皆様こんにちは。ミリタリーにおける『食』、特にレーションについてご紹介していくDachoの『ミリヲタ的グルメ』。
今回は、個人的に世界一美味しいと思っているフランス軍コンバット・レーションです。
事情により一度に5箱を食べ比べしました。レーションを1週間食べ続けることになったのですが……
●フランス軍コンバット・レーション
これがフランス軍コンバット・レーションのパッケージです。段ボール箱をビニール袋で密封してあります。箱の表面の記載事項は、すべてフランス語と英語の両方が使われています。緑色の『WITHOUT PORK』というスタンプが押してあるものは、宗教的禁忌に配慮して豚肉を使っていないメニューです。
さて、先日レーションの山から写真のレーション5箱を発掘しました。以前、フランスからまとめて取り寄せたのですが、全部消費してしまう前に存在を忘れてしまっていました(笑)。そのせいで消費期限がどれも数年過ぎてしまっています。しょうがないので、今回はこの5箱を全部食べてみたいと思います。
このフランス軍コンバット・レーションは、これまでに何度も食べていますが外れは一切なし、どれを食べても美味しい最高のレーションです。
●パッケージ内容
パッケージには、写真のように1日分の食糧が詰めこまれています。無駄の少なさもこのレーションの優れた点だと思います。
メニューは14種類あり、1つの箱には、以下のものが入っています。
・メイン料理 300g缶詰×2種類 ・小型缶詰 2種類 ・インスタントスープ 1パック ・塩味ビスケット 9枚 ・甘いビスケット 9枚 ・キャンディー 4個 ・ヌガー 1個 ・フルーツゼリー 1個 ・チョコレートバー 1個 ・キャラメル 4個 ・インスタントコーヒー 3パック ・ティーバッグ 1パック ・ココア 1パック ・粉末ミルク 1パック ・砂糖 2パック ・粉末ジュース 1パック ・塩 2パック ・コショウ 2パック ・簡易コンロセット コンロ、固形燃料6個、マッチ1箱、固形燃料グリップ、浄水剤6錠、ビニール袋
3回の食事の他、デザートや間食も充実していますね。
なお、この一覧は、2008年製のものです。今回は、1箱だけ年式の古い2006年製があり、内容は細かいところで色々と違っています。また、現在運用中の最新のものは、上記の一覧からまた更に変更が行われています。
●試食
ここからは、レーション5日分を試食する耐久マラソンです。1箱に『3食+間食』に十分な食料が入っていますが、1メニューに付き2食でレポートしていきます。
▼メニュー1 チキンタジン
メニュー1の1食目は、『チキンタジンの缶詰』、『甘いビスケット』、『コーヒー』、『ミルキーデザートの缶詰』です。
『チキンタジンの缶詰』の『タジン』は、北アフリカの煮込み料理だそうです。チキンとジャガイモ、人参、豆などがゴロゴロとしています。ソースは、油がかなり多いですが、あっさりしていて美味しいです。エスニックな雰囲気の料理は楽しいです。
『甘いビスケット』は、ほんのり甘く、やや硬めです。フランス軍レーションのビスケットは、非常に美味しかったのですが、この2008年当時は一時的に別な製品に変わっていて、残念ながら味が落ちています。最新では、以前の美味しいビスケットが復活しています。
『ミルキーデザートの缶詰』は、チョコレート味のムースで、缶の底にチョコレートソースが敷いてあります。やや水分は抜けていましたが、フワフワで美味しいです。
▼メニュー1 ツナとポテト
メニュー1の2食目は、『ツナとポテトの缶詰』、『塩味ビスケット』、『ウサギパテ』、『キノコのスープ』、『東洋緑茶』です。
『ツナとポテトの缶詰』は、ツナとジャガイモがゴロゴロ入った煮込み料理です。薄めのトマトソースで味付けされています。
『塩味ビスケット』は、その名前とは裏腹に塩味はもちろん、ほとんど味がありません。他の料理を載せたり、飲み物に浸して食べるといい感じです。
『ウサギパテ』は、裏ごしされたような感じで、ねっとりとした食感です。これが非常に美味しく、『塩味ビスケット』に載せて食べると最高です。日本では、ウサギの肉はあまり馴染みがありませんが、臭みもなく食べやすいです。
『キノコのスープ』は、これまた非常に美味しいです。味は、ジャガイモのポタージュとチキンラーメンのスープを合わせたような感じでしょうか。美味しそうに聞こえないかもしれませんが、本当に美味しいです(笑)
