おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

被虐待犬から警察犬へ 虐待乗り越え今度は人を助ける任務に

 ペットの不法な繁殖や虐待、多頭飼い崩壊など、動物愛護に反する話は度々世間で物議を醸しています。愛護センターに保護されるペットたちも虐待されてきた子たちも多い様子。そんな辛い過去を背負った保護犬がドッグランのオーナーに保護され、そして嘱託警察犬へと見事なジョブチェンジを果たし、大きな話題になりました。

  •  嘱託警察犬の任に就いたのは、FT系ラブラドールレトリーバーで現在推定3歳女の子のナッツ。2015年10月につがる市の保健所に他のきょうだいと一緒に収容されたのですが、その時には既に虐待の痕跡と思われる口を縛った時にできたであろう傷ができていました。写真で見る限りの推定年齢は生後半年と思われるナッツたちは飼い主が名乗り出ない為、保健所から青森市の動物愛護センターに移送。そこできょうだいと一緒に健康チェックをパスし、譲渡用の犬となったのですが、なかなか貰い受ける人は現れなかったそうです。

     そんな折、譲渡ボランティアに登録したのが青森県八戸市にある「ドッグランてくてくピクニック」のオーナーである川向さん。当時譲渡用としてセンターにいたのはナッツら5頭の犬たち。その中でも特に躾が大変そうなナッツに目を付けたのでした。愛護センターの外まで響き渡り、ずっと止む事なく吠え続けており、落ち着きもなかったナッツは犬のしつけに詳しくない一般市民にはとても世話が難しいと川向さんは判断。ナッツを引き受け、自宅で慣らしながら里親を募集する事にしたのです。

     心にも体にも傷を負い、人に慣れるのが難しそうにも思われたナッツも、川向さんと一緒に広大なドッグランで生活していくうちに徐々に落ち着きを取り戻していきました。そんなナッツ、一つ困った癖がありました。それは、「食糞」。自分の排泄した糞を食べてしまうこの行為に手を焼いている犬の飼い主は少なくないかと思いますが、ナッツもこの癖を抱えていました。しかし、この癖がある切っ掛けを作る事となったのです。

     ナッツは非常に鼻が良く利く犬で、ほんの親指の先ほどの糞のかけらを、2〜30メートル先から漂う浮遊臭だけで嗅ぎ取り、まっすぐ行って食べようとするほどに鋭い嗅覚を持ち合わせていました。普通の犬でも鼻が利くと言われていますが、この距離からも完璧にターゲットとなるニオイを追跡できるのは犬でもなかなか難しい事。この困った癖が切っ掛けで、川向さんはナッツの鼻の良さを知る事となったのだそうです。

     ナッツはその体の大きさから里親を申し出る人は外飼いを希望する人ばかりでしたが、生い立ちから考えても室内飼いの方がナッツの為に良いのではと思い悩んでいた川向さん。今後の事について思い悩んでいたある日、とあるドライブインで偶然にも警察犬訓練士の方との出会いが。犬の話で盛り上がったところ、ふとナッツの鼻の良さを思い出した川向さんは警察犬訓練士さんに、「警察犬の練習をこの子に教えたい」と伝えたのでした。訓練士さんは川向さんの申し出に快諾、かくして、ナッツは警察犬の訓練を受ける事となったのでした。

     そして……6月12日、長きにわたる楽しい訓練の成果が遂に。警察犬の試験に合格したのでした。

     現在はナッツは他の看板犬たちと楽しく過ごしながら、警察からの要請があった時に出動する嘱託警察犬としてドッグランで楽しい日々を送っています。しかし、そんなナッツの成果はなかなか知られる事がなく……先日ツイッターで話題となった事により、はれてその見事なジョブチェンジが世に知られる事となったのです。

