アメリカアフリカ軍(USAFRICOM)は2020年7月24日(現地時間)、北アフリカのリビアでロシアが当地で具体的な軍事行動を起こそうとする明確な証拠を得た、と発表しました。これらの動きは、ロシア政府が出資する民間軍事会社、ワグナー・グループを通じたものだと指摘しています。
独裁的な指導者だったカダフィ氏が2011年に死亡して以来、安定した政権が樹立できずに内戦が続くリビア。トリポリとトブルクを拠点とする2つの勢力がそれぞれに暫定政府を作って正統性を主張しているほか、それにトルコなど周辺国も介入する事態となり、数多くの難民が地中海諸国へ流出するなど混迷を極めています。
トルコやカタールが支援するトリポリの暫定政府と敵対しているのが、旧リビア政府軍を母体とし、旧陸軍のハフタル将軍が率いるリビア国民軍。リビア東部の港湾都市ベンガジを拠点とし、2019年から大規模な軍事行動を幾度となく起こしています。
ハフタル将軍率いるリビア国民軍に深く関与している、とされているのが、ロシア政府が出資して設立された民間軍事会社のワグナー・グループ。アメリカは、ワグナー・グループがロシアの表だったリビア関与を避けるためのダミー組織とみなしており、これまでにも再三にわたってロシア軍の戦闘機などがワグナー・グループのもとへ派遣されているという発表をしています。
今回、アメリカアフリカ軍が公開した偵察画像は、トリポリの暫定政府とリビア国民軍が対峙する最前線とみなされている、トリポリ近郊のスルト(カダフィ氏の出身地でもある)で撮影したとするもの。ワグナー・グループの拠点とみられ、対地雷防護能力があるロシア製の装甲トラックと、ロシア軍でも採用されている軽装甲機動車GAZ-2330ティーグル(Tigr)が写っています。
また、合わせて公開されたもう1枚の画像は、ベンガジ近郊にあるアルカディム飛行場(イスラム教シーア派の聖人、イマーム・ムサ・アルカディムの名を冠した空港)を撮影したとされるもの。こちらにはロシアのIl-76輸送機や、ワグナー・グループが運用しているとするSu-24攻撃機とともに、基地防空用のパーンツィリ対空システムの姿がそれぞれ複数写っています。
アメリカアフリカ軍の作戦参謀、ブラッドフォード・ジェリング海兵隊少将は「ロシアは表向き関与していないふりをしながら、ワグナー・グループに物資を提供しています。画像からも、それは明らかです」とコメントを発表しています。
アメリカはロシアのこの行為について、2011年に採択されたリビア情勢に対する国連安保理決議1970号(UNSCR 1970)に違反していると指摘。ロシアを含む関係各国が、リビアへの武器輸出を禁じた国連安保理決議1970号の順守をこれからも求めていく、としています。
<出典・引用>
アメリカアフリカ軍(USAFRICOM) ニュースリリース
Image:USAFRICOM
(咲村珠樹)