「母を探しています。」
こんな悲痛な願いがネットで拡散されていた。
投稿したの関西中心に東名阪で活動するヴィジュアル系バンド『HOLYCLOCK』ボーカルの龍太朗さん。添えられたブログ記事によると、4歳の時に別れたお母さんを探しているという。
4月10日の誕生日の翌日に行う、ワンマンライブにお母さんを招待したいと伝えている。
■まさかもう会えないなんて考えてなかった
龍太朗さんがお母さんと別れたのは4歳の時。毎晩聞こえてくる父と母の怒鳴り声に布団の中でおびえていたという。
そんなある日、突然両親から告げられた一言。
「どっちについていく?」
龍太朗さんは当時イタズラざかりでよくお母さんに怒られていた。
だから深く考えずについ「お父さん」と。それからすぐお母さんはいなくなった。母がいなくなりぽっかり空いた父と子二人きりの生活。しばらくすると父は失業し酒におぼれるように……。
酒に任せて繰り返される言葉と力の暴力。幼い男の子は必死でそれに耐えた。そんな辛い毎日に追い打ちをかける出来事が起こった。お父さんが目の前で自殺をはかった。
幸いにして一命はとりとめたものの、その後も状況は変わらず。一時は継母が来たものの、継母も酒乱で家は暴力と怒号にあふれ、子供が安らげる場所などどこにもなかった。
夜中泣きながら歩いているところを保護されたこともあったという。
この時期について龍太朗さんは、夜中泣きながらさまよっていたところ保護してご飯をたべさせてくれたおばさん、警察署で宿題を見てくれた警察官、様子がおかしいといつも気にかけてくれた担任の先生など、支えてくれた全ての人に感謝の気持ちを抱き続けている。
それからしばらくして、龍太朗さんにやっと幸運が訪れる。
継母と父が離婚するのを機に、祖母の家に二人身をよせることになった。そこからは祖母が龍太朗さんを一生懸命に育ててくれたという。
そして大人になった今思うのは、「母を追い出した決定打は俺の選択なんだ」という後悔。毎年自分の誕生日が来るたびに、特にその思いは強くなり、「自分が救われたいだけなのかもしれないけど、一言母に謝りたい。」そう願うようになった。
■お母さん僕をみつけて
今回の件について、龍太朗さんが所属する事務所に連絡をとり、直接本人から考えを聞くことができた。
―どうして戸籍を辿ったりではなくネットで探し始めたんですか?
今までに何度か母を探そうと考えたこともありましたが、もし生きていて、向こうに家庭があった場合、今私が現れるのはどうなのか?という疑問が過ってしまい、足踏みしている状況が続いていました。
もちろん戸籍を辿る方法も考えなかったわけではありませんが、自分自身の人生において、楽しいときも辛い時も常に音楽が側に存在していて、人生と言っても過言ではありません。
「自分の経験が誰かの救いになればいい」その気持ちで音楽を始めました。その音楽で、母と再会したいと考えて今回のブログを書かせて頂きました。
―たしかに、足踏みしてしまいますね。それでお母さんに気づいてもらい、ライブに来てもらいたいと?
皆様のお力添えによって自身の誕生日にワンマンライブを行わせて頂くことになり、自分が音楽を始めたきっかけや、自分自身の人生を振り返る機会も同時に与えて頂いたと考えております。
―ライブが一歩踏み出すきっかけになったんですね
人生、音楽、誕生日。そして産んでくれた母に対する感謝がすべて自分の中で繋がったと感じています。
今回、龍太朗さん自身の子供のころの写真を公開してもらえることになった。
写真はお母さんと別れる前後の姿だそうだ。
龍太朗さんの誕生日は4月10日。龍太朗は本名のまま。
そして、4月11日に行われるバースデーライブ『HOLYCLOCK 5th oneman「MOTHER」』は、梅田Zeela(大阪府大阪市北区堂山町1-5)で開場18:00、開演18:30の予定。
お母さんのゲストパスは受付で名前を言えばもらえる段取りとなっている。
音楽にかけ母との絆を再び手繰ろうとする行為は、今回拡散される中でネットで一部に言われていた「売名」なんかが目的ではなく、少し不器用で遠回りだけども、とても純粋な動機に思われた。
最後インタビューで龍太朗さんに「もしこれで会えなかったらどうしますか?」と聞いてみたところ、それでも「母に一目会いたい」と語ったのが印象的だった。
【ブログに公開されているメッセージより】
母へ。
当日受付で名前を言って貰えば中に入れます。今更何だと思うかもしれませんが、どうか一つだけ我儘を聞いて頂けないでしょうか?
貴女には感謝しています。
母として接してくれなくてもいいです。
会いたくないなら会わなくてもいいです。ただ、できることなら一度お会いして謝らせてほしいです。
お願いします。
龍太朗
【『HOLYCLOCK』プロフィール】
2012年12月12日始動。関西中心に東名阪で活動し、メンバーはVo.龍太朗、Gu.琢弥、Gu.薫の三人。代表曲には『白の残響、210秒間が紡ぐ虚偽の光』『ホラセカイニキミガイナイ』などがある。