フランスのヘリコプターメーカー、NHインダストリーズは2020年10月12日(現地時間)、フランス政府からNATOヘリコプター調達局(NAHEMA)を通じ、特殊部隊用に改修されたNH90ヘリコプター10機の開発を受注したと発表しました。これはフランス政府がすでに発注していた10機分のNH90を仕様変更する、という形の契約になります。

 NHインダストリーズは、NATOのヨーロッパ加盟国における汎用ヘリコプターを共同開発するため、エアバスやレオナルドなどが参加して設立された合弁企業。その成果として誕生したのがNH90です。

 今回の発注は、フランス政府の防衛力整備計画「軍事計画法2019-2025」に基づくもの。当初は兵員輸送型(TTH=Tactical Troop Heliopter)としての発注でしたが、特殊部隊向けの改修版(TFRA Standard 2)に仕様が切り替えられました。

 フランス軍の呼称でNH90 FS(Force Speciales)となる特殊部隊向け改修型は、サフランの次世代赤外線暗視装置「EuroFLIR」をはじめとする電子光学システムを採用。パイロットが使用するヘルメットマウントディスプレイには、VR技術を応用して3Dのデジタルマップで情報が表示されます。

 搭載するセンサーで得られた情報は、コクピットのパイロットだけでなく、乗員が持つタブレットなどでも参照可能。刻々と変化する状況に応じ、現場で戦術を柔軟に変更できる利点を提供します。

 また、胴体側面だけでなく後部にもドアを設け、機体側面からドアガンによる火力支援を受けながらファストロープで降下、突入することを可能にします。胴体側面には複数のファストロープ取り付けポイントを有し、乗員の迅速な突入と同時に、最も無防備になりやすい時間を最小化。オプションで燃料タンクも増設できます。

 NHインダストリーズの代表で、エアバス・ヘリコプターにおけるNH90の責任者であるナタリー・タルノー・ロード氏は「今回の発注で、NH90は革新的なデジタル技術を手にし、現在の特殊部隊が直面するであろう様々な困難を克服可能にすることでしょう。フランス陸軍で運用されることとともに、世界中のカスタマーにオファーできることを楽しみにしています」とのコメントを発表しています。

 フランスは陸軍の第4特殊部隊ヘリコプター連隊(4e RHFS)に、このNH90 FS10機を集中配置して運用する予定。NHインダストリーズによれば、2025年にも引き渡しが始められるとしています。

<出典・引用>
フランス軍事省調達局(DGA)プレスリリース
NHインダストリーズ プレスリリース
エアバス プレスリリース
Image:NHインダストリーズ

(咲村珠樹)