2019年3月8日、アメリカ軍の航空史にひとつの節目が訪れました。電子戦機EA-6Bプラウラー最後の飛行隊となっていた、アメリカ海兵隊の第2電子戦飛行隊(VMAQ-2)が解隊されることとなり、ノースカロライナ州チェリーポイント海兵隊航空基地で解隊式が行われたのです。これによって、アメリカ軍からEA-6Bプラウラーが退役しました。

 EA-6Bプラウラー(「うろつくもの」の意)は、グラマン(現:ノースロップ・グラマン)がA-6イントルーダー艦上攻撃機をベースに開発された電子戦機。前任となるEA-6A“エレクトリック・イントルーダー”から胴体を延長し、並列複座(乗員が横並びに座る2人乗り)から電子戦装備オペレーター席を2席増やして「田の字」型に4人乗りとした機体です。1968年5月25日の初飛行後、アメリカ軍では1971年7月から就役してEA-6Aを置き換えました。

 専任のオペレーター席を設けたEA-6Bは、これまでの電子戦機に比べて飛躍的に能力が高まりました。相手のレーダーを攻撃する能力だけでなく、電波情報を収集する能力も持ち、より高度な電子戦を展開できるようになったのです。また、胴体を延長した分、アップグレードの余地も大きくなり、1970年代から2000年代にかけて逐次能力向上改修を受けています。1966年生産開始の原型機から1991年の生産終了まで、トータルで170機が生産されました。


 長年使われてきたEA-6Bですが、初飛行から40年を経過した時点で老朽化が進み、徐々に戦場での要求に合わなくなってきます。後継機としてF/A-18スーパーホーネットを母体としたEA-18Gグラウラーが開発され、アメリカ海軍では2008年から配備が始まりました。海軍は2015年に全てのEA-6BをEA-18Gへと置き換えが完了。残すはノースカロライナ州チェリーポイント海兵隊航空基地に拠点を置く、第14海兵隊航空群(MAG14)隷下の第2電子戦飛行隊(VMAQ-2)に所属する6機のみとなっていました。

 VMAQ-2は“テロとの戦い”のために中東に派遣されていましたが、2018年11月にアメリカ本国へと帰還。以降は解隊へ向けての残務整理が行われていました。そして2019年2月28日に最後のフライトが行われ、EA-6B最後の雄姿を記念に残しています。


 現在のところ、アメリカ海兵隊ではEA-18Gの調達を予定しておらず、電子戦に関しても高度な能力を持つF-35Bで、これまでのEA-6Bの役割を担うことになっています。また、海軍とともに作戦行動することで、海軍のEA-18Gのサポートも受けられるという事情もあるようです。EA-6Bの退役で、アメリカ海兵隊における電子戦機の歴史は一旦、幕を下ろすことになります。

Image:USMC

(咲村珠樹)