ロシアの北極圏における防空任務として、ヨーロッパ北東端のノヴァヤゼムリャ列島に試験配置されたMiG-31部隊の第1陣が、2021年2月8日(現地時間)に1か月間の運用期間を終え、第2陣と交代しました。厳冬期の北極圏でジェット戦闘機が運用できるのか、という実験を兼ねた取り組みで、幸い期間中のスクランブルは発生しなかったといいます。
北極圏(北緯66度33分以北の地域)にある陸地のうち、およそ半分を占めるロシア。北方から迫る脅威にどう対応するか、というのは大きな課題となっており、北極圏での防衛体制を拡充しています。
北極圏の防衛を担うロシア連邦軍北方艦隊では、北極圏の防空任務はS-400を装備した地対空ミサイル部隊が担当しています。しかし地対空ミサイルは展開から射撃までに時間を要し、空からやってくる航空機に対しては、必ずしも即応性が高いとはいえません。
このため、ロシア連邦軍では北極圏にも戦闘機を配備し、スクランブル発進ができないか模索するようになりました。とはいえ、北極圏は非常に気温が低く、雪や強風など天候の変化が激しいこともあり、戦闘機を安全に運用できるかは未知数です。
そこで北極圏の環境で運用可能であるか、実際に戦闘機を派遣して試験することになったのです。主力迎撃機MiG-31BMの部隊が派遣されたのは、アルハンゲリスク州にあるノヴァヤゼムリャ列島の南島、ユージヌィ島のロガチョヴォ飛行場(北緯71.6度)。
飛行場は一応コンクリート舗装がされているのですが、冬季は雪が降り、簡単に凍結してしまいます。ジェット燃料の凝固点はマイナス50度前後なので、燃料の保管や補給にも気を付ける必要があります。
派遣部隊第1陣はおよそ1か月間の運用を終え、第2陣と交代することに。交代に際し、北方艦隊で航空部隊(第45航空・防空軍)の司令官を務めるアレクサンダー・オトロシェンコ中将が、コラ半島セヴェロモルスクの司令部から自らMiG-31BMを操縦してロガチョヴォ飛行場を訪れ、実際に飛行場の使い勝手を確かめました。
この1か月間、ロガチョヴォに派遣されたMiG-31BMは飛行訓練を重ね、北極圏の厳しい環境の中での戦闘機運用ノウハウを確立するべく、様々なデータを収集しました。この期間中、実際にスクランブル発進する事態はなかったとのことで、第2陣も続いて訓練と情報収集に努めます。
<出典・引用>
ロシア国防省 ニュースリリース
Image:ロシア国防省
(咲村珠樹)