皆さん、お元気ですか。コートクです。私は先日、某大学で、かつて東映アニメーションに勤務し、現在は大学教授を務めている人物の講演を拝聴する機会がありました。講演は、アニメ制作をビジネスの観点から捉えるもので、その中で、アニメの原作に関する話がありました。皆さんは、漫画やゲーム、ライトノベルをご覧になることがあるでしょうか。そしてご自身の好きな漫画なりゲームなりラノベなりがアニメ化された場合、そのアニメを観たいとお考えになることはあるでしょうか。
その教授によれば、原作付きのアニメには出資者が付き易いが、原作なしのアニメにはなかなか出資者が現れないそうです。
しかし、そのような状況の中で、テレビ東京とアニプレックスが、原作なしアニメを専門に放送する枠「アニメノチカラ」の製作を発表しました。その第1作が、現在放送されている『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』です。私は、テレ東とアニプレの英断に敬意を表します。
『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』のストーリーは、架空の世界を舞台として、軍隊に入隊した新米喇叭手・カナタ(声・金元寿子)の奮闘を描いたものです。
スペインの風景を元にして丁寧に描かれた町並みや自然が、圧倒的な迫力を以て劇中世界を構築しています。そして、その題名の通り、“音”または“音楽”がストーリー上重要な意味合いを持っています。
第2話では、学校の廃墟らしきところを探索するカナタが、大昔の教科書や楽譜を発見します。
カナタは大昔の文字を読むことはできませんが、楽譜を読むことはできます。音楽が時代を超えてカナタに語りかけ、大昔の学校の光景が脳裡に甦るかのような感覚が表れるのでした。
建物など形あるものが朽ち果てたとしても、決して朽ち果てることのない音楽の素晴らしさを、廃墟と楽譜の対比によって鮮やかに描き出したと言えるでしょう。
また第3話では、まだまだ新米であるカナタは、自分を「足手纏い」として卑下し、「みんなの邪魔にならないようにしよう」と心掛けるのですが、これに対して先輩のリオ(声・小林ゆう)は、挿入曲「アメイジング・グレイス」を交えながら、次にように語ります。
「幾つもの楽器、様々なパートが響き合って1つの音楽になる。戦車乗りと同じさ。(中略)皆が力を合わせて1つの戦車を動かす。いらない者なんていない。いらない音なんて1つもないのさ。」
メンバー1人1人が掛け替えのない大切な人格であることを称える、心温まる展開です。
戸松遥さんが歌うエンディング主題歌「Girls,Be Ambitious.」の1番のサビの歌詞は、メンバー同士がお互いを尊重し合うという登場人物の理念を端的に表わし、ひいては作品全体のテーマを凝縮した歌詞となっています。
最後に、去る2月14日(日曜日)に秋葉原のアニメイトとゲーマーズ本店で催された本作のイベントをご紹介しておきます。このイベントは、番組特製クリアファイルを来場者に配布するというものです。
イベントでは主演声優の金元寿子さんが、多数訪れた来場者1人1人を丁寧にもてなしていました。金元さんの素敵な人柄がよく表れたイベントだったと思います。
■関連URL
▼アニプレックス公式サイト
http://www.sorawoto.com/
▼テレビ東京公式サイト
■ライター紹介
【コートク】
戦前の映画から現在のアニメまで喰いつく、映像雑食性の一般市民です。本連載の目的は、現在放送中の深夜アニメを中心に、当該番組の優れた点を見つけ出して顕彰しようというものです。読者の皆さんと一緒に、アニメ界を盛り上げる一助となっていきたいと考えています。宜しくお願いします。