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日立、次世代エアモビリティの安全運航を支える機体のモデリング技術を開発

update:
株式会社 日立製作所
ビル群などの強風や突風下での機体の挙動をモデル化、安全運航を支えるインフラ構築に貢献



 株式会社日立製作所(以下、日立)は、運用拡大が期待されているドローンなどの次世代エアモビリティに対して、突風や強風などの突発的な気象変化による機体の挙動を再現できるモデリング技術*1を開発しました。従来は、強風や突風など、刻々と変化する気象状況によってエアモビリティの運航が制限され、重要インフラの点検や物流分野での利用拡大に課題がありました。本技術は、機体ごとの耐風性能を測定し機体応答*2をモデル化することで、機体の位置変動などの挙動をデジタル空間内で高精度に検証し、飛行リスクを算出可能です。さらに、日立がこれまで培ってきたモビリティ管制基盤「Digital Road」*3に本技術を組み込むことで、風況と飛行特性を的確に予測した安全な運行管理と、リスクのある飛行経路を迂回するなどの効率的な運用を可能にします。これにより、都市部のビル群や山間部など、これまで対応が難しかった環境でのエアモビリティ活用が図れ、インフラの保守・管理の効率化や災害発生時の復旧作業の迅速化など、持続可能かつ安全・安心な地域社会の実現に向けた新たなモビリティインフラの構築に貢献します。

*1 モデリング技術: 下記機体応答をモデル化して、飛行環境下での機体の挙動をコンピュータ上で再現・検証するための技術
*2 機体応答: ドローンなどの機体が、外部から加わる力(風力、揚力、重力など)に対してどのような動きで反応するかを示す航空工学用語
*3 日々の暮らしや被災地の復旧を支えるモビリティ管制基盤「Digital Road」を開発:2024年3月18日

背景および課題
 近年、物流量の増加、重要インフラの保守・管理における人手不足など、社会インフラ維持に関する課題が深刻化するとともに、災害時における迅速な復旧が求められています。こうした中、ドローンや空飛ぶクルマなどの次世代エアモビリティが、重要インフラの点検や物流、災害復旧の現場で活用され始めています。日立では、このような環境下でドローンを安全に運用するためのドローンソリューション*4を提供しています。
 一方で、小型ドローンやエアモビリティは強風や突風など気象状況の影響を受けやすく、事前に機体ごとの挙動や飛行特性を把握することが難しいため、運航停止や機体破損のリスクが残されていました。特に、活用が期待されている都市部のビル密集エリアや山間部などでは、従来の運行管理技術だけでは十分な対応が困難でした。

*4 ドローンソリューション:日立

開発した技術の特長
 そこで日立は、これまで提供してきたドローンソリューションの知見に加え、気象や通信環境などさまざまな環境情報をデジタル化してリスクを管理することで、より安全なエアモビリティの運用を実現するモビリティ管制基盤「Digital Road」を開発してきました。今回、さらなる飛行リスク算出の高精度化に向けて、耐風性能を測定し機体応答をモデル化することで、機体ごとの挙動を再現できるモデリング技術を開発しました(図1)。技術の特長は以下の通りです。

1. 機体応答のモデル化技術
 突風など急変する風況下では、風の影響でドローンの姿勢が変化するため、それを相殺するフィードバック制御*5が行われ、機体の位置を維持しようとします。しかし、急に風が弱まると、制御のタイムラグにより機体を維持する力が過剰に働くため、機体が元の位置からズレたり、姿勢維持が困難となり、衝突や墜落といったリスクを招きます。このような挙動やリスクの現れ方は、機体の種類や飛行特性によって異なります。そこで本開発では、繰り返し突風に着目し、風洞実験*6とモーションキャプチャー*7による計測データを基に、機体応答をモデル化する技術を開発しました。具体的には、予め実機を用いて繰り返し突風下で機体ごとの移動量や姿勢変化を計測し、得られたデータから風力、揚力、重力などを考慮した空力解析を行い、応答モデルを生成します。この応答モデルは、飛行ルート上の気象状況を模擬した解析に用いられ、事前に安全性を高精度で検証することが可能です。さらに、本技術では実機を用いて応答モデルを構築することから、さまざまな機体や荷物搭載時の条件にも柔軟に対応でき、多種多様な運用形態に合わせた飛行経路選定や運用効率化に貢献します。

2. 機体応答モデルの高精度化技術
 機体応答モデルは、デジタル空間内で機体挙動を解析し、フィジカル空間で計測したデータと比較することで、構築した機体応答モデルの性能を高精度に検証する技術を開発しました。本技術では、フィジカル空間で計測された繰り返し突風時の機体の実挙動と、デジタル空間の機体応答モデルによる機体の挙動を比較して各パラメーターの差分を算出することで、同一の挙動となるように応答モデルをチューニングし、高精度化を実現します。これにより、繰り返し突風下での機体位置変動を約90%の精度で検証できるようになり、これまで困難だった飛行前の気象状況と機体応答モデルを用いた安全性の確認をデジタル空間内で行うことができるようになります。

[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/152541/30/152541-30-e4212733e70eecaf172b86edfc8fced6-1860x947.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1 機体のモデリング技術


*5 フィードバック制御: 機体状態を測定し、姿勢変化などのズレを検出すると、機体動力や姿勢制御機器を使いズレを回復するめの制御技術
*6 風洞実験: 人工的に風を発生させる装置(風洞)を使い、物体に対する風の影響を調べる実験
*7 モーションキャプチャー: 物体の動きをセンサーやカメラで計測し、デジタルデータとして記録する技術

今後の展望
 日立は、 Lumada 3.0を支える技術の一つとして本技術の強化ならびに、これまで培ってきた社会インフラ分野のドメインナレッジを活用して、ドローンをはじめとする次世代エアモビリティの効率的な運用を行う新たなデジタルサービスの構築を推進します。具体的には、開発した技術を基盤として、エアモビリティの運行状況や機体データをデジタルデータとして収集・蓄積・管理する仕組みを構築し、さらにAIを活用することで、エアモビリティの運行管理や安全性の向上、さらには自動運行など高度なサービスを提供していきます。これにより、都市部での利用に加え、ダムや水道設備、河川、堤防、橋、送電線、線路や高速道路などといった幅広い重要社会インフラの効率的な管理を実現し、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献していきます。

 なお、本技術の詳細は、2025年9月7日から10日に開催される日本機械学会2025年度年次大会で発表予定です。

日立製作所について
 日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.co.jpをご覧ください。

お問い合わせ先
株式会社日立製作所 研究開発グループ
問い合わせフォーム:https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/hqrd/news/jp/form.jsp

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