『東洋緑茶』は、日本的な緑茶ではなく、ハーブ入りのお茶です。ミントと甘い香りを感じました。爽やかなお茶です。
▼メニュー2 サーモン、米と野菜
メニュー2から『サーモン、米と野菜の缶詰』、『とけたチーズの缶詰』、『魚のスープ』、『ビスケット』、『コーヒー』です。
『サーモン、米と野菜の缶詰』は、サーモンと米が半々ぐらいの量で入っています。サーモンの味がよく出ていて、これも非常に美味しいです。今回のマラソンの中で、一番好みの料理でした。
『とけたチーズの缶詰』は、クラッカーに載せたら美味しいかと思ったのですが、開封した瞬間から結構きつい匂いが漂っていました。しかも融けているはずがカチカチです。一口食べてみると、味も危険だったので断念。チーズは、デリケートな食べ物なんでしょうね。
『魚のスープ』は、コンソメスープみたいな味ですが、トロリとしていてコクがあります。これも美味しいです。
▼メニュー2 ラムタジン
メニュー2の2食目は、『ラムタジンの缶詰』、『ツナパテの缶詰』、『ビスケット』、『ミント緑茶』です。
『ラムタジンの缶詰』は、メニュー1にも出てきたタジンのラム(子羊)版ですね。ラム肉とジャガイモ、人参、豆などがゴロゴロとしています。やや黄色っぽいソースは、スパイスが色々入っていそうですが刺激はそれほどでもなく、とても美味しいです。
『ツナパテの缶詰』は、名前通りツナのパテです。かなり薄味でちょっと物足りないです。マヨネーズがとっても合いそうですが、残念ながらこのレーションには入っていません(笑)
『ミント緑茶』は、爽やかな味と香りで、肉料理によく合います。メニュー1の『東洋緑茶』よりもミントの配合が多めです。
▼メニュー3 チキン、豆とニンジン
メニュー3の1食目は、『チキン、豆とニンジンの缶詰』、『とけたチーズの缶詰』、『9種の野菜のスープ』、『ビスケット』、『コーヒー』です。
『チキン、豆とニンジンの缶詰』は、ゴロゴロしたチキンと共に大量のグリーンピースが目につきます。決して不味くはありませんが、素材の味を生かした味付けで、グリーンピースの味が結構強烈です。グリーンピースが苦手な人には無理かもしれません。
メニュー2では断念した『とけたチーズの缶詰』ですが、今回は大丈夫でした。変な匂いはしませんし、とろけた状態です。かなり柔らかいですが、いわゆるクリームチーズではなく、普通のプロセスチーズの味です。塩味がちょっと強めで、ビスケットに付けるととても美味しいです。
『9種の野菜のスープ』は、ドロリとしたポタージュスープです。パッケージを翻訳してみると、ニンジン、カブ、トマト、セロリ、サヤインゲン、ネギ、ほうれん草、タマネギなどが材料のようです。あっさり味で美味しいです。
▼メニュー3 鴨、ジャガイモとオリーブ
このレーションマラソンもようやく折り返し地点ですが、正直な所、毎日似たような料理に飽きてきました。でも頑張ります。
メニュー3の2食目は、『鴨、ジャガイモとオリーブの缶詰』、『オイルサーディンの缶詰』、『ビスケット』、『ミント緑茶』です。
『鴨、ジャガイモとオリーブの缶詰』。鴨肉は、牛肉の赤身を柔らかくしたような感じです。鴨肉とジャガイモがゴロゴロしています。
『オイルサーディンの缶詰』は、イワシのオリーブオイル漬けです。絶妙な塩加減でとても美味しいです。これもビスケットによく合います。
▼メニュー5 東洋風サラダ
メニュー5の1食目は、『東洋風サラダの缶詰』、『サーモンパテの缶詰』、『ビスケット』、『ミント緑茶』です。
『東洋風サラダの缶詰』、サラダという名前が付いていますが、トマトソースの煮込み料理でした。肉と大小の豆が大量に入っています。(本連載の『第25食 国連軍コンバットレーション』でも『地中海風ツナサラダ』は、豆がたくさん入った煮込み料理でした。)原材料を翻訳すると、七面鳥の肉、レンズ豆、白インゲン豆、ヒヨコ豆、赤ピーマン、玉ねぎ、レーズンとなっています。七面鳥は、チキンとあまり変わらない味です。以前、米軍基地のお祭りで食べた七面鳥は、筋だらけで非常に食べづらかったのですが、こちらは全く筋もなく柔らかくて食べやすいです。そして豆だらけです。一体どの辺りが『東洋風』なのかは謎ですが、中近東あたりの料理なのでしょうか?
