おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

ボーイングの有人宇宙船「スターライナー」無人飛行試験から無事帰還

 ボーイングとNASAは2022年5月25日(現地時間)、ボーイングの有人宇宙船CST-100「スターライナー」が国際宇宙ステーションから無事地上に帰還したと発表しました。

 今回は無人の飛行試験として打ち上げられましたが、次回以降の有人飛行に向けての機能確認が順調に行えたとしています。

  •  NASAでは、国際宇宙ステーションへの人員輸送に民間企業が開発した宇宙船を使用する「コマーシャルクルー・プログラム」を推進しています。使用される宇宙船は、スペースXの「クルードラゴン」と、ボーイングのCST-100「スターライナー」で、このうちクルードラゴンはすでに宇宙飛行士を乗せて飛行しています。

     ボーイングのスターライナーは2019年12月に実施された最初の無人飛行試験で、打ち上げには成功したものの宇宙船のメインエンジンがうまく作動せず、国際宇宙ステーションへの軌道に乗ることができませんでした。NASAとボーイングは約2年にわたってトラブルの原因を洗い出し、設計に変更を加えて2回目の飛行試験(OFT-2)を実施することに。

     1回目の飛行試験では、打ち上げと地上への帰還については問題なく機能の確認ができました。今回実施された2回目では、国際宇宙ステーションへのドッキングやハッチの開閉、物資輸送といった機能の確認が行われます。

     打ち上げはフロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から、現地時間の5月19日18時54分に行われました。スターライナーを搭載したアトラスVロケットは順調に飛行を続け、宇宙船を予定の軌道に投入。

    スターライナーの打ち上げ(画像:ULA)

     ロケットから切り離されたスターライナーは、システムを起動したのちメインエンジンを作動させ、高度400kmの軌道を周回する国際宇宙ステーションへと向かいます。打ち上げ翌日、自動制御で無事ドッキングに成功しました。

    国際宇宙ステーションに接近するスターライナー(画像:NASA)

     今回の飛行試験では、食料など宇宙飛行士の生活用品や実験器具といった貨物も積み込まれました。また、船内には宇宙飛行士のダミー人形「ロージー・ザ・ロケッティア(Rosie the Rocketeer)」がコマンダー席にセットされ、人間の代わりに飛行中のデータを収集しています。ロージーは人形ですが、ちゃんと新型コロナウイルス感染防止のため、赤い水玉模様のマスクを着用しています。

    スターライナー船内の「ロージー」(画像:NASA)

     国際宇宙ステーションでの試験スケジュールを終えたスターライナーは、アメリカ東部時間の5月25日14時36分にドッキングを解除。18時05分に大気圏再突入のためエンジンを作動させて減速しました。

    国際宇宙ステーションとスターライナー(画像:NASA)

     大気圏に再突入後、3つの大きな減速用パラシュート、6つの着地用エアバッグを展開したスターライナー。アメリカ中部時間の16時49分、ニューメキシコ州のホワイトサンズ実験場に無事帰還しました。

    パラシュートを展開して着地するスターライナー(画像:NASA)

     宇宙船の帰還を受け、ボーイングでコマーシャルクルー・プログラムを統括するマーク・ナッピ副社長は「期間中に想定した通りの学びを得て、私たちはこの複雑なシステムの飛行試験を終えました。スターライナーに力を注いでくれたNASAとボーイングのチームメイトに感謝します」との談話を発表しました。

     NASAのコマーシャルクルー・プログラムマネージャ、スティーブ・スティッチ氏は「2回目の飛行試験の最初から最後まで、粘り強さと献身を見せてくれたNASA、ボーイング、そしてULAのチームを誇りに思います。試験を通じてスターライナーは、有人飛行を安全に実行させるための検証に必要な、信じられないほどの有用なデータをもたらしてくれました」とのコメントを発表しています。

     今後NASAとボーイングは共同で試験飛行のデータを解析し、来るべき有人飛行に向けての問題点や改良点などを洗い出します。順調であれば、次回は実際に宇宙飛行士が搭乗しての試験飛行が実施される予定です。

    <出典・引用>
    NASA プレスリリース
    ボーイング ニュースリリース
    画像:NASA/ULA

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 新しい月面用宇宙服「AxEMU」(画像:アクシオム・スペース)
    宇宙・航空

    NASAの新しい月面用宇宙服お披露目 民間企業が開発

  • 記者会見で笑顔を見せる米田あゆさん(YouTubeライブ配信映像より)
    宇宙・航空

    記者からのプライベートな質問を断った宇宙飛行士候補の米田あゆさん その優れた資質…

  • ロケット組み立て棟でのスターライナー(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASA 宇宙船「スターライナー」打ち上げ試験でSNSバーチャルイベント開催

