皆様こんにちは。ミリタリーにおける『食』、特にレーションについてご紹介していくDachoの『ミリヲタ的グルメ』。今回は、ニュージーランド軍レーションをご紹介します。

兵員数が1万人に満たない小さなニュージーランド軍ですが、レーションは他国に引けを取らない立派なものです。

【関連:第32食 スペイン軍エマージェンシー・レーション】

●ニュージーランド軍レーション

NZ軍レーションパッケージ

これがニュージーランド軍の『個人用 24時間 作戦用レーションパック(ORP)』です。
名前の通り、兵士1人の1日分の食料が詰め込まれています。パッケージの透明なビニール袋には一切表記が無く正体不明な感じですが、これは4種類あるメニューの内の『メニューB』に当たります。
私の第一印象は、「オーストラリア軍のレーションに似ている」というものでした。以前ご紹介したオーストラリア軍レーションの記事はこちら。(【ミリヲタ的グルメ】第4食 オーストラリア軍CR1M https://otakuma.net/archives/3144331.html

NZ軍と豪軍のレーション

というわけで、オーストラリア軍CR1Mと並べてみました。外装のビニール袋は違いますが、中身の個々のパッケージはよく似ていることがお分かり頂けるでしょうか。
ちょっと調べてみると、実は同じメーカーが両国軍のレーションを作っていることが分かりました。似ていて当然の兄弟関係でした(笑)

 
●パッケージ内容

NZ軍レーション内容一覧

・チキンジャンバラヤ
・モロッコ風ラム
・チョコレートチップビスケット
・マーマイト
・トマトケチャップ
・チーズ缶詰
・チョコレート2本
・キャンディ7粒
・フルーツ粒(イチゴ)1パック
・コンデンスミルク1本(チューブ)
・クラッカー
・ピーナツ&レーズン
・インスタントヌードル
・ミューズリーシリアル
・インスタントスープ
・オニオンフレーク
・ミューズリーバー2本
・リカルデントガム2パック
・インスタントコーヒー3パック
・ティーバッグ3個
・スポーツドリンク2パック
・チョコレートドリンク2パック
・砂糖6パック
・塩2パック
・胡椒2パック
・抗菌ウェットティッシュ6パック
・スポンジ
・防水マッチ1ケース
・ビニール袋
・メニュー表

こうして見ると、やはりオーストラリア軍と共通の品目がたくさんあります。
「マーマイト」は、パッケージには「酵母抽出物」と書いてあります。調べてみると、ビール醸造の過程でできた酵母を原料としたペースト食品だそうで、ニュージーランドでは人気があるそうです。ここで思い出されるのが、オーストラリア軍のレーションに入っていた「ベジマイト」です。「ベジマイト」は、野菜屑を発酵させた食べ物でしたが、「マーマイト」もそれに類似したものだそうです。
「クラッカー」は、メニュー表には「Cabin Bread」と記載されていました。これも調べてみると、クラッカーをこういう呼び方をする場合もあるようで、「Cabin Bread」として販売されている商品もありました。
メニュー表は、裏に各品目の原材料の一覧表があり、牛乳や小麦、大豆など食物アレルギーの原因となる食べ物が含まれているかどうかが太字で記載されています。食事が支給されることの多い軍隊では、食物アレルギーがあると非常に大変なのではないかと思うのですが、意外と食物アレルギーの兵士が多いのでしょうか?

 
●試食

さっそく試食です。

▼チキンジャンバラヤ

ジャンバラヤ

ジャンバラヤは、ピラフのような米料理と思っていたのですが、パッケージから出てきたのはスープにとろみをつけたような料理でした。しかも、そのとろみはかなり固めでプルプルしています。米は具としてパラパラと入っていますが、食感はほとんど感じられません。ややピリ辛で、味は悪くないですが、私の知っているジャンバラヤではありませんでした(笑)

 
▼モロッコ風ラム

モロッコ風ラム

モロッコ風ラムは、ラム肉や野菜がゴロゴロ入ったシチューのような煮込み料理でした。薄く甘めの味付けで、何かのスパイスらしき爽やかな香りがします。美味しいとは思ったものの、ちょっと薄味すぎたのでトマトケチャップを入れてみました。これも市販されているトマトケチャップよりもかなり薄味でしたが、酸味が程よいアクセントになってくれました。

 
▼クラッカーとマーマイト

クラッカー&マーマイト

クラッカーマーマイトを付けてみました。マーマイトの見た目は、ベジマイトと同じく黒いペーストです。味は、しょっぱく意外なことにちょっと美味しいです。あっさりした味噌のような感じでしょうか。クラッカーは、ミルクのような風味でそのままでも美味しいですが、マーマイトとよく合いました。

 
▼ミューズリーシリアル

ミューズリーシリアル

ミューズリーとは、穀物とナッツやドライフルーツを混ぜたものです。このパックには、粉末のミルクが入っていて水を入れて食べるようになっています。粉末ミルク以外の原材料は、オート麦、カボチャの種、ヒマワリの種、乾燥パイナップル、乾燥パパイヤ、レーズンとなっていて、オート麦が一番多く、フルーツは少量です。食べてみると、甘みはほとんどありません。加熱調理していないモサモサした麦を食べるのは、日本人にはなかなか馴染めないかもしれません。

