イギリス海軍は、次期汎用フリゲート「31型(Type 31)」5隻の艦名が女王から承認されたと2021年5月19日(現地時間)に発表、艦名のテーマからクラスを「インスピレーション級」とするとしました。過去の海軍艦艇から、現在および将来のイギリス海軍の活動にインスピレーションを与える艦歴を持つ名が選ばれ、クラス名の由来となっています。
イギリス海軍の31型フリゲートは、老朽化した23型(デューク級)フリゲートの後継として計画された汎用フリゲート。2019年11月に1番艦~5番艦の建造がバブコックに発注され、2021年4月に主要な全体設計審査が終了しています。
艦名の発表は、5月19日に開催された海軍のカンファレンスで、第一海軍卿(海軍参謀総長)のトニー・ラダキン大将から行われました。選ばれた5つの名前は、イギリス海軍と海兵隊の使命における、重要な要素と任務を象徴するものだとしています。
1番艦の名称「アクティブ(Active)」は、イギリスの国益を守るため世界中に展開する海軍の使命を示すもの。先代は1977年に就役したフリゲートで、1982年のフォークランド紛争に参加し、6月13日〜14日の「タンブルダウン山の戦い」では夜間の艦砲射撃を通じて、フォークランド諸島の首都ポート・スタンリー奪還作戦を支援しています。1994年9月にパキスタン海軍に移籍、退役後の2021年1月に標的艦として沈没しました。
2番艦「ブルドッグ(Bulldog)」は、北大西洋における優位を確立する心構えを示すもの。今回で8代目となる艦名で、先々代の6代目ブルドッグは第二次世界大戦中の1941年、ナチス・ドイツのエニグマ暗号機とコードブックを潜水艦U-110から捕獲した手柄で知られる駆逐艦です。
3番艦「フォーミダブル(Formidable)」は、空母の運用を示すもの。その由来の通り先代は1939年に就役したイラストリアス級空母の2番艦で、地中海や大西洋での作戦のほか、沖縄攻略戦にも参加し特攻機の攻撃も受けています。
4番艦の「ヴェンチャラー(Venturer)」は技術と革新を象徴するもの。先代は掃海艇ですが、3代目のヴェンチャラーは潜水艦で第二次世界大戦中の1945年2月9日、北海で双方が潜航中のままドイツの潜水艦U-864を雷撃して沈めるという戦果を挙げました。これは第二次世界大戦を通じて唯一の事例です。
5番艦の「キャンベルタウン(Campbeltown)」は、海兵隊における将来のコマンド作戦を指し示すもの。初代キャンベルタウンは第二次世界大戦中にアメリカ海軍から供与された駆逐艦(元ウィックス級駆逐艦ブキャナン)で、1942年3月のブリティッシュ・コマンドスによる「サン=ナゼール強襲(チャリオット作戦)」において、フランスのサン=ナゼール港にあったドイツ海軍の大型艦船用ドック(ノルマンディ・ドック)に爆薬を満載して突っ込み自爆し、ドックを破壊したという戦果で知られています。
トニー・ラダキン第一海軍卿は「これらの艦名は、私たちが目指す価値観を呼び起こすために選ばれました。すなわち『最先端の技術』『大胆さ』そして『世界規模での運用』です。5隻はイギリスが世界に誇る造船遺産の粋を示し、今後何十年にもわたって旗を掲げ続けるでしょう」と発表の場で語っています。
1番艦のアクティブは、スコットランドのロサイスにあるバブコックの造船所において、2021年の夏にも起工される予定。同じく計画が進んでいる26型(シティ級)対潜フリゲート、2020年に建造計画が明らかになった32型フリゲートともに、将来のイギリス海軍フリゲート戦力を担うことになります。
<出典・引用>
イギリス海軍 ニュースリリース
Image:Crown Copyright
(咲村珠樹)