おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

ユニ・チャーム中長期ESG目標発表 使用済み紙おむつを回収し再生へ リサイクルモデルを構築

 生活用品メーカーのユニ・チャーム株式会社は、2030年までの中長期ESG(環境・社会・ガバナンス)目標として、人だけでなくペットなどすべての存在が共生する社会づくりに貢献する、とした「Kyo-sei Life Vision 2030」を発表。2020年10月22日に都内およびリモートで発表会を開催しました。

  •  紙おむつや生理用品、ペット用品など生活に密接した商品を手がけるユニ・チャーム。環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の観点から、企業の中長期的目標として掲げた「Kyo-sei Life Vision 2030」は、企業理念である「NOLA&DOLA(Necessity of Life with Activities & Dreams of Life with Activities)」に沿ったものだといいます。

     発表会であいさつに立った高原豪久社長は、目標に掲げた「Kyo-sei(共生)」について、誰もが可能性を最大限に発揮でき、自分らしく充実した人生を送れと同時に、お互いが自立し、ほどよい距離感で助け合いながら共存していくことだと語りました。

     その実現に向け、企業として色々な形の「やさしさ」でサポートしていくとのこと。それにあたり、これまで紙おむつなどベビーケア用品のブランドアンバサダーとして存在していた「Moonyちゃん」を、企業の姿勢を示す「コーポレート・アバター」として捉えなおし、今後発信していくそうです。

     例として、犬や猫などは人間とともに暮らしていく大切な家族であるとして、ペットではなく「パートナー・アニマル」という呼び方を提言。また理屈を優先するのではなく、関わる人やその家族の顔を思い浮かべていけるようなバリューチェーンを構築し、地域貢献をしていくと語りました。

     目標の策定などについて説明に立った、ESG本部E&S推進部の住田美生E&Sグループマネージャーは、2050年に「共生社会」が実現されると仮定して「理想の将来像」を設定。その実現に向けて必要なアプローチを整理し、取り組むべきテーマ、指標、目標を約10か月かけて設定したといいます。

     合計で20あるアプローチは、大きく4つの分野に分けられます。「私たちの健康を守る・支える」「社会の健康を守る・支える」「地球の健康を守る・支える」、そして企業としてのあり方を示す「ユニ・チャーム プリンシプル」です。

     まず「私たちの健康を守る・支える」点については、すべての人が自分らしさを実感し、日々の暮らしを楽しむことができる社会の実現に貢献する商品や、サービスの展開を目指すとしています。これからの超高齢化社会を視野に入れ、軽度の尿もれパッド、骨盤をサポートし自立歩行を補助するリハビリパンツといった排泄ケア商品を通じ、健康寿命の延伸やQOL(Quality of Life)向上を図るとのこと。

     また、性別や性的指向により活躍が制限されない社会への貢献に向けては、女性の生理に着目。生理を隠すべき恥ずかしいものではなく、自然なものとするべく生理用品のパッケージを工夫した「#NoBagForMe」プロジェクトや、開発途上国での初潮・月経教育を通じ、生理中でも女性が自分らしく過ごせるような環境づくりに努めるとしています。

     このほかにもパートナー・アニマル(ペット)が家族はもちろん、地域に暮らす人々から歓迎されるような社会の実現に貢献する商品やサービスを展開。ベビーケア用品についても、育児生活の向上とともに、開発途上国で深刻な問題である蚊を媒介にした感染症から赤ちゃんを守るため、蚊を寄せ付けない機能を持った紙オムツを開発し、マレーシアで販売を始めるなどの取り組みが紹介されました。

     社会に貢献する「社会の健康を守る・支える」の分野では、提供する商品やサービスを通じ、消費者の安全・安心・満足の向上と、社会問題の解決や持続可能性への貢献の両立を目指すとのこと。例として、地域経済に貢献する「地産地消」で調達した原材料を使用した商品・サービスを、2020年を基準として2030年までに倍増させるとしています。

     環境問題に配慮した「地球の健康を守る・支える」というテーマでは、事業展開に使用する電力の再生可能エネルギー化を達成するとともに、2030年には商品に使用されるプラスチックに占めるバージン石化由来プラスチック比率を2020年の半分にまで削減するといいます。

     今後超高齢化社会を迎えることが予想されるため、ユニ・チャームでは紙おむつの使用量が増加すると予測。そのため使用済み紙おむつを回収し、パルプ資源をリサイクルして紙おむつを製造するモデルを構築することでバージンパルプ使用量を削減するとしています。

     すでに鹿児島県志布志市と大崎町で実験プラントが稼働しており、ほぼ新品同様にまでパルプが再生され、理論上は10回ほど紙オムツとして再生が可能だとのこと。このプラントを2030年までに国内外10か所以上に広げる計画で、自治体やその海外姉妹都市からの問い合わせも来ているそうです。

     企業経営に関する取り組みでは、ダイバーシティマネジメント(多様性のある経営環境)を推進。例として女性社員に様々な機会を提供することにより、女性社員比率を上げると同時に、男女ともに育休取得を奨励するなど仕事と育児の両立を支援。心身ともに社員が健康で安心して働ける職場環境整備に尽力するとしています。

     住田氏が一例として挙げたのは、サウジアラビアでの取り組み。イスラム教徒が大部分を占めるサウジアラビアでは、戒律により家族以外の男性と同じ部屋や建物にいてはいけない、という事情があったとのこと。そのため、新たに女性だけが働く事業所を開設し、女性の社会進出を促進しているそうです。

     会場の後方には「Kyo-sei Life Vision 2030」に沿った商品や、使用済み紙オムツから再生したパルプなどの実物を展示。取り組みを目に見える形で示していました。

     この「Kyo-sei Life Vision 2030」についての詳細は、ユニ・チャームのホームページで日本語と英語で掲載されており、誰でも見ることが可能となっています。共生社会の実現を目指し、2030年までに達成しようとするユニ・チャームの取り組み。実際の商品にどのように反映されるのか、楽しみです。

    取材協力:ユニ・チャーム株式会社

    (取材:咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • エンタメ, 芸能人

    掃除好きのキスマイ玉森がほこりが取れて「たまらんぞ!」 新CMで恍惚の表情

  • イベント・キャンペーン, 経済

    発売されたばかりのカップヌードル「謎肉祭」が一時販売休止

  • 宇宙・航空

    【海上自衛隊カレー】下総航空基地でパイロットも舌鼓をうつ金曜カレー食べてきた

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」
    エンタメ, 芸能人

    嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現…

  • カレーシチューに、フレンチサラダ、本当にまずかった脱脂粉乳他(2300円)
    イベント・キャンペーン, 経済

    昭和の“たのしい給食”が期間限定で復活 脱脂粉乳まで再現した「絶滅危惧食フェア」…

  • 新商品「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ>」
    商品・物販, 経済

    焼きあごの香ばしさと細カタ麺の共演 「うまかっちゃん<濃厚新味 あごだしとんこつ…

  • 北海道産のチーズを2種類使った秋冬限定フレーバー「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」
    商品・物販, 経済

    北海道産チーズのW使い!「かっぱえびせん 北海道Wチーズ味」がこの秋登場

  • クリスプ のりしおバター味
    商品・物販, 経済

    カルビー、「クリスプ のりしおバター味」発売 レアな“ホシ型クリスプ”も登場

  • 特別災害対策本部車(国土交通省)
    社会, 経済

    消防車も自衛隊車もNERVも! 防災車両がずらり「ぼうさいモーターショー2025…

  • トピックス

    1. カプコンが「二次創作ガイドライン」を公開 寛大なるルール制定の一方、戸惑いの声も

      カプコンが「二次創作ガイドライン」を公開 寛大なるルール制定の一方、戸惑いの声も

      ゲームソフト大手の株式会社カプコンは11月4日、「カプコン二次創作ガイドライン」を公式サイトで公開し…
    2. 仕事をする妻が武器商人にしか見えない?とあるXユーザーの自宅の“秘密”が最高だった

      仕事をする妻が武器商人にしか見えない?とあるXユーザーの自宅の“秘密”が最高だった

      数え切れないほどの銃や剣が並ぶ部屋の中で、ノートパソコンに向かう1人の女性。クライム系映画の1シーン…
    3. 「クリームソーダみたいなオムライス」が爆誕 インパクト抜群の喫茶店風アレンジ

      「クリームソーダみたいなオムライス」が爆誕 インパクト抜群の喫茶店風アレンジ

      子どもから大人まで人気のメニュー「オムライス」を大胆にアレンジして見せたのは、Xユーザー・盛り塩さん…

    編集部おすすめ

    1. 1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      株式会社KARATZが、カバヤ食品の玩具菓子「セボンスター」45周年を記念したジュエリー企画「大人のセボンスター」第3弾を発表。11月5日に…
    2. 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」

      嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現時点なし」

      人気グループ「嵐」の公式SNSをめぐり、偽アカウントの出現が相次いでいることを受け、所属する株式会社嵐の四宮隆史社長が11月4日、自身のX(…
    3. ヒャダイン氏おすすめ 「ブロッコリー×ごはんですよ×ねぎ油」レシピ作ってみた

      ヒャダイン氏おすすめ 「ブロッコリー×ごはんですよ×ねぎ油」レシピ作ってみた

      音楽クリエイターのヒャダイン(前山田健一)さんが、Xで紹介した超手軽レシピ。それは「ブロッコリーを桃屋『ごはんですよ』と『ねぎ油』で和えたら…
    4. カレーシチューに、フレンチサラダ、本当にまずかった脱脂粉乳他(2300円)

      昭和の“たのしい給食”が期間限定で復活 脱脂粉乳まで再現した「絶滅危惧食フェア」

      昭和50年代までの学校給食を忠実に再現した「絶滅危惧食フェア」が、11月7日~9日までの3日間、東京都八王子市にある「給食のおばさんカフェテ…
    5. まるで洗車機?「理想の風呂」イラスト動画がまさしく理想すぎる

      まるで洗車機?「理想の風呂」イラスト動画がまさしく理想すぎる

      お風呂に入るのが面倒な日、ありますよね。そんな気持ちに寄り添いながら「こうだったら最高!」という理想を描いたイラスト動画がXに投稿され、大き…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト