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ロシアの通信衛星「Gonets-M」と軍事衛星「ERA-1」打ち上げ成功

 ロシア国防省は2020年12月3日(現地時間)、民間の移動体通信衛星「Gonets-M」と、軍事衛星「ERA-1」をプレセツク宇宙基地からソユーズ2.1bロケットで打ち上げたと発表しました。衛星はすべて予定の軌道に投入され、軍事衛星ERA-1は「コスモス2548」と命名されています。

  •  移動体通信衛星「Gonets-M」は、様々な移動体(モバイル)通信を中継する通信システム「Gonets-D1M」を構成する人工衛星。最大高度1500kmの低軌道に12機の人工衛星を配置し、国土の広いロシアで地上の通信ネットワークが整備されていない地域における携帯端末のデータ通信や、遠隔地にある施設の監視データなどを中継します。

     軍事衛星「ERA-1」は、ロシア国防省が小型衛星ナビゲーションシステムや、高度な小型デバイスを宇宙空間で試験するために設計した軌道プラットフォーム。地球周回軌道上に長期間とどまり、機器が宇宙空間で正常に作動し続けるか、実地での環境試験を実施します。

     プレセツク宇宙基地は、モスクワの北800kmほどの場所にあり、軍事衛星や極軌道など高い軌道傾斜角(地球の自転面に対する軌道の角度)の軌道へ人工衛星を投入する際に使われるロケット打ち上げ基地。今回はGonets-Mが極軌道を周回するため、打ち上げ地点に選ばれました。


     ソユーズ2.1bロケットが打ち上げられたのは、モスクワ時間の12月3日未明4時14分。轟音をとどろかせ、ロケットは日の出前の暗い空へ吸い込まれていきました。



     打ち上げ後、ロシア航空宇宙軍のゲルマン・チトフ宇宙センターによる追跡管制を受けたロケットは、およそ2時間後に衛星を分離。予定軌道に投入し、打ち上げは成功しました。

     なお、宇宙ごみ(スペースデブリ)を軽減する目的から、衛星を軌道に投入する際に使用される上段の「フレガート」ロケットは、ロシア宇宙軍により軌道を外れるよう指令を受け、大気圏で燃え尽きるような措置がとられています。

     衛星はどちらも起動に成功し、ERA-1はロシア政府の識別番号「コスモス2548」が割り振られました。Gonets-MはGonets-D1Mサービスを提供するロスコスモスの関連会社「Gonets」に移管されています。

     打ち上げ成功を受け、Gonetsのゼネラルディレクタ、パヴェル・チェレンコフ氏は「所定の軌道で試験が実施されたのち、衛星はシステムに組み込まれる予定です。今年は新たに4つの地域ステーションも開設し、地上での運用体制が劇的に改善されました。これにより、Gonetsシステムはサービスの種類と加入者の両面において大きなスケールを有すことになり、様々な分野でサービスを提供できます」とのコメントを発表しています。

     移動体通信用のGonets-D1Mシステムは、ロシア政府の2016年~2025年宇宙計画の一環で進められているプロジェクトで、衛星打ち上げは2020年9月に続くもの。国土が広く、地上で通信インフラを整備するのが大変なロシアにとって、人工衛星を使うGonetsは重要なものといえるでしょう。

    <出典・引用>
    ロシア国防省 ニュースリリース
    ロスコスモス ニュースリリース
    Image:ロシア国防省/ロスコスモス

    (咲村珠樹)

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