アメリカ海軍は、ボーイングと共同開発している無人の空中給油機MQ-25が、初めて空母上での運用試験を行い、無事に完了したと2021年12月20日(現地時間)に発表しました。今回の試験では実際の空母を使い、MQ-25が問題なく遠隔操作で動かすことができるかがチェックされ、今後の運用法確立に向けたデータが収集されています。

 ボーイングMQ-25スティングレイは、専用の空中給油機を持たない空母艦載機向けに設計された、初めての無人空中給油機。空母から発艦し、空中で長時間待機して、攻撃に参加する艦載機に対し空中給油を行います。

主翼を折り畳んだMQ-25(画像:U.S.Navy)

 現在、空母艦載機への空中給油は「バディポッド」と呼ばれる、空中給油用の外部燃料タンクを装備した戦闘機や攻撃機を使っています。この任務を専用の無人機に肩代わりさせ、作戦に使える航空機の増加とパイロットの負担を軽減しようというのが開発の目的です。

F/A-18に空中給油するMQ-25(画像:Boeing)

 すでに初飛行を済ませ、陸上の飛行場から離陸しての空中給油試験を実施してきたMQ-25。現用空母艦載機であるF/A-18やE-2D、F-35Cへの空中給油を成功させ、いよいよ実際に運用される空母での試験に臨むことになりました。

F-35Cに空中給油するMQ-25(画像:Boeing)

 試験に使用されたのは、空母ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。アメリカ東海岸のノーフォークでMQ-25を搭載し、大西洋上で試験は実施されました。

空母に積み込まれたMQ-25(画像:U.S.Navy)

 MQ-25は無人機のため、格納庫から飛行甲板に出された後は、遠隔操作でカタパルトまで移動しなければなりません。着艦した後も同様。そのため、飛行甲板上で問題なく遠隔操作ができるかというのが、今回の試験の主眼となります。

牽引されるMQ-25(画像:U.S.Navy)

 飛行甲板では、ボーイングの技術者が腕に取り付けた小さな装置を使い、MQ-25の状態を確認。それに基づき、操作を担当する人員が機体を動かし、飛行甲板上の走行やカタパルトへセットするまでの手順を実行しました。

MQ-25の状態を確認するボーイングの技術者(画像:U.S.Navy)
カタパルトに向かうMQ-25(画像:U.S.Navy)

 試験は実際の運用条件と同じように、昼間だけではなく夜間も実施。暗い飛行甲板でも、誘導灯を頼りに昼間と同じようにMQ-25は操作されます。

暗くなった飛行甲板で誘導されるMQ-25(画像:U.S.Navy)

 一連の試験修了を受け、アメリカ海軍側の開発プログラム・マネージャを務めるチャド・リード大佐は「実際に洋上で試験する以外に、新しい航空機を設計し航空団へと導入する良い方法はありません。私は試験を成功させてくれたチームのみんなを誇りに思います。私たちは航空団の未来に向け、また一歩前進しました」との談話を発表しています。

着艦フックを下ろしたMQ-25(画像:Boeing)

 ボーイングのMQ-25チーフエンジニア、ジム・ヤング氏は「海軍は空母艦上で航空機を動かす、厳格に確立させた手続きを有しています。私たちの目標は、それを一切変えることなく、MQ-25を適合させることにあります」とコメント。ほかの有人機と同じようにMQ-25が違和感なく運用できるよう、開発を進めるとしています。

カタパルトにセットされたMQ-25(画像:Boeing)

 空母上で運用されるMQ-25は、陸上で運用されるこれまでの無人機とは少々違い、艦上での動きは飛行甲板にいる操作員が遠隔操作し、発艦から着艦までの飛行については別の操縦員が担当する仕組み。飛行場とは違い狭く混雑する空母では、それぞれ専門の担当者を置いた方が良いとの考えからですが、今後の試験ではこちらの連携も確認されることになります。

<出典・引用>
アメリカ海軍 ニュースリリース
ボーイング ニュースリリース
画像:U.S.Navy/Boeing

(咲村珠樹)