『サーモンパテの缶詰』は、ペースト状のサーモンです。薄味で、ビスケットに載せて食べると美味しいです。
▼メニュー5 バスクチキン
メニュー5の2食目は、『バスクチキンの缶詰』、『とけたチーズの缶詰』、『アスパラガススープ』、『ビスケット』、『コーヒー』です。
『バスクチキンの缶詰』の『バスク』とは、フランスとスペインの国境付近に広がるバスク地方の『バスク』です。チキンと野菜のトマトソース煮という感じですが、非常に美味しいです。野菜は、トマト、ズッキーニ、赤ピーマン、玉ねぎ、ブラックオリーブだそうです。
『とけたチーズの缶詰』は、これも劣化していました。実は、無事だったメニュー3は別メーカーの製品だったのですが、メニュー5とメニュー2は同じ製品で共にダメになっていました。メーカーによって何か作りが違ったんでしょうね。
『アスパラガススープ』は、その名の通りアスパラガスのポタージュです。味は上品でとてもいいのですが、ちょっと青臭いですね。
▼メニュー14 ビーフサラダ
メニュー14は、唯一2006年製です。1食目は、『ビーフサラダの缶詰』、『トマトスープ』、『ミルキーデザートの缶詰』、『甘いビスケット』、『コーヒー』です。
『ビーフサラダの缶詰』は、冷たいまま食べるように、との指示があります。色とりどりの野菜が美味しそうです。トマトベースのソースは、やや甘酸っぱい爽やかな味付けでとても美味しいです。牛肉は、赤身の部分ですが柔らかくてソースによく合います。これは、日本人が知っている『サラダ』にかなり近い料理でした(笑)
『トマトスープ』は、見た目は真っ黒ですが、味も香りもトマトそのものでした。トマトジュースをスープに仕立てたような感じです。
『ミルキーデザートの缶詰』は、プリンのような感じです。チョコ味、バニラ味、コーヒー味など6種類の味があるようですが、これはキャラメル味でした。
『甘いビスケット』は、メニュー1の所で書いた美味しい方のビスケットです。軽いココア風味で、小さなチョコチップが埋まっています。微かにミントのような香りがあるように感じますが、原材料にはそれらしきものは含まれていませんでした。とっても美味しいです!
▼メニュー14 ソーセージとヒラマメ
メニュー14の2食目は、『ソーセージとヒラマメの缶詰』、『ツナのピクルスソース漬け缶詰』、『塩味ビスケット』、『東洋緑茶』です。
『ソーセージとヒラマメの缶詰』は、大きなソーセージが1本ドーンと入っていて、周りに大量のヒラマメが入っています。意外とあっさり味で、大きなソーセージは食べごたえがあります。悪くはありませんが、さすがにソーセージはドイツ軍のコンバットレーションの方が美味しかったと思います。
『ツナのピクルスソース漬け缶詰』は、酸っぱいソースにツナが漬けてあり、タマネギがたくさん載っています。かなり酸っぱいですが、美味しいです。
『塩味ビスケット』は、『甘いビスケット』と同様かなり美味しいです。サクサクとした歯触りで、旨味があります。一時的とはいえ、この美味しいビスケットが他の物に変えられていたのが本当に残念です。
▼間食
1箱のレーションには、色々な甘いものが入っています。『フルーツゼリー』、『ヌガー』、『チョコレートバー』、『キャラメル』、『キャンディ』、『ココア』、『粉末ジュース』。
『フルーツゼリー』は、乾燥させたゼリーに砂糖がまぶしてあります。硬くてネバネバした食感になっています。これは好き嫌いがあるかもしれません。
『ヌガー』は、白いブロックに色とりどりのゼリーのようなものが埋め込んであります。非常に粘っこく、歯の詰め物が心配になります(笑)これも苦手な人がいるかもしれません。
『チョコレートバー』は、カカオ70%のダークチョコレートです。甘みは少なく、苦味があり、かなり固いです。
『キャラメル』は、ちょっと大きめの粒が4個入っています。
『キャンディ』も4個ですが、メニューにより色が違います。赤いキャンディはイチゴ味、黄色いキャンディはレモン味です。
飲み物も充実しており、水分補給しやすいようにという配慮だと思います。『粉末ジュース』は、オレンジ味やレモン味があり、1リットルの水で溶きます。実際には、水筒の中に入れて作るのでしょう。
長い戦いでしたが、青汁を飲みながらなんとか完走しました。大変でしたが、やはりフランス軍のレーションは世界的に見てもトップクラスだと思いました。繊細な味の料理は、外れはありませんし、品目に無駄が少ない点も優れていると思います。
注意してください!!
フランス軍レーションを初めとする各国のレーションは、我々民間人が手に入れて食べることを前提としていません。
これらを販売する業者なども、あくまでコレクション品として取り扱っています。
食品としての安全性は、各国政府、製造業者、販売者の誰も保証してくれませんので、万が一食べる場合は、すべて自己責任になります。
(文・写真:Dacho)