アポロ11号が人類初の有人月着陸を果たして50年となる2019年7月20日(現地時間)、フロリダ州のケネディ宇宙センターで、NASAの新しい宇宙船オリオンのミッション第1号「アルテミス1」に使用する実機が、アメリカのペンス副大統領の手により初公開されました。
スペースシャトル以来となるNASAの有人宇宙船オリオン。月や火星への有人飛行を前提として計画された宇宙船です。司令船部分の製造はロッキード・マーティンが担当しました。同じロッキード・マーティンの対潜哨戒機P-3Cは「オライオン」ですが、この宇宙船は同じ「Orion」という綴りでも「オリオン」と発音します。
オリオン最初のミッションとなるのが、2020年に打ち上げが予定されている「アルテミス1」。宇宙船の機能を宇宙空間で実際に確認するものとなります。
式典でペンス副大統領は「NASAの男女による献身的な働きとアメリカの工業に感謝します。ここにアルテミス1ミッション用のオリオン宇宙船が完成し、歴史的な最初の打ち上げの準備へと移行することができます」と語りました。50年前に成し遂げた歴史的快挙であるアポロ11号の有人月着陸と、それ以来の有人月ミッションとなる「アルテミス」を重ね合わせるような発言です。
また、これに先立ちペンス副大統領は、50年前にアポロ11号が月へと旅立ったケネディ宇宙センターの39A射場を訪れ、アポロ11号で月に降り立ったエドウィン(バズ)・オルドリンさんと、故ニール・アームストロングさんの子息であるリック・アームストロングさんと面会しています。
NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「アルテミス1」用宇宙船を前に「1960年代と同じように、私たちは同じく人類を大きな飛躍に導く機会に恵まれました。トランプ大統領、ペンス副大統領は2024年にふたたび月へ送り、さらに火星へと目指す大きな道筋を示してくれました」と語っています。
この月へのミッション「アルテミス」の由来について、ブライデンスタイン長官は「ギリシャ神話でアポロ(アポロン)と双子の妹である月の女神アルテミスから命名した」と語り、計画は順調に進んでいるとコメントしています。
アメリカ単独のプロジェクトだったアポロ計画とは違い、今回のオリオン宇宙船やアルテミス計画は国際協力のもと進められます。オリオン宇宙船の電源や生命維持装置を司るサービスモジュールは、ESA(欧州宇宙機関)が担当し、ドイツにあるエアバスのブレーメン事業所で製造されています。
NASAが再び人類を月へ送るアルテミス計画は、無人で宇宙船の動作確認を行う「アルテミス1」、そして実際に宇宙飛行士が乗り込んで月への往復飛行を行う「アルテミス2」を実施する予定。これを踏まえて、月に着陸する「アルテミス3」が計画されています。2028年には月面に科学的調査を行う施設を建設する、とNASAは明らかにしています。
<出典・引用>
NASA プレスリリース
ロッキード・マーティン プレスリリース
Image:NASA/Lockheed Martin/Airbus
(咲村珠樹)