サインで済むことも多くなりましたが、契約などの大事な場面で出番のある印鑑。自分であることを証明する手段として長年使われてきたものですが、パワーストーンで作る「宝石印鑑」が先日Twitterで話題になりました。

 宝石印鑑とは、天然石や人工石のパワーストーンを材料にした印鑑(印章)のこと。親から子に託す願いを反映させた名前が、古代から信じられてきたパワーや願いを託した石に刻まれることで、永くその人を支えるものとなる訳です。

 話題となったのは、出産祝いに記念になる品を贈りたい、というお義母さんの申し出に名前の印鑑をお願いしたところ、生まれたばかりの孫へのメッセージが箱書きされた宝石印鑑が届いたというツイート。

 このツイートの宝石印鑑を取り扱っているのは、メガネの町としても知られる福井県鯖江市に本店があるROSE STONE(株式会社小林大伸堂)。1893年創業で、5代目となる印章彫刻技能士の小林稔明さんによると、専務である小林美和子さんがルビーの印鑑を見て「印鑑といえば白か黒しかない地味なイメージだったけど、こんなに美しい宝石印鑑があるなんて知らなかった。この感動を世に広めることが私の使命だ」と感じ、13~14年ほど前から取り扱いを始めたとのこと。

 現在ROSE STONEで取り扱っている「宝石印鑑」は、ローズクォーツ(紅水晶)、天然水晶、白水晶(クリスタル)、天然シトリン(黄水晶)、シトリン、ラピスラズリ、タイガーアイ(虎目石)、アメジスト、翡翠、ルビー、ブルーレース(空色縞メノウ)、紫メノウ、赤メノウ、白メノウ、アベンチュリンに、金属のチタンとgene(オリジナル鍛造多層鋼)の18種類。編集部には撮影用の見本として、ローズクォーツと翡翠、天然シトリンの3種類を貸していただきました。

 撮影用に貸していただいた見本はすべて天然石のため、それぞれ微妙に表情が違います。特にローズクォーツは、光に透かしてみると内部のクラックが模様となって浮かび上がります。

 また印鑑には、加工が難しい翡翠、ルビー、天然シトリン、geneを除き、誕生石やジルコニアのポイントを付けることも可能。天然水晶、白水晶(クリスタル)、シトリン、アメジスト、チタンの印鑑には、本体側面にメッセージを刻印することもできるとか。

 宝石印鑑は、本人だけでなくプレゼントとして注文される方も多いとのこと。たとえば、子どもが生まれた記念に、将来使ってもらう印鑑を作っておくとか、卒業や結婚など、人生の節目に贈られるケースがあるそうです。結婚などで姓が変わる場合を考慮して、名前だけで作ることも可能だといいます。

 小林さんは「私たちがお作りしているのは、単なる道具としての印鑑ではありません。名前は、1人に1つしかないアイデンティティであり、強い想いを込めて両親からプレゼントされた“宝物”です。その宝物をもらうシーンというのは、就職や成人、結婚など、人生の節目の期待と不安が入り混じる時だと思います。私たちは、その想いをうかがい、その後の人生にとってのお守りのような存在になりますよう、心を込めてお作りします」と取材に語ってくれました。

 美しいだけでなく、パワーストーンだけにメッセージ性も強くなる宝石印鑑。貰った側にとっては一生の宝物になりそうです。

<記事化協力>
ROSE STONE(株式会社小林大伸堂)

(咲村珠樹)