イギリス国防省は海軍のフリゲート「リッチモンド」が、北朝鮮の大量破壊兵器および弾道ミサイル開発を対象とした国連の制裁決議に基づき作戦行動を実施したと、2021年9月26日(現地時間)に発表しました。
リッチモンドは27日に台湾海峡も通過。アメリカ以外の軍艦が台湾海峡を通過するのは極めて異例のことです。
リッチモンド(F239)は、イギリス海軍の23型(デューク級)フリゲート10番艦として1995年に就役。現在はクイーン・エリザベス空母打撃群(CSG-21)の一員として東アジアへ派遣され、長崎県佐世保の国連軍基地にも寄港しています。
空母クイーン・エリザベス派遣の目的は、中国や北朝鮮の軍事行動が目立つアジア太平洋地域の平和と安定に、イギリスが積極的に関与するという姿勢を示すこと。その一環で、リッチモンドは2017年に採択された北朝鮮に関する国連の制裁決議が履行されているかの監視活動を実施しました。
2017年の制裁決議では、北朝鮮に対する燃料や石油製品の輸出入を禁じるもの。しかし北朝鮮側は公海上で船から船への積み替え(瀬取り)などの手法で調達しようとするので、洋上での不審船監視は国連加盟国の重要な役割です。
イギリスのウォレス国防大臣は「リッチモンドの東シナ海への展開により、国連の制裁決議に違反する疑いの船舶と、これまで監視対象となっていなかった新たな不審船の行動が特定されました。大量破壊兵器を保有しようとする北朝鮮の野望は、この地域の平和と安定を乱し、国際社会に脅威をもたらすものです。イギリス空母打撃群の東アジア展開において重要な任務である今回の活動は、これらの野望を押しとどめ、フラストレーションを与えることでしょう」との談話を発表しています。
リッチモンド艦長のボッテリル中佐は「国連安全保障理事会決議を履行する活動に参するのは、クイーン・エリザベス空母打撃群の展開において非常に重要な瞬間でした。リッチモンドは北朝鮮の大量破壊兵器開発を妨げる取り組みに参加し、疑いのある船舶を通報し、貴重な画像とデータを提供できたことを誇りに思います」との談話を発表しました。
佐世保の国連軍基地(アメリカ海軍佐世保基地に併設)は、朝鮮戦争に際して組織された国連軍のために開設されているもの。今回、リッチモンドが佐世保基地を利用して活動を実施したのは、国連軍基地の目的に沿ったものといえそうです。
東シナ海での活動を終えたリッチモンドは、ベトナム海軍との共同訓練のため日本近海を離れて南下。この際、台湾と中国とを隔てる台湾海峡を通過しました。アメリカ海軍の艦船が台湾海峡を通過し、中国を牽制することはたびたびありますが、それ以外の軍艦が台湾海峡を通過するのは極めて異例のこと。
リッチモンドが共同訓練する相手のベトナムは、南シナ海の南沙諸島や西沙諸島をめぐり、中国と領有権を争っています。ここ10年以上、イギリス海軍の軍艦は台湾海峡を通過していなかったとこから、今回の通過は海洋進出を続ける中国に対する無言のメッセージともなりそうです。
After a busy period working with partners and allies in the East China Sea, we are now en route through the Taiwan Strait to visit #Vietnam and the Vietnam People's Navy. #CSG21 International by design pic.twitter.com/0bys9eYY42
— HMS Richmond (@HMS_Richmond) September 26, 2021
<出典・引用>
イギリス国防省 プレスリリース
リッチモンド 公式Twitter(@HMS_Richmond)
Image:Crown Copyright
(咲村珠樹)