     「愛護センター出身で被虐待犬だったナッツ 先日の警察犬審査会に合格して警察犬になりました!人間に虐待されて遺棄された犬が今度は人を助ける任務に就きます。全然ニュースにもならないこの大逆転犬生を知ってほしい…」とつぶやいた、ツイッターユーザーのたまりんさんのつぶやきは、3万5千以上のリツイートと180近くのコメントが寄せられています。警察犬の事をあまりよく知らない人からは、「虐待された後に警察犬にされて働かされている」「美談とは思えない」というコメントも来ていますが、そんな事はありません。虐待されて人間に牙をむいてもおかしくなかったはずの犬が人間に心を開き、そして「ヒトの喜びがワタシの喜び」という犬の心を警察犬として見事に開花させたのですから。市内在住者からは「わが市の誇りです」とコメントが届き、「人に裏切られても、人を愛し尽くそうとする姿に人間ももっと学ぶべき」「人間に、虐待されて遺棄されたのに、助けてくれるのね。ありがとう。」とたくさんの称賛のコメントがナッツに寄せられています。

     辛い過去を背負ってもなお、仲間と楽しく今を生きるナッツ。そんなナッツが看板犬をしている「ドッグランてくてくピクニック」には、推定15歳の女の子のシータ、9歳女の子のチワワの柚木、推定6歳男の子の福寿と同い年とみられる女の子のマミーがナッツと一緒に過ごし、遊びにきた犬たちを迎え入れてくれます。柚木は里親募集を頼まれたのがそのまま看板犬にという事ですが、他の犬たちはみな愛護センター出身。みんな保護されてきた子たちですが、公式Facebookにはみんなのびのびと楽しく過ごしている様子がたくさん投稿されています。

    <記事化協力>
    「ドッグランてくてくピクニック」オーナー 川向さん
    たまりんさん(@tamastardust)

    (梓川みいな)

    あわせて読みたい関連記事
  • 華の会メール・バナー
    PR

    オトナ世代の恋愛マッチング

  • 華の会メール・バナー
    PR

    趣味でつながる30代からの恋愛マッチング \華の会メール/

  • パグの神々しいおトイレ姿が話題 朝日を浴びながら見せた堂々たる瞬間
    インターネット, おもしろ

    パグの神々しいおトイレ姿が話題 朝日を浴びながら見せた堂々たる瞬間

  • ラップの芯に顔をズボッ 「面倒くさい遊び」を覚えたポメラニアン
    インターネット, おもしろ

    ラップの芯に顔をズボッ 「面倒くさい遊び」を覚えたポメラニアン

  • よだれかけが小さすぎるワンコ アンバランスさに癒やされる人続出
    インターネット, おもしろ

    よだれかけが小さすぎるワンコ アンバランスさに癒やされる人続出

  • 「まだ寝かせてほしいワン……」 お疲れワンコの朝のひとコマに共感集まる
    インターネット, おもしろ

    「まだ寝かせてほしいワン……」 お疲れワンコの朝のひとコマに共感集まる

  • 犬の呼吸 壱の型──尻尾で刀を操る柴犬、まさに“犬柱”
    インターネット, おもしろ

    犬の呼吸 壱の型──尻尾で刀を操る柴犬、まさに“犬柱”

  • 愛犬の誕生日に“狂気のケーキ”を手作り ホラーすぎて家族が悲鳴
    インターネット, おもしろ

    愛犬の誕生日に“狂気のケーキ”を手作り ホラーすぎて家族が悲鳴

  • 仰向けで棚の下に!? ポメチワの「すき間寝」が無防備かわいい
    インターネット, おもしろ

    仰向けで棚の下に!? ポメチワの「すき間寝」が無防備かわいい

  • まるでベテランライダー バイク型遊具で貫禄を見せる柴犬
    インターネット, おもしろ

    まるでベテランライダー バイク型遊具で貫禄を見せる柴犬

  • そーっと足を伸ばして……水が苦手なポメラニアンの犬かきチャレンジが愛おしい
    インターネット, おもしろ

    そーっと足を伸ばして……水が苦手なポメラニアンの犬かきチャレンジが愛おしい

  • 豆柴“本気”のコーナリングに2万いいね レーサー顔負けの見事な攻め方!
    インターネット, おもしろ

    豆柴“本気”のコーナリングに2万いいね レーサー顔負けの見事な攻め方!