  • スペイン陸軍のCH-47(画像:Boeing)
    宇宙・航空

    スペイン陸軍 アップグレード版CH-47Fヘリコプターの1号機を受領

  • 国際宇宙ステーション(画像:NASA)
    宇宙・航空

    国際宇宙ステーションで新しい通信回線運用開始 レーザー通信の衛星網を経由

  • 空母ジョージ・H・W・ブッシュ艦上のMQ-25(画像:U.S.Navy)
    宇宙・航空

    アメリカ海軍の無人空中給油機MQ-25 初めての空母運用試験終了

  • 国際宇宙ステーションにドッキングしたクルードラゴン(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASAが受け入れる2番目の宇宙旅行フライトが決定 搭乗者はTV番組で募集

  • NASAの2021年宇宙飛行士候補生の10名(画像:NASA)
    宇宙・航空

    NASAに新しい宇宙飛行士候補生10名が誕生 2022年1月より訓練開始

  • ロシアの新しい結合モジュール「プリチャル」の打ち上げ(画像:ロスコスモス)
    宇宙・航空

    国際宇宙ステーションのロシア新結合モジュール「プリチャル」打ち上げ成功

  • プログレスMS-18を搭載したニジニ・ノヴゴロド800周年記念ロケット(画像:ロスコスモス)
    宇宙・航空

    「ニジニ・ノヴゴロド800周年」記念ロケットでプログレスMS-18発射台へ

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • クリスプ のりしおバター味
    商品・物販, 経済

    カルビー、「クリスプ のりしおバター味」発売 レアな“ホシ型クリスプ”も登場

  • 特別災害対策本部車(国土交通省)
    社会, 経済

    消防車も自衛隊車もNERVも! 防災車両がずらり「ぼうさいモーターショー2025…

  • ウィキペディアのページビュー
    インターネット, サービス・テクノロジー

    AI時代でウィキペディア苦境 人間の閲覧数8%減、財団が警鐘

  • ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロティカ解禁」方針
    インターネット, サービス・テクノロジー

    ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロテ…

  • ガンホー「ケリ姫スイーツ」2026年1月末に終了 2012年配信開始から13年
    ゲーム, ニュース・話題

    ガンホー「ケリ姫スイーツ」2026年1月末に終了 2012年配信開始から13年

  • 鳥羽水族館、ラッコ配信で“飼育係モザイク化” カスハラ対策で映像方法変更
    社会, 経済

    鳥羽水族館、ラッコ配信で“飼育係モザイク化” カスハラ対策で映像方法変更

  • トピックス

    1. ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      「はたらくくるま」が好きな人に刺さること間違いなしな「工事現場ケーキ」がXで話題です。説明がなければ…
    2. うまトマバジルチキン定食

      松屋がパスタ定食始めた!? 44店舗限定「うまトマバジルチキン」実食

      松屋は10月14日から、うまトマソースでパスタが楽しめる「うまトマバジルチキンプレート」を全国44店…
    3. その場の“昔”を撮る レンズのない「思い出カメラ」に感じる未来の風

      その場の“昔”を撮る レンズのない「思い出カメラ」に感じる未来の風

      レンズがないのに写真が撮影できる、そんな不思議なカメラ「思い出カメラ」がXで話題です。発明家の堀洋祐…

    編集部おすすめ

    1. 特別災害対策本部車(国土交通省)

      消防車も自衛隊車もNERVも! 防災車両がずらり「ぼうさいモーターショー2025」10月26日開催

      東京臨海広域防災公園(東京都江東区有明)で、10月26日に「ぼうさいモーターショー2025」が開催されます。警察や消防、自衛隊をはじめ、通信…
    2. ウィキペディアのページビュー

      AI時代でウィキペディア苦境 人間の閲覧数8%減、財団が警鐘

      オンライン百科事典「ウィキペディア」を運営するウィキメディア財団は10月17日、近年の利用傾向に関する分析結果を公表しました。 発表によると…
    3. ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロティカ解禁」方針

      ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロティカ解禁」方針

      米OpenAIのCEO、サム・アルトマン(Sam Altman)氏が10月15日と16日に自身のX(旧Twitter)で投稿した内容が、世界…
    4. ガンホー「ケリ姫スイーツ」2026年1月末に終了 2012年配信開始から13年

      ガンホー「ケリ姫スイーツ」2026年1月末に終了 2012年配信開始から13年

      ガンホー・オンライン・エンターテイメントは10月16日、スマートフォン向けアクションパズルゲーム「ケリ姫スイーツ」のサービスを、2026年1…
    5. 鳥羽水族館、ラッコ配信で“飼育係モザイク化” カスハラ対策で映像方法変更

      鳥羽水族館、ラッコ配信で“飼育係モザイク化” カスハラ対策で映像方法変更

      三重県の鳥羽水族館は10月15日、人気配信「鳥羽水族館ラッコ水槽ライブカメラ」の映像内容を一部変更すると発表しました。今後は、給餌の際などに…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト