIII-20「ゼロ次元の儀式」(1971年9月9日、法政大学/東京)撮影=北出幸男、(C)ゼロ次元・加藤好弘アーカイブ、愛知県美術館蔵
株式会社河出書房新社(東京都新宿区/代表取締役 小野寺優)は、独自の肉体表現によって戦後の日本美術界を刷新し、今改めて注目を集める前衛芸術家・加藤好弘と前衛芸術集団〈ゼロ次元〉の全貌に迫った『反万博の思想 加藤好弘著作集』(細谷修平編)を2025年5月27日に刊行いたしました。
メガイベント「1970 大阪万博」批判として結実し、深化し続けたその思想、肉体をメディアとした芸術表現、人々の度肝を抜くパフォーマンスのすべてを集成した本書。加藤好弘が残した文章、対談から、写真、ポスターなど図版までを余すところなく収録した決定版が、大阪・関西万博に沸き立つなか、ついに世に送り出されます。
0次元セールスマンのゆくところ、通るところ、すべてが0次元界の聖壇と化す。場所ばっかりではない、我々の方法は、人間の心の壁を、それはすでに蝕みはじめているのだ。
(第一章「台風の目の男たち」より)
唯一無二の前衛芸術家・加藤好弘(かとう・よしひろ)とは
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本書P272+フォト・アーカイブII-1「万博破壊共闘派の寝体儀式」(1969年3月31日、大阪市内10か所)撮影=北出幸男、(C)ゼロ次元・加藤好弘アーカイブ、愛知県美術館蔵
1936年、名古屋市に生まれた加藤好弘は、多摩美術大学卒業後、岩田信市らと前衛芸術集団〈ゼロ次元〉を結成。1963年元日、男女の集団が名古屋市栄から愛知県美術館までを行列してほふく前進した「はいつくばり行進」を含む「狂気的ナンセンス展」(1963年1月1日~6日、愛知県美術館)をはじめ、各地で「儀式」と称するパフォーマンスを定期的に行なった。
1970年の大阪万博を前に、ともに活動していた〈告陰〉らと「アンチ万博」を掲げ〈万博破壊共闘派〉を結成。東京、名古屋、京都、大阪ほか全国で活動を展開した。
その後、〈ゼロ次元〉が行う儀式の集大成ともいえる映画『いなばの白うさぎ』を発表。2000年代以降は、〈ゼロ次元〉への再評価が高まるなか、アジアの思想に根差した反グローバリズムを訴え、国内外で精力的にアジテーションを続けた。2018年没。
破産している文化の墓場である万博を、無理やり墓場荒しの犯罪者集団がエログロナンセンス暴力で万博ともども心中さしめようとする殉教者的人類愛はナゼ、エクスタシーなのか?
(第六章「万博破壊活動第三宣言」より)
戦後美術とアングラを越境した〈ゼロ次元〉
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フォト・アーカイブI-23「映画『クレージー・ラブ』撮影」(1968年6月16日、新宿駅東口/東京)撮影=北出幸男、(C)ゼロ次元・加藤好弘アーカイブ、愛知県美術館蔵
1960年代、日本の現代美術は映画や演劇、デザインなどのジャンルを縦横に横断しながら生成され、世界でも稀にみる特異な前衛表現が展開された。多くの前衛作品が出品され、若手作家を輩出した「読売アンデパンダン展」が1963年に幕を閉じると、「内科画廊」などの貸し画廊が作家やグループの受け皿となるが、彼らの創作、発表の場は屋内に止まることなく、街頭へと飛び出し、多種多様なパフォーマンスを繰り広げていく。こうした時代の空気が生み出し、頭角を現したのが、聖なる野蛮人(フリーク)、前衛芸術集団〈ゼロ次元〉である。
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フォト・アーカイブI-1「巨大布団運搬儀式」「都電首つり蒲団チンチン送儀」撮影者不詳、(1967年3月21日、都電内)(C)ゼロ次元・加藤好弘アーカイブ、愛知県美術館蔵
〈ゼロ次元〉は1963年の名古屋市栄での「はいつくばり行進」を皮切りに、その世界観を表す“象徴的行為”「儀式」を全国各地で展開し、以後長期にわたり膨大な回数を行なった。こうした儀式では、〈クロハタ〉や〈告陰〉、〈ビタミン・アート〉の小山哲男、秋山祐徳太子、九州派の桜井孝身、ダダカンこと糸井貫二といった前衛作家やグループが活動をともにしていた。
また、1970年の大阪万博を前に「万博破壊」を宣言し、〈告陰〉らとともに〈万博破壊共闘派〉を結成。裸の肉体表現をもって国家、資本に反旗を翻していくが、1969年6月8日に池袋アートシアターで行なわれた「万博粉砕ブラック・フェスティバル」における「全裸片手上げ儀式」の写真が各紙誌で報じられたことをきっかけに、「公然わいせつ物陳列罪」容疑でうち7名が逮捕。抗議活動は更に激化した。
同時期に結成された、高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之らによる〈ハイレッド・センター〉が、早くから現代美術史に取り上げられ、赤瀬川の著作『東京ミキサー計画 ― ハイレッド・センター直接行動の記録』(ちくま文庫)を通じて認知を広げたのに対し、〈ゼロ次元〉の存在や活動は、その即興性や政治的な側面も影響し、1970年代半ば以降はなりを潜め、その後陽の目をみることはなかった。
