航空自衛隊は2020年10月23日、10月20日に日本海、東シナ海、沖縄周辺の空域においてアメリカ空軍のB-1B爆撃機と共同訓練を実施したと発表しました。B-1B爆撃機はグアム島のアンダーセン空軍基地を離陸し、空中給油を受けながら日本海から沖縄にかけて無着陸で飛行し、アンダーセン基地に帰還しています。

 この訓練に参加したのは、航空自衛隊では第2航空団(北海道千歳基地)から4機のF-15、第5航空団(宮崎県新田原基地)第305飛行隊から4機のF-15、第6航空団(石川県小松基地)から4機のF-15、第7航空団(茨城県百里基地)第3飛行隊から2機のF-2、そして第9航空団(沖縄県那覇基地)から4機のF-15。アメリカ空軍のB-1Bは、テキサス州ダイエス空軍基地からグアムに展開した、第9遠征爆撃飛行隊(9th EBS)の所属機です。

 B-1Bは、アメリカ空軍の爆撃機が世界中どこへでも速やかに展開し、打撃力を行使できることを示す「Bomber Task Force」の一環でグアムのアンダーセン空軍基地へ展開。第二次戦略兵器削減条約(START II)の対象となったため、核兵器の運用能力こそ失いましたが、巡航ミサイルや各種の精密誘導爆弾を多数搭載できるため、超音速飛行能力を含めアメリカ空軍の戦略兵器として重要な爆撃機です。

 アメリカ空軍第9遠征爆撃飛行隊長のライアン・ストールズワース中佐は「どのBomber Task Forceにおいても、戦略面と戦術面双方の目的を満たす必要があるので重要なものです。このような訓練によって、私たち爆撃機部隊は致命的打撃力と即応体制、そして軍全体へ経験を積ませることができます。同時に、アメリカ軍がいついかなる場所でも任務を遂行できることを内外に知らしめてもいます」と自らの任務についてコメントしています。

 グアム島アンダーセン基地を離陸したB-1Bは、空中給油を受けながら日本列島を囲むように飛行。自衛隊の戦闘機は、通常の対領空侵犯措置任務(スクランブル:QRA)と同じ要領で、B-1Bの接近に合わせて基地を離陸し、部隊の担当空域で合流、編隊飛行して次の部隊と交代し、帰還することを繰り返して訓練を実施しました。

 通常のスクランブル、たとえばロシア軍機の場合、自衛隊が使用しているレーダーの周波数やスクランブル時の要撃管制で使用する無線の周波数、またスクランブルした戦闘機が到達する所要時間などの情報を収集しているのですが、どちらにとっても対応を間違えれば一触即発の危険がともないます。これに対し、共同訓練では「実戦」の緊張感なくスクランブルから当該機への接触、監視(エスコート)飛行ができるため、自衛隊にとっても非常に有意義なもの。

 宮崎県新田原基地の第5航空団から訓練に参加した、第305飛行隊長の小林2佐は「この訓練は戦技向上だけでなく、強固な日米同盟とこの地域の平和と安定に寄与する姿勢を示す貴重な機会です。米国空軍との共同訓練を通じ、私たちは精強さと即応能力を磨いています。これからも同盟・パートナー諸国とともに、自由で開かれたインド太平洋地域の実現に邁進していきます」とのコメントをアメリカ空軍を通じて発表しています。

 今回の訓練でB-1Bは、西太平洋を航行中しているアメリカ海軍の強襲揚陸艦アメリカとも訓練を実施しています。強襲揚陸艦アメリカを基幹とした海兵隊を含む水陸両用部隊は、東アジアにおけるアメリカ軍の重要な戦力。アメリカ軍がこの地域における平和と安定に深く関与する姿勢を示したものといえるでしょう。

<出典・引用>
航空幕僚監部(航空自衛隊) 報道発表資料
アメリカ太平洋空軍 ニュースリリース
Image:USAF

(咲村珠樹)