東京・吉祥寺を歩いていたところ、思わず二度見してしまう自動販売機に出会いました。
売られていたのはジュースでもアイスでもなく、食用の昆虫。セミ、ゴキブリ、カブトムシ……しかもすべて本気で「食べる用」です。気になった筆者は、実際に購入し、その味を確かめてみることにしました。
■ 自動販売機のラインナップは意外とバラエティ豊か
自販機が設置されていたのは、吉祥寺サンロード商店街から一本入ったところにある、シュープラザビルの裏手。
銀色のボディに描かれた昆虫のシルエットと、「昆虫食いかがでしょう」というカジュアルな誘い文句が目を引きます。
こちらの自販機は株式会社ティ・アイ・エスが手掛ける昆虫食事業のうちの一つのようです。
昆虫食とひと口に言っても、その種類はとても豊富。昆虫をそのまま販売しているものもあれば、ミックスナッツに混ぜたり、ラーメンやカレーにしたりとさまざまです。
ゲテモノではなく「美味しく食べてもらうための工夫」がされていることが分かります。
価格は1000円前後なので、自販機商品としては値が張りますが、手軽に昆虫食にアクセスできるという点では、貴重かもしれません。
筆者の初めての昆虫食は小学生のころ。長野への家族旅行の際に、お土産屋の売店で試食したイナゴの佃煮でした。あまりに美味しかったので両親に「買って」とせがんだものの、嫌な顔をされて断られたという悲しい記憶があります。
それ以来、どうしても人の目があると昆虫食に手が伸びづらくなってしまった筆者としては、この自販機の存在にはかなりありがたさを覚えます。
本当は全部試してみたいくらいですが、流石にそれは無理な話。ラインナップの中から特に気になった「セミ」「デュビア(アルゼンチンモリゴキブリ)」「カブトムシ」を購入してみることにしました。
各昆虫食は真空パックされた上で、プラスチックのボトルに封入された状態で自販機から出てきます。そのため他の荷物に押しつぶされてしまう心配はありません。
一体中身はどんな感じなんだろう。どんな味がするんだろう。ワクワクと、ほんの少しの恐怖とともに開けていきます。
ちなみにここから先はがっつり、そのまんま、昆虫の画像が出てきます。分解等も行っているので、苦手な人は読むのをここでおやめください。
■ 昆虫たちを開封していく!セミとデュビアは無臭
まずは「セミ」から。価格は900円です。
裏面の成分表を見ると名称は「乾燥セミ(ブラックペッパー味)」と書かれています。味付きです。セミはタイ産。
ちなみに今回紹介するすべての昆虫に共通することですが、昆虫は甲殻類(えび、かに)に近い生き物のため、アレルギーがある方は食べるのをやめた方がいいです。
封を開けて中を見ると……いる、セミが。
1匹ではなく数匹のセミが、狭いパックの中にぎゅっと詰まってます。つぶらな瞳がこっちを見ています。てっきり1匹だけだと思っていたので、これは嬉しい誤算。
顔を近づけてみると、香りはあまりしません。虫っぽさも、ブラックペッパーも感じないです。
机の上に広げたキッチンペーパーに取り出してみると、入っていたのは3匹。種類のせいか、乾燥させているせいか、日本で夏によく見るセミよりも小ぶりです。人差し指くらい。
続いては「デュビア(アルゼンチンモリゴキブリ)」。こちらも900円。
成分表によれば名称はシンプルに「デュビア」で、セミのような味付けはされていない様子です。ただ全くの無味かといえばそうではなく、食塩が振られているそう。ちなみにこちらのデュビアは国産です。
中を開けると、セミと同じく数匹のデュビアが入っています。こちらも無臭。
最初このデュビアのパッケージを持って振ったとき、あまりにもカサカサと細かな音がしたので「もしかして中で粉々になっているのでは……」と不安になったのですが、そんなことはありませんでした。
出てきた4匹はいずれもちゃんとデュビアとしての形を保っています。そしてビジュアルは、日頃見かける(※我が家に頻出するというわけではありません)クロゴキブリよりは、チャバネゴキブリっぽいです。
色は薄く、黒と黄色が混じったような感じ。横から見るとかなり平たいです。おせんべいみたい。サイズは親指くらいでしょうか。
■ カブトムシはオスメス2組入り!パンチの効いた香りがして、美味しそう
最後は「カブトムシ」。価格は前2つよりもお高めで、1600円です。高いな。
そしてやはりカブトムシという大型の甲虫だけあって、サイズ感はパッケージの外側からでもしっかり存在を感じることができるほど、大きいです。
セミとデュビアはその小ささゆえに複数匹入っていましたが、さすがにカブトムシは1匹だろうな……オスかな、メスかな……オスがいいな……そんな思いを抱きながら開封していきます。
成分表によればこちらの名称は「昆虫スナック」。原材料には「カブトムシ」「食塩」と記載されています。こちらもデュビア同様、塩だけで食べるようです。
外袋を開けると中が二重構造になっていて、もう1つ小袋が入っています。それを開けると、いよいよカブトムシとご対面。
予想に反して中には数匹入っていました。そしてこちらはちょっとパンチの効いた香りがして、意外にも食欲が刺激されます。
キッチンペーパーの上にあけると、中に入っていたのはなんと4匹!オスとメスが2匹ずつ入っていました。ありがたいですね。
パッケージには「カブトムシ」と書かれていたので、日本のカブトムシかと思っていましたが、ビジュアルを見る限りどうやら違うよう。
上側の角(胸角)の方が、下側の角(頭角)よりも長いです。日本のカブトムシは頭角の方が長いですから、こちらはヒメカブトでしょうか。原産国がタイとのことなので、その可能性が高そうです。
こうして開封した3種類がテーブルの上に並ぶと、かなり壮観。
ちなみに本当はしっかり皿に取り出してあげたかったのですが、昆虫のために皿を使ったことがバレたら虫嫌いの同居人に激しく怒られそうなので、キッチンペーパーにせざるを得ませんでした。
ビジュアルと香りの印象から、筆者は「カブトムシ>セミ>デュビア」の順番で美味しいと予想。果たして実際の味はどうなのか……。
■ セミはサクッと軽やかな食感 全体的な味は豆菓子っぽい
セミから食べていきます。
持った感じはとても軽く、ビジュアルを度外視すればスナック菓子のよう。全体的にしっかり乾燥していて、意外と生物感は薄いです。
意を決して口に放り込むと、まずは「サクッ」という心地のいい食感。ブラックペッパー味と書かれてはいましたが、残念ながらあまりその風味は感じられず。
全体的な味としては豆菓子っぽい香ばしさがあり、昆虫を食べているという感じはあまりしません。
食感は成分のキチンの影響か、エビの尻尾を柔らかくしたような感じ。最初は「サクサク」っと軽やかに楽しめますが、咀嚼を進めていくと徐々に柔らかくなっていき、歯や口の中に張り付いてきます。ポップコーンの種を食べたあとみたいです。ここはちょっと賛否が分かれそう。
翅だけちぎって食べてみると、紙を食べているようです。ペラペラで、少しだけサクサク。翅だけではあまり旨味がありません。無味。
ちなみに割ってみると、中はほとんど空洞。ちょっとだけ身が詰まっています。
翅を剥がすと、セミは少し食べやすくなりました。外骨格のサクッとした歯ごたえの奥に、ささやかな身の食感があります。ソフトシェルクラブみたいです。
■ ゴキブリだと油断していたら……デュビア、お前うますぎないか?
続いてはデュビア。
名前こそかっこいいですが、こいつはゴキブリの仲間。見ているとやはり、台所の隅を這い回る(※我が家がそうだというわけではありません)黒いアイツを思い出してしまいます。
昆虫食として売られているからには、ある程度の味の保証はあるのでしょうが、それでも躊躇はしてしまいます。せめて食べられる味であってくれ……そう願いながらひと口。
あ、あれ……あれあれあれ?
うまくね?
デュビア、お前、うまくない?
ひと口食べた瞬間に、食感と味、どちらをとってもセミよりも美味しい気がしました。
チップスっぽいザクザクとした食感は、セミとは違って口に張り付く感覚もなく、とても軽やか。奥にはしっかり旨味があり、それが食塩とうまくマッチ。風味はナッツっぽいです。
昆虫というより、本当にただのスナックとして、口の中に存在しています。後味にやや磯っぽさがあり、これは苦手な人もいるかもしれません。ただそれ以外は特に気になる部分はなく、美味しい。近所のコンビニで売られていたら、多分頻繁に買っていると思います。
デュビアもセミと同様に翅を剥がしてみます。セミとは違って剥がしづらく、そして翅だけ食べるとセミより美味しくありません。
セミの翅はまだサクサクした食感があったのですが、デュビアは本当にただただペラペラ。そして翅を剥ごうと剥ぐまいと、デュビア全体の味と食感に大きな変化はなかったので、そのまま翅ごと食べるのがおすすめです。
中を割ってみると、薄いながらに、白い身が分かれて詰まっているのが分かります。食べたときにセミよりも身が詰まった感じがしたのは、そのためかもしれません。
■ 事前予想は1番美味しそう!みんな大好きカブトムシのお味は……?
最後はカブトムシを食べます。
香りの段階で一番美味しそうな雰囲気を漂わせていたカブトムシ。筆者はムシキング世代なので、昆虫の中でも特にカブトムシが好きです。しかしまさか食べられる日が来ようとは。
果たして「見た目も味も好き」と言えるようになるのでしょうか。
ただ先の2匹と違って、あまりにもデカい。セミとデュビアは薄めで見ればギリギリスナックに見えなくもないですが、カブトムシはさすがに生き物感が強すぎます。
昔実家で飼っていたカブトムシが朝起きたら死んでいたときのことを、嫌でも思い出しました。
オスとメスどちらから食べるべきか迷い、とりあえずメスからいただくことにします。オスはちょっと角が大きすぎて食べづらそうだからです。
口に放り込んで噛んでみると、食感は「バキバキ」と非常に硬い。セミとデュビアはエビの尻尾のようでしたが、カブトムシはもう少し硬さのグレードがあがって、骨せんべいみたいです。骨せんべいよりも、少し柔らかいくらいの食感です。
そして期待していた味ですが、ちょっと生臭いです。食べる前に感じていたパンチのある香りは口の中に入れた瞬間、しなくなります。
代わりに今まで食べたどんな食材からも感じたことのない独特の生臭さと、ほんのちょっとの苦みがやってきます。
この臭みというのは、生きているカブトムシが放つ土っぽさとはまた違います。どこかミルキーな感じもあり、本当になんとも言いがたい生臭さです。
割ってみると、ほかの2匹よりも身が詰まっている感じがするので、その影響もあるかもしれません。
ただ一方で、臭みの奥の方にささやかな旨味めいたものも感じ、これは「カブトムシがまずい」のではなく「カブトムシが筆者の好みに合わない」だけな気もします。
また、カブトムシの外骨格がほかの2匹に比べて硬すぎたのも、筆者的には食べるのに苦労した部分。うっかり飲み込むと喉に刺さってしまいそうなくらいなのです。
その一番の原因と思しき前翅(外側の硬い翅)を剥いでみますと、やっぱりこいつがなかなかしぶとい食感。噛み始めはバキッと硬く、最初に述べたように骨せんべいの趣がありますが、噛んでも噛んでも口の中に残り続けるのが厄介でした。
続いてはオスの角も食べていきますが、これも予想通りと言うべきか、前翅同様に硬い食感でした。
なので実際に食べる際は、前翅と角を取ってからのほうがいいかもしれません。そうすると食感がデュビアのような「ザクザク」に変わって、食べやすくなります。味はカブトムシのままですが。
■ コンビニで、とまでは言わないが、大きめのスーパーで手に入ると嬉しいな
食べる前に予想していた3種の昆虫の美味しさは「カブトムシ>セミ>デュビア」でしたが、実際の美味しさは「デュビア>>>>セミ>>カブトムシ」といったところです。
それくらいデュビアが美味しい。
デュビアをコンビニで売って欲しい……とまでは言いません。ですが、なんとか量産してもう少し価格を控えめにしていただき「ちょっと大きめのスーパーにいけば手に入る」くらいにまで販路を拡大していただけたら、ちょこちょこ買わせていただきます。
今回の昆虫食自販機は吉祥寺のほか、東京、静岡、神奈川でも設置されているようなので、気になった方は試してみては。特にデュビア。
<参考・引用>
「昆虫いかがでしょう?」
公式HP
(ヨシクラミク)




































