2000年代に入り、椹木野衣の批評や黒ダライ児による調査、研究によって、〈ゼロ次元〉が与えた、現代美術、実験的なアバンギャルド映画への様々な影響、また、〈ゼロ次元〉が、60~70年代当時のアンダーグラウンドカルチャー、カウンターカルチャーが複雑に交差する文化背景を検証する上で、極めて重要かつ稀有な存在であることが明らかとなり、再度注目を集める。
国内外で日本戦後芸術の展示、映画作品の上映が人気を博し、60~70年代の作家、グループへの世界的な再評価が高まるなか、本書『反万博の思想 加藤好弘著作集』は、加藤好弘と〈ゼロ次元〉の破壊的なパフォーマンス、彼らを肉体表現へとつき動かした衝動、根本思想との邂逅、衝撃を与えるべく放たれた嚆矢となる一冊。ポップとアングラ、そして日本的身体を賭け金に、政治と芸術を越境したアナキズムの軌跡がいま蘇る。
「いなばの白うさぎ」の受難は今世でもいたるところに観るだろう。トリップ人種をねたむ俗人のヒューマニティの公害に。くたばりぞこないの被害者たちよ、我々にいっさい手を出すな。我々の間には無限の武器が発見されつつある。お前たち旧人類にかかわっているヒマはねえ。
(第八章「意識革命序論 ぼく自身のための広告」より)
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フォト・アーカイブI-16~22(ポスター/案内状/チラシ)
本書への推薦コメント
60年代に近代文明から脱皮した男は、
シルクロードを逆流して次の世界へ向かった。
21世紀になって美術史の再読が進み、世界各地の複数のモダニズムが注目され、加藤好弘にも再び光が当てられた。1960年代、高度経済成長の只中にあって一切の芸術表現様式からの脱皮を試み、全裸で時代を駆け抜けた男は、日本からインドへ向かいシルクロードを逆走した。進歩や発展といった思考を捨てろ。数千年の人類史のなかに自らの位置づけを模索し、歴史を現在に連れ戻せ。この「アジアンタリズム宣言」をわれわれに残して、彼は宇宙に飛び立った。 ――片岡真実(森美術館館長)
大阪・関西万博の大屋根リングは、
大阪万博から蘇ったゼロ次元の「0」かもしれない!
加藤好弘の思想は、「万国」を「一つ」の原理で束ねる博覧会=グローバリズムに叛旗を翻し、誰とも共有することができないおのれだけの肉体=ゼロ地点へと回帰する。1970年の大阪万博と対峙し、儀式や路上を通じて矢継ぎ早に放たれる加藤の思想=実践を追いかけていると、2025年の大阪・関西万博の大屋根リングが、近現代文明のすべてに無化を突きつけた巨大な「0」記号に見えてくる。
――椹木野衣(美術批評家)
聖にして珍なるガバッチョな言葉の奔流が
進歩幻想を押し流し
あなたの脳髄を初期化する!
加藤好弘は身体だけでなく言葉の演者でもあった。猥雑でコミカルな初期はシュルレアリスム的自動筆記の即興演奏であり、〈ゼロ次元〉儀式の描写は記録を超えた言葉による再演であり、国際化と技術革新への集団熱狂には「オ前にとって万博とは何か!」と応答を迫る。宇宙的エロスへの誘いや内面革命による幻想の超克を経て、アジア的無意識の回復をアジテートする。妄想を現実化するアナーキーな言葉のトリップにあなたも参加せよ!
――黒ダライ児(戦後日本前衛美術研究家)
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フォト・アーカイブI-6「狂気見本市」(1968年3月13日、本牧亭/東京・上野)撮影者不詳、(C)ゼロ次元・加藤好弘アーカイブ、愛知県美術館蔵
本書目次
I 1963 - 1969
第1章 ゼロ次元のはじまり
第2章 尻蔵界曼茶羅の世界
第3章 街を駆ける前衛
第4章 物語りとしてのゼロ次元
フォト・アーカイブI
II 1969 - 1970
第5章 反万博の萌芽
第6章 万博破壊活動の思想と行動
第7章 反管理システムというメディア闘争
フォト・アーカイブII
III 1970 - 1976
第8章 幻覚革命へトリップしよう!
第9章 エロス解放の神話考
第10章 クレージー・ラブの革命論
第11章 現代文明批判と芸術
第12章 東洋へカムバックせよ!
フォト・アーカイブIII
IV 座談・インタビュー・随想
第13章 1960年代同志たちとの対話
第14章 ゼロ次元を語る
特別収録 加藤好弘アジテーション アジアンタリズム宣言
解題(作成=細谷修平)
解説 万博を破壊する肉体 ゼロ次元・加藤好弘の思想と活動(細谷修平)
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本書カバー表1+表4+両袖
書誌情報
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書名:反万博の思想――加藤好弘著作集
著者:加藤好弘
編者:細谷修平
仕様:A5判/上製/536頁
発売日:2025年5月27日
税込定価:7,370円(本体6,700円)
ISBN:978-4-309-25798-3
装丁:大倉真一郎
書誌URL:
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309257983/