「犬を思い浮かべてみてください」
と言われて、貴方が思い浮かべた犬は何だっただろうか?チワワか?セントバーナードか?ドーベルマンか?ダックスフントか?
だが、どれも犬である。それなら魚だっていいじゃないか、という意見もあろう。確かにポリプテルスもタツノオトシゴもチョウチンアンコウも魚である。だが犬とは決定的に異なる事がある。犬は犬で一種であり、チワワやドーベルマンといったものは「品種」である。魚はそうではない。目レベルでの開きがある。
犬は、このように、「すべてが犬」でありながら、「それぞれの犬」で在り続けている。例えば、幼児であっても、ポメラニアンも柴犬も犬とみなすであろう。犬という概念は、このような多様性を容易に受け入れているのである。
そこでカレーである。
同じように、カレーを思い浮かべてみてほしい。
それは多くの家庭のようにご飯にかかったカレーであったか、それとも欧風カレーであったか、あるいはカレー入れに入ったカレーであったか、スープカレーであったか、それともインド人の作る本格インドカレーであったか。
だが、どれもカレーである。ここにあげた料理は、どれを見せても人はカレーであると答えるであろう。カレーという料理の概念は、相当な多様性を持っていると言えるのではないだろうか。
ここにあげた多様性が、犬とカレーの類似点である。犬もカレーも、相当姿形の異なるものを、それぞれ「犬」であり「カレー」であるとして受け入れているのである。品種名がわからなくても犬は犬と言えるし、正式な料理名がわからなくてもカレーはカレーであると言える。ここに犬とカレーの類似点がある。
注意してほしいのは、共通点ではなく類似点であるということだ。あくまでも「似た傾向」を持っているにとどまる。だが私は、この「犬とカレーの類似点」の発見が世にひろまれば、犬を見てカレーを思い浮かべる人が出現すると考えている。そのときこそ、犬とカレーは類似点ではなく、共通点を持つようになるのだろうと考える。
もちろんこれはちいさな一歩であり、しかもまだこれから踏み出すところである。だが、このちいさなコラムから、犬とカレーの類似点への認識が広まることにより、また新たな認識が現れるのではないかと考えられる。犬とカレーに類似点があるということは、自分で言うのも何だが大胆な発想である。しかしこれをきっかけに、もっと大胆な発想が現れるのではないかと期待している。
本文を読んだ皆様に置かれては、犬を見たらカレーを、カレーを見たら犬を、「そういえばこれらは類似点があったな」と思い出していただければ幸いである。そしてもっと不思議な類似点のある組み合わせを考えだしてほしい。
(文:エドガー)