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「ドリフ大爆笑」のテーマには元ネタがあった!?軍歌や俗謡を元ネタにした事情

 CMなどでも使われている「ドリフ大爆笑」のテーマソング。実はオリジナルではなく、戦時中の国民歌謡が元ネタって知っていますか?このほかにもドリフは軍歌や俗謡を替え歌とし、メロディを後世に伝える役割をしているのです。

  • ■ 「ドリフ大爆笑」OPは戦時下の国民歌謡「隣組」

     コント番組「ドリフ大爆笑」のオープニングテーマである「ド、ド、ドリフの大爆笑」という歌。元ネタは、1940年に発売された「隣組」という国民歌謡です。

     作詞は芸術家・岡本太郎の父である岡本一平、作曲は飯田信夫によるもの。1938年に施行された国家総動員法や、1937年から始まった国民精神総動員運動の流れを汲み、当時の内務省が戦時下における国民の統制を進めるため、町内会組織を拡充するにあたり、その下部組織として1940年に設けられた「隣組」の役割を周知するような内容の曲です。

     表向きは隣近所の結束を図るため、という目的で作られた「隣組」でしたが、戦争反対など不穏分子をあぶり出す相互監視の役割も果たしていました。元歌にある最後のフレーズ「知らせられたり 知らせたり」は、内容によっては密告を意味しているようにも受け取れます。

    ■ ドリフが軍歌や俗謡を替え歌にしたワケ

     今となってはコント集団としての評価が高いザ・ドリフターズ(ドリフ)ですが、元々メンバーはハナ肇さん率いるクレージーキャッツを兄貴分とし、ジャズ喫茶などで腕を磨いたミュージシャン。演奏の合間に演じた音楽コントの評判が良く、徐々にそれをメインにしたグループとなりました。

     ドリフのレコードデビューにあたり、所属事務所はクレージーとは異なる路線で売り出すことを目論みました。そのモチーフとして選ばれたのが民謡のほか、戦前や戦時中に歌われた俗謡といった曲の数々でした。

     特に戦時中に歌われ、多くの人に親しまれた俗謡は作者不明のものが多く、戦後になると発表される機会が徐々に減っていました。それを替え歌でカバーし、新たな魅力を生み出したのが、ドリフだったのです。

    軍歌や軍にまつわる俗謡は戦後耳にする機会が減っていった(イメージ画像)

     1968年にリリースされたファーストシングルのA面を飾ったのは、俗謡が元ネタの「ズッコケちゃん」。3枚目のシングルとなった1969年の「ドリフのズンドコ節」では、俗謡の「海軍小唄」を替え歌にし、最後の部分では「元歌!」として原曲を全員で歌っています。

     続いて1970年リリースの「ドリフのほんとにほんとにご苦労さん」は、戦時における軍隊生活の悲哀を歌った俗謡「軍隊小唄」が元ネタ。1971年には、軍歌や軍にまつわる俗謡をカバーしたアルバム「ドリフの軍歌だよ全員集合!!」がリリースされています。

    ■ 「ドリフ大爆笑」初代OPは軍歌「月月火水木金金」

     コント番組「ドリフ大爆笑」は1977年に始まりましたが、意外にも初回のオープニングテーマは「ド、ド、ドリフの大爆笑」で始まるお馴染みの曲ではなく、軍歌「月月火水木金金」を元ネタにした替え歌でした。「隣組」を元ネタにしたテーマ曲は、1978年から採用されています。

     時代背景などもあり、なかなか表立ってテレビやラジオで披露されることのない、軍歌や軍にまつわる俗謡。ドリフが替え歌として発表した当時は原曲を知る人々も多く、馴染みのあるものでしたが、今はその世代も高齢化し、記憶は失われつつあります。

     ドリフが国民的人気を獲得し、なおかつ長年にわたって活躍したことによって、現在も「ドリフの曲」として俗謡が歌い継がれるようになったのは、非常に興味深いことです。ドリフだけでなく、小林旭さんも俗謡をモチーフにした曲を色々と発表していますが、これらをきっかけに、元ネタである昭和戦前期の俗謡や軍歌などに興味を持ち、調べてみると楽しいかもしれません。

    (咲村珠樹)

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