(画像:仔ウマ「フジ」(冷凍標本)、年代/41,000~42,000年前 発掘/2018年8月11日 発掘場所/サハ共和国 ベルホヤンスク地区 ユニュゲン バタガイ)
2019年6月7日から、東京の日本科学未来館で始まる特別展「マンモス展」。ロシア連邦サハ共和国の永久凍土から発掘された、マンモスをはじめ古代の動物たちの冷凍標本が世界最大規模で展示されます。2005年日本国際博覧会「愛・地球博」で展示された「ユカギルマンモス」全身冷凍標本が、日本で再度展示されることが話題となっていましたが、今回展示される約4万2000年前の仔ウマの冷凍標本から、世界で初めて血液と尿の採取に成功したという知らせが、ロシアの研究機関からもたらされました。
この仔ウマ「フジ」は2018年8月11日に、ロシア連邦サハ共和国ベルホヤンスク地区の永久凍土地帯にあるバタガイカ・クレーターで、この「マンモス展」とロシア北東連邦大学北方応用生態研究所の合同チームによって発掘されたもの。現在はロシア連邦の特別重要文化財に指定されています。バタガイカ・クレーターは1960年代から森林伐採によって太陽の光が地表に届くようになり、永久凍土が融解して大きな穴となった場所です。現在も永久凍土の融解によってクレーターの規模は拡大し続けており、その過程で永久凍土に埋れていた古代の動物などが見つかるようになっています。
仔ウマの解剖を行ったロシア北東連邦大学北方応用生態研究所マンモスミュージアムのグレゴリエフ館長によると、内臓がすべて良い状態で残っていたとのこと。このため、心臓の血管から液体の血液サンプルを採取することができたといいます。
グレゴリエフ館長は「4万2000年もの間、凍結した状態だったこと、埋まっていた環境が特に好条件だったおかげで、このような状態が保たれていました。筋肉組織は生きていた時の元々の赤みを帯びた色でした。これまで世界で発見されてきた氷河期の動物の中でも、最高の保存状態であると言えます」と語っています。
また、外部に明らかな損傷がないというのも大きな特徴です。「古生物学の標本がこのような状態で見つかることは非常に稀です。発見されても、どこか欠けているか、ほんの一部か、あるいは体が大きく変 形しているか、ミイラ化がかなり進んでいるか、そういったものがほとんどです。 この仔ウマの毛は栗色で、尻尾とたてがみは黒です。毛は頭と足、そして胴体の一部に残っていました。これも、小さな学術的発見の一つです。これまでに見つかってきたウマはどれも毛が残っていませんでした」とグレゴリエフ館長は語り、非常に貴重な標本であることが判明したのです。
この貴重な標本が展示さるのは世界で初めて。新生代の生物を研究対象とする古生物学者にとっては、宝の山のような標本だと言えます。特別展「マンモス展」は6月7日~11月4日、東京の日本科学未来館1階企画展示ゾーンで開催されます。
情報提供:日本科学未来館、「マンモス展」プロモーション事務局
(咲村珠樹)