民間向け宇宙飛行を手がけるヴァージン・ギャラクティックが、スポーツ用品メーカーのアンダーアーマーとコラボした宇宙服を2019年10月16日(現地時間)発表。発表会ではヴァージン・グループ総帥のリチャード・ブランソン氏自らスタイリッシュな宇宙服を着て登場しました。

 ヴァージン・グループ総帥のリチャード・ブランソン氏により、小型の再利用型宇宙船(スペースプレーン)を使って弾道飛行で宇宙を体験する、というサービスを目指して設立されたヴァージン・ギャラクティック。アメリカのニューメキシコ州に、そのターミナルである「スペースポート・アメリカ」を開設して、サービス開始に備えています。




 ヴァージン・ギャラクティックは、民間人宇宙飛行サービスで着用する宇宙服の開発を、スポーツ用品メーカーのアンダーアーマーに依頼。2019年1月に宇宙服供給パートナーとして発表していました。

 ヴァージンのリチャード・ブランソン氏とアンダーアーマーの創業者、ケビン・プランク氏は、デザイナーのニック・シエンスキー氏と話し合いを重ね、宇宙服の目指す方向性を決めていきました。

 ヴァージン・ギャラクティックの宇宙飛行では、基本的に与圧された宇宙船(スペースプレーン)内で過ごすため、与圧服や生命維持装置などを必要としません。また、長く宇宙に留まらない弾道飛行なので、有害な宇宙放射線の影響も比較的少なく、それほど大袈裟な装備が必要ないことが特徴です。

 ただし、船内が無重量状態になるので、その際に体をあちこちにぶつけてしまう危険があります。慣れない環境なので、動きやすいことも重要。デザイン作業では、これらの要素が考慮されました。

 出来上がった宇宙服(船内服)は、下着となるベースレイヤーと、上に着込むスペーススーツという構成。ベースレイヤーには伸縮性のある薄手の生地が使われ、体の動きにフィット。腰やひじなどは体温調節を容易にする生地となっており、背中には蒸れないようメッシュ素材も使われています。

 上に着込むスペーススーツは、肩やひじ、膝など無重量状態になった際、ぶつけやすい場所にパッドが入れられています。脚部にはジッパーポケットがあり、物を入れておくことができます。



 左袖にはパイロットと会話できる通信機を内蔵。腕のボタンを押して、パイロットといつでも通信が可能です。左胸の内側には、スティーブン・ホーキング博士のメッセージと、自分のフライトを記念するメモなどが書き込めるスペースまでついているのも気が利いています。



 どちらも背中には、これまで人類が宇宙に向けて歩んできた乗り物をシンボライズした「DNAシンボル」が描かれます。上2つに描かれているのは、ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船です。

 ショートブーツのスタイルを持つシューズも、伸縮性の高いニット素材で履き口ができており、脱ぎ履きのしやすさが考慮されています。また、無重量状態で足が靴の中で遊んでしまわないよう、アッパー部分はフィットするような素材と構造が用いられています。つま先部分も無重量状態でぶつけてしまうことを考慮し、保護されています。



 ニューヨークで開催された発表会では、リチャード・ブランソン氏自らが宇宙服を着てモデルと一緒に登場。



 「宇宙服は、最初の宇宙世代におけるアイコンとなる存在です。私たちの宇宙飛行のイメージは、宇宙服と切っても切れない関係にあります。私たちが宇宙第二世代の入り口として宇宙服(スペースウェア)に何を求めるかを考えた時、チャレンジは決して簡単なものではありませんでした。ケビンをはじめアンダーアーマーのスタッフと一歩ずつステップアップし、完成にこぎ着けました。実際着てみて、非常に思った通りになっていると思いますし、愛着を感じています。次は実際に宇宙に行くだけですね」とブランソン氏はコメントしています。

 ヴァージン・ギャラクティックでは、2020年にも最初の民間宇宙飛行ツアーを開催する予定。まるでスタートレックなどのSF作品に登場するようなスタイリッシュな宇宙服で、人々が宇宙へ旅立つ日も遠いことではありません。

<出典・引用>
ヴァージン・ギャラクティック プレスリリース
アンダーアーマー プレスリリース
Image:Virgin Galactic/UNDER ARMOUR

(咲村珠樹)