弾道ミサイル防衛(BMD)に関しては、いくつかの段階に分けて対処する仕組みになっています。その対処手順をシミュレートする日米共同訓練「レジリエント・シールド2023」が、神奈川県の横須賀基地などを中心に2月23日まで実施されました。
日米共同訓練「レジリエント・シールド」は、弾道ミサイルの発射を想定し、各段階における対処の手順をコンピュータによってシミュレーションするもの。弾道ミサイル防衛(BMD)能力を有する艦艇のほか、迎撃ミサイルを保有する陸上、航空の各自衛隊、アメリカ陸軍、空軍、海兵隊が一丸となって参加します。
約1週間の訓練期間中、コンピュータ上では様々な状況下で弾道ミサイルの発射がシミュレートされます。
それに対し、速度が最も小さくなり迎撃しやすいミッドコース(弾道の頂点付近)から、再突入体が高速で落下してくる最終段階に至るまで、日米双方の担当部隊が切れ目なく連携し、撃墜に向けて対処する訓練が重ねられます。
弾道ミサイルは航空機などと違い、発射から比較的短時間で目標に到達します。このため、対処は時間との勝負。重ねて、段階によって対応する手段の担当が陸海空に分かれているので、情報の伝達が滞ると迎撃の失敗を招きかねません。
近年、複数の軍種が連携する「マルチドメイン」戦闘を重視するのが各国軍のトレンドとなっていますが、弾道ミサイル防衛はまさにマルチドメインの最たるものといえるでしょう。自衛隊とアメリカ軍、どちらが先に弾道ミサイルを探知しても、同じように共同で対処できる体制を強化する訓練が、この「レジリエント・シールド」なのです。
22日には日本海において海上自衛隊の護衛艦あたご、アメリカ海軍の駆逐艦バリー、韓国海軍の駆逐艦世宗大王が集まり、共同で弾道ミサイル対処のシミュレーション訓練も実施されました。
同じ22日、横須賀に停泊中のアメリカ海軍第7艦隊旗艦ブルーリッジでは、第7艦隊司令官のカール・トーマス中将、自衛艦隊司令官の齋藤聡海将、韓国海軍作戦司令官の金明秀中将が集まり「日米韓フラッグトークス」を実施。北朝鮮の弾道ミサイル問題をはじめ、3か国が直面する安全保障上の脅威について関係を強化することで一致しました。
訓練を終え、アメリカ第7艦隊司令官のカール・トーマス中将は「この訓練で、アメリカ軍と自衛隊との相互運用性の高さとともに、この地域をともに防衛するという決意を示すことができました」と総括するコメントを発表しています。
訓練期間中も、北朝鮮からICBM級の弾道ミサイルをはじめ、各種のミサイルが日本海に向けて発射されました。もしもの事態に備えるため、関係する各国、各部隊間の意思疎通は今後も重視されていくでしょう。
<出典・引用>
自衛艦隊 プレスリリース(訓練/フラッグトークス)
アメリカ海軍第7艦隊 ニュースリリース(訓練/フラッグトークス)
画像:海上自衛隊/アメリカ海軍
(咲村珠樹)