大祖国戦争(第二次世界大戦の独ソ戦)勝利から76年となった2021年5月9日、ロシア軍は各地で戦勝記念パレードを実施しました。モスクワではプーチン大統領が見守る中、T-34戦車など戦争当時の装備も揃ってパレードに参加。このほか、夜には各地で当時の大砲などを使った祝砲と花火の共演も見られました。
第二次世界大戦でのヨーロッパ戦線終結記念日(VE-Day)は、イギリスなどでは5月8日ですが、ロシアなど旧ソ連諸国では、ソ連とドイツとの降伏文書調印が日付をまたいだため、5月9日となっています。毎年この日には、戦没者を悼んで記念碑に献花するほか、遺骨収集で新たに見つかった戦死者の遺骨を埋葬したりといった行事が行われています。
対独戦勝記念日のメインイベントといえば、やはり軍事パレード。モスクワでは赤の広場において、プーチン大統領参列のもと、空と陸との盛大な規模で開催されました。
ショイグ国防大臣はオープンカーに乗り、部隊を巡閲。続いて各軍の兵士が徒歩で行進していきます。
行進の先頭は、戦争当時の軍服に身を固めた兵士たち。続いて、現代の軍服を着た兵士たちが行進していきます。
ロシアでは記憶の継承を重視しており、当時使われていた戦車や自走砲、大砲といった装備品を動態復元し、現用装備品とともにパレードに参加させています。とりわけ当時の主力戦車だったT-34戦車は、大量生産されて戦後も使われたこともあり、豊富な数が動態復元され、各地のパレードで戦争を象徴する存在として重要な役割を果たしています。
上空ではヘリコプターや戦闘機、爆撃機に輸送機が観閲飛行。Mi-8ヘリコプターの窓には、戦没者と思われる第二次世界大戦当時の軍人の肖像写真が取り付けられていました。
Il-76輸送機は、Tu-95爆撃機やTu-160爆撃機に空中給油のデモンストレーション。その機体塗色から「白鳥」とも称されるTu-160は、可変翼を大きく広げて飛行します。
ロシア航空宇宙軍のアクロバットチーム、ルースキエ・ヴィーチャズィ(ロシアン・ナイツ)とストリージ(スウィフツ)は、合同で大きなダイヤモンド編隊を披露。また、Su-25の編隊がロシアの国旗を表す赤・青・白のカラースモークで空を彩りました。
夜になると、ロシア南西部のヴォロネジ、黒海に面した都市ノヴォロシースクやウパ川沿いの都市トゥーラ、ブリヤート共和国の首都ウラン・ウデ、シベリアのノヴォシビルスクなどで花火が上がりました。この花火は砲兵部隊が行なっているもので、軍用トラックの荷台に設置した花火発射装置で次々に打ち上げられます。
また、