イギリス海軍は2021年9月6日(現地時間)、最新鋭の空母プリンス・オブ・ウェールズが、今秋に予定されるイギリス軍最大の共同訓練「ジョイント・ウォリアー」に参加すると発表しました。この訓練を通じ、プリンス・オブ・ウェールズは、陸軍、空軍、海兵隊などと一体になった作戦遂行能力の確立を目指します。

 プリンス・オブ・ウェールズ(R09)は、クイーン・エリザベス級空母の2番艦として建造され、現在は戦力化に向けF-35Bなどの航空機運用や戦闘システムの試験・訓練を実施しています。7月には初めてイギリス本土を離れ、イベリア半島先端にあるイギリス領ジブラルタルを訪れました。

ジブラルタルを訪れたプリンス・オブ・ウェールズ(Image:Crown Copyright)

 今回、プリンス・オブ・ウェールズが参加することになった共同訓練「ジョイント・ウォリアー」は、毎年春と秋の2回、イギリス軍が主催してスコットランドで実施される大規模な共同訓練。イギリス陸海空軍や海兵隊をはじめ、アメリカなどNATO加盟国も参加して2週間の日程で行われています。

プリンス・オブ・ウェールズに搭載されたAH-64アパッチ(Image:Crown Copyright)

 この共同訓練「ジョイント・ウォリアー」において、プリンス・オブ・ウェールズは最前線における空母運用能力の確立を目指します。また、他国を含む陸海空軍の戦力と協力して訓練シナリオをこなすことにより、将来の共同作戦についての能力が試されることになります。

プリンス・オブ・ウェールズの作戦運用室(Image:Crown Copyright)

 ジョイント・ウォリアーへの参加に先立ち、プリンス・オブ・ウェールズは9月5日に母港ポーツマスを出港。207飛行隊のF-35Bを4機、そして第814海軍飛行隊のマーリン・ヘリコプターを搭載し、初めてジェット戦闘機とヘリコプターを同時運用する訓練を行います。

プリンス・オブ・ウェールズ艦上のF-35B(Image:Crown Copyright)
プリンス・オブ・ウェールズから発艦するF-35B(Image:Crown Copyright)

 プリンス・オブ・ウェールズ艦長のスティーブ・ヒガム大佐は「これまでを通じ、私たちは将来の空母作戦に備えて運用手順や機器、そして最も重要な乗組員についてテストすることができました。数多くの教訓を得た私たちは、前に進むことができます」と語ります。

プリンス・オブ・ウェールズの航海艦橋(Image:Crown Copyright)
プリンス・オブ・ウェールズの航海艦橋で警戒監視にあたる乗組員(Image:Crown Copyright)

 姉妹艦であるクイーン・エリザベス(R08)は、戦力化後初の遠征としてアジア太平洋方面へ進出し、中東での対テロ作戦にも従事。9月7日現在は日本の横須賀に寄港しています。6日には日本の岸防衛大臣が、ジュリア・ロングボトム駐日イギリス大使とクイーン・エリザベスの視察を行いました。

クイーン・エリザベスを視察する岸防衛大臣(Image:Crown Copyright)
イギリス軍艦旗(ホワイト・エンサイン)を贈られる岸防衛大臣(Image:Crown Copyright)

 プリンス・オブ・ウェールズ艦長のヒガム大佐によると、姉妹艦であるクイーン・エリザベスとは緊密にコミュニケーションをし、どちらかで起きた問題点なども共有しているとのこと。「両艦の乗組員は、海上での安全で効率的な航空運用実施の標準的手順を共通化するよう努力しています。プリンス・オブ・ウェールズでの運用面における取り組みの変更は、このコラボレーションにおける結果なのです」と、2隻の空母が情報共有するメリットを挙げています。

並走するクイーン・エリザベス(上)とプリンス・オブ・ウェールズ(Image:Crown Copyright)

 先行して戦力化されたクイーン・エリザベスからのノウハウも得ながら、プリンス・オブ・ウェールズは戦力化に向けた歩みを進めています。これから始まる「ジョイント・ウォリアー」参加でも、貴重な経験を積み重ねることになりそうです。

<出典・引用>
イギリス海軍 ニュースリリース
Image:Crown Copyright

(咲村珠樹)