 
▼ミューズリーバー

ミューズリーバー

ミューズリーバーは、レーズンとリンゴのペーストをクッキー生地で包んだものでした。クッキー部分は柔らかいですが、『ミューズリー』のバーなので、麦の繊維がたくさん混ぜてあり歯ごたえがあります。これが2本入っています。

 
▼オニオンフレーク

オニオンフレーク

オニオンフレークは、名前のとおりフレーク状の玉ねぎです。食感は『パリパリ』ではなく『しんなり』としていて、玉ねぎそのままの味ですが、ちょっと青臭さが強いです。加熱せずに水分をある程度飛ばしただけのようで、味付けもしてないと思います。そのまま食べるのはつらい感じだったので、インスタントヌードルに入れてみるとシャキシャキした食感が戻ってきましたが、玉ねぎの味は消えてしまいました(笑)

 
▼インスタントヌードル

インスタントヌードル

インスタントヌードルは、日本のインスタントラーメンそのものです。熱湯を入れて2分半待ち、粉末スープを混ぜたら完成です。具は、ネギかパセリのような緑のカケラがちょっとだけ入っていますが、ほぼ意味なしですね。スープの色も味も醤油ラーメンによく似ていますが、少し異国っぽい香りがあります。ナンプラーやニョクマムなど東南アジアの魚醤の香りを思い出します。メニュー表の原材料一覧を見てみると、品名は『インスタントヌードル チキン味』となっていますが、材料は『ビーフ香料』でした(笑)そして粉末醤油が含まれていますが、魚醤ではなく大豆が主原料の日本風の醤油でした。
味は、日本で市販されているインスタントラーメンに比べたらあっさりしていますが、十分に美味しいと思います。

 
▼チーズ缶詰

チーズ缶詰

チーズ缶詰は、プルタブ式の蓋を開けるとみっちりチーズが詰まっています。製造から1年半経っていましたが、変質することもなく、柔らかくて美味しかったです。

 
▼チョコレートチップビスケット

チョコレートチップビスケット

チョコレートチップビスケットは、日本風にいうならチョコチップクッキーですね。バターの風味が良くちょっと高級そうな感じで美味しかったです。

 
▼インスタントスープ

インスタントスープ

インスタントスープのパッケージには『ビーフ』と書いてあります。お湯で溶くと、パセリか何かが表面に浮かんできました。ややトロみがあり、甘めの味付けでした。

 
▼キャンディー・フルーツ粒・ピーナツ&レーズン

キャンディー・フルーツ・ピーナツ

キャンディーは、ちょっとレトロ感のある原色で7粒入っています。色ごとに味が違うのですが、食べると舌がものすごい色になりました(笑)
フルーツ粒はイチゴ味のゼリーの細切れです。
ピーナツ&レーズンは、日本でも売られている普通のピーナツとレーズンです。

 
▼チョコレート

チョコレート

チョコレートは、板チョコというよりは、細長いバーで多少厚みがあります。残念ながらちょっと安っぽい味で、日本で市販されているチョコレートよりは甘みが強いです。これが2本入っています。

 
▼リカルデントガム

リカルデントガム

リカルデントガムは、ミントの味が強いガムでした。2粒入っています。

 
▼インスタントコーヒーとコンデンスミルク

コーヒー&コンデンスミルク

大きなチューブ入りのコンデンスミルクは、どうやって使うかちょっと悩みましたが、インスタントコーヒーに入れてみました。チューブの半分ほど入れると、マックスコーヒーのようにまろやかで甘いコーヒーになりました。

 
▼ティーバッグ

ティーバッグ

ティーバッグは、アルミのパッケージの中に市販品のティーバッグが1つ入っています。これが3パックありました。

 
▼チョコレートドリンク

チョコレートドリンク

チョコレートドリンクは、甘さ控えめで飲みやすいです。これは2パック入っています。

 
▼スポーツドリンク

スポーツドリンク

スポーツドリンクは、レモンライム味とオレンジマンゴー味がそれぞれ1パックずつ入っていました。非常に色鮮やかですね。一口飲んでみると、トイレの芳香剤のような薬品的できつい匂いがして最悪でした。味は、日本でもあるようなスポーツドリンクに酸味とフルーツの香料を加えたような感じですが、ひどい匂いでギブアップしました。

 

一般的に、レーションはその国の食文化がそのまま反映されます。ニュージーランド軍レーションは、欧米各国と共通する構成でしたが、やはり『マーマイト』がニュージーランドらしくて面白かったです。
前にオーストラリア軍レーションのレポートを書いた際には、味はイマイチだというようなことを書きましたが、今回のニュージーランド軍レーションは結構美味しかったです。同じメーカーの製品なのに印象がちょっと違ったので意外でした。2つのレポートで試食したレーションは製造に何年もの開きがあるので、「より美味しく」という企業努力があったのかもしれませんね。

 
注意してください!!
ニュージーランド軍レーションを初めとする各国のレーションは、我々民間人が手に入れて食べることを前提としていません。
これらを販売する業者なども、あくまでコレクション品として取り扱っています。
食品としての安全性は、各国政府、製造業者、販売者の誰も保証してくれませんので、万が一食べる場合は、すべて自己責任になります。

(文・写真:Dacho)