  • 梓川みいな看護師(正看護師有資格者)

    記事一覧

    一般内科、呼吸器科、整形外科、老年科、発達障害などを得意とする。医療・介護福祉等に高反応。雑多なネタも紹介していきます。
    娘二人(ともに発達障害あり)とネコ二匹の母。シングル。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと
    社会, 雑学

    災害ボランティアに行く前にやっておくべき大切なこと

  • お餅での事故を防ぐ ここがポイント!(出典:政府広報オンライン)
    社会, 雑学

    お餅での事故を防ぐ 3つのサインと3つのポイント!

  • 【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?
    ライフ, 雑学

    【ナースなコラム】MRIに禁忌なアレコレ え?増毛パウダーも!?

  • みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?
    ライフ, 雑学

    みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?

  • 【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし
    ライフ, 雑学

    【看護師コラム】実はこれやっちゃダメなんです!処方薬の使いまわし

  • エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分けが装置爆誕
    インターネット, おもしろ

    エクストリーム! 全自動マーブルチョコの色分け装置が爆誕

  • トピックス

    1. マクドナルド非公認レシピ「改造てりたま」

      マクドナルド非公認レシピ!夏のてりたま欲を満たす「改造てりたま」を作ってみた

      春限定の人気商品「てりたまバーガー」を夏でも味わうため、筆者が考案した「改造てりたま」の作り方を紹介…
    2. 江頭2:50の“トルコ伝説”がポテチ化 ファミマ限定「伝説のケバブ風味ポテトチップス」を実食

      江頭2:50の“トルコ伝説”がポテチ化 ファミマ限定「伝説のケバブ風味ポテトチップス」を実食

      江頭2:50さんが60歳の節目に放つ、まさに“レジェンド級”のコラボ商品が登場です。YouTubeチ…
    3. 企業と株主対立を“見える化” ストラテジックキャピタル、ガンホー批判サイト公開

      企業と株主対立を“見える化” ストラテジックキャピタル、ガンホー批判サイト公開

      ゲーム会社ガンホー・オンライン・エンターテイメントをめぐり、投資ファンドの株式会社ストラテジックキャ…

    編集部おすすめ

    1. 「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる」4羽の文鳥 まるで連続写真?

      「なんかやってる……」Xで飼い主さんにこうつぶやかれたのは、4羽の白文鳥さんたち。添えられた写真には、4羽が棚の上に連なって集まり、まるで連…
    2. 法事でオリジナルTシャツ!?音楽フェスのような斬新な引き出物が話題

      法事で配られた家紋&没年入りTシャツが話題 “フェス感”漂うセンスに爆笑

      法事の引き出物(お返し)といえばお菓子やカタログギフトが王道ではないでしょうか。しかしときには予想だにしない品をもらうこともあるようで……。…
    3. 災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      災害関連死ゼロを目指す「EDAN」発足 フィリップ モリスら民間団体が連携

      フィリップ モリス ジャパン(PMJ)が、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)と共同で、避難生活に特化した支援ネットワーク…
    4. 「週刊文春」2025年9月4日号(8月28日発売)

      週刊文春、最新号表紙は「白紙」 48年続いた和田誠さんの表紙絵に幕

      総合週刊誌「週刊文春」は、2025年8月28日発売の9月4日号で48年間にわたり表紙を飾り続けたイラストレーター・和田誠さんの絵を終了し、大…
    5. 作文嫌いの救世主 親子で楽しむ「魔法のワークシート」が超便利

      作文嫌いの救世主 親子で楽しむ「魔法のワークシート」が超便利

      夏休みの宿題において、多くの小学生が悩まされる「作文」。特に低学年の子どもにとっては「何から書けばいいのか分からない」壁にぶつかることもしば…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト