アメリカ国防総省は2021年1月19日(現地時間)、大統領就任式の警備のため招集された約2万5000名の州兵のうち、12名についてセキュリティ上の懸念があるため任務から除外すると発表しました。州兵の制服組トップである州兵総局長によると、12名のうち2名は「不適切なコメントや文章」を残していることが確認されたため、としています。
大統領就任式は、アメリカにとって国家元首が交代するという最大の国家的行事。このため、毎回首都ワシントンD.C.では厳戒態勢が敷かれ、大統領を警護するシークレットサービスやワシントンD.C.の警察・消防以外にも、アメリカ全土から州兵や国境警備隊、沿岸警備隊が招集され、不測の事態に備えて警備をしています。
今回の大統領就任式に際して招集された州兵は50州から約2万5000人。近隣の州だけでなく、遠くはグアム島からも人員が派遣されています。
州兵をはじめ軍人は、国家を転覆させるほどの武力を行使することが可能なため、任務にあたる際は政治的に中立であることが求められます。州兵の場合、多くは着任する際に服務の宣誓をし、任務中は特定の政治的思想に基づく行動をしないと表明します。
アメリカ国防総省のジョナサン・R・ホフマン報道官と州兵総局長のダニエル・R・ホーカンソン陸軍大将、国防総省政権移行チームを率いるトーマス・M・ミュアー氏は、政権移行と大統領就任式での警備任務に関する会合を実施。その中で、12名の州兵を任務から除外するという決定をしたとのこと。
記者会見でホーカンソン州兵総局長は、任務から外される12名の州兵のうち、2名については「不適切なコメントや文章を書いていることが判明したため」と理由を説明。残る10名についての除外理由には言及しませんでした。
ホーカンソン州兵総局長は「(過激主義は)アメリカ軍のどの部門においても容認されません。問題が報告された場合、指揮官は直ちに該当する兵士に聴聞を実施し、国防総省において確立されたポリシーに基づき、法執行機関との連携を含めた対処を行います」と発言。「身分証明など、調査が必要であると確認された場合、州兵は自動的にその人物を列線から外し、任務につかせないないようにしています」と、任務除外のシステムについて説明しました。
また、疑わしい兆候が見られた場合は、直ちに指揮系統や法執行機関など適切なレベルで対処しているとホーカンソン州兵総局長は説明。「しかし、組織の大部分においては懸念していません。2万5000名のうち、問題が見つかったのは12名です……それでも万事滞りなく任務を遂行するため、念のため問題が払拭されるまで予防的処置をした訳です。実際の調査について詳細を知りたいとは思いませんが、多くの情報から、皆さんが心配しているであろう、連邦議会での一件とは無関係であるといえます」とし、急進的トランプ大統領支持者による連邦議会襲撃事件と、任務から外された州兵との関連を否定しました。
アメリカ国防総省のホフマン報道官は「任務から除外された州兵に対し、私たちは現時点において聴聞を実施していません。私たちは念には念を入れて、当該の州兵を連邦議会や大統領就任式での任務から除外しました。今後聴聞を実施し、必要であれば法執行機関や指揮系統に対し、対処を求めることになります」と表明しました。
ホフマン報道官は重ねて「私たちは全ての懸念を払拭するため、段階を踏んでいます。アメリカの人々は州兵に対して信頼を置いていますし、大統領就任式の警備計画を実行している法執行機関のチームに対しても、バイデン次期大統領が明日、安全に滞りなく大統領就任式を終えるだろうという市民の信頼にこたえなければなりません」と語っています。
この記者会見では、国防総省での政権移行チームを率いるミュアー氏から、トランプ大統領の退任にともない、現在のミラー国防長官代行が退任するため、1月20日の正午からデビッド・L・ノーキスト国防副長官が国防長官代行に就任すると発表されました。ノーキスト氏は、バイデン大統領が新しい国防長官を正式に指名するまで国防長官代行を務めます。
<出典・引用>
アメリカ国防総省 ニュースリリース
Image:U.S.National Guard/U.S.CBP/U.S.Secret Service/USCG/アメリカ国防総省
(咲村珠樹)