2020年10月の酒税改正により、従来より税額が引き下げられて安くなったビール。缶ビールを手に取る機会が前より増えた人も多いかもしれません。キリンビールが看板商品である「一番搾り」を“一番おいしいビール”を目指し、2021年2月製造品よりリニューアルするのにあわせて、メディア向けウェビナーを開催しました。2021年の事業方針についても明らかにしています。
酒税法改正により、ビールの税額は2020年10月から引き下げが開始されました。発表会に登壇したキリンビールの常務執行役員マーケティング部長の山形光晴氏によると、税額が引き下げられたことにより、これまでよりビールへの消費者の関心が高まっているとのこと。「一番搾り」ブランドの缶商品は税額が引き下げられた2020年10月~12月、前年比で150%を超える販売数量を記録したといいます。
発表会に登壇したキリンビールの常務執行役員マーケティング部長の山形光晴氏によると、ビールは税額が引き下げられたことにより、これまでより消費者の関心が高まっているとのこと。「一番搾り」ブランドの缶商品は税額が引き下げられた2020年10月~12月、前年比で150%を超える販売数量を記録したといいます。
この伸びを支えた要因として、山形氏は2019年のリニューアル、そして2020年10月に登場した新商品「一番搾り 糖質ゼロ」の好調を挙げました。「一番搾り 糖質ゼロ」は世の中の健康志向を反映し、10月からの3か月間で年間販売目標160万ケースを大幅に上回る193万ケースの販売実績を達成。キリンビール過去10年のビール新商品で最高の売り上げを記録したそうです。
2021年の戦略として、キリンビールでは「強固なブランド体系の構築」「課題解決による新たな成長エンジン育成」を軸に進めていくとのこと。中でも「一番搾り」は、フラッグシップブランドとしてさらなる飛躍を目指すと山形氏は語りました。
その原動力となる「一番搾り」は、2019年以来2年ぶりのリニューアルを実施することに。「とびきりおいしい新ビール」と銘打った今回のリニューアルについて、醸造の総責任者である田山智広マスターブリュワーが登壇し、リニューアルのポイントについて語りました。
田山マスターブリュワーは、キリンビールの醸造フィロソフィーには「生への畏敬」「ビールづくりはMakingではなくBrewing」「五感を重んじる」という3点がある、と言います。ビールは植物である麦芽やホップを原料に、酵母による発酵で醸造されるものであり、自らの五感を重んじた生き物との対話なくして良いビールにはならない、ということだそうです。
また、キリンビールの追求する味わいは、ドイツ語の造語で「Wieter-trinken」。「飲みやすく飲み飽きない」という意味で、もう一口、もう一杯飲みたい、明日もまた飲みたいという余韻を残す味わいを目指しているとのこと。そういったフィロソフィーをいかんなく発揮しているのが「一番搾り」だということです。
一番搾り麦汁のみを使うことで、雑味のない麦芽本来の味わいを実現した「一番搾り」。今回のリニューアルに向けては400回以上もの試験醸造を経て、“理想のビール”となる究極の調和を目指したと田山マスターブリュワーは語りました。
進化のポイントは大きく2つ。発酵の前段階となる麦芽の糖化工程(麦芽に含まれる炭水化物を糖に変える作業。酵母は糖を分解してアルコールと二酸化炭素を作り出す)で、摂氏1度単位での温度調整により、麦のうまみを感じやすくしたことと、発酵条件を最適化し、発酵度を微調整することで後半にかけて“澄んだ味わい”を引き出したことだそうです。
ぜひ実際に飲み比べてみてください、とのことで、事前に送られてきた従来品とリニューアル品、2種類の「一番搾り」を比較してみることに。グラスに注がれた見た目は変わりません。
飲んでみると、かなり印象が変わります。従来品は口に含んだのち、ホップの香りを感じながら余韻が残っていく感じ。リニューアル品は口に入れた瞬間は変わらないものの、ホップの香りよりは麦芽のうまみが勝ります。
麦芽のうまみが強いビールを言い表す時に「パンを食べているような」という表現がありますが、上質な麦のうまみが堪能できます。そしてそれは、しつこく自己主張し続けるのではなく、口溶けのいいパンを食べた時のようにスッと消えていき、わずかに麦の香りが鼻に余韻として残ります。
このクリアな後味は、雑味のない一番搾り麦汁によるものでしょう。従来のものは肉料理など食事と一緒に、みんなでワイワイと楽しみたい味わいですが、リニューアルした「新・一番搾り」は、ゆったり自分のペースで楽しみたいビールに仕上がっているように感じました。
キリンビールでは、新型コロナウイルス禍という状況において、アルコール飲料の中から、消費者が「ビール」を意識的に選択する傾向が顕著になっていると分析。家飲みの機会も増え、ビールとじっくり向き合う機会を楽しむための商品として「新・一番搾り」を位置付けているようです。
取材協力:キリンビール株式会社
(取材:咲村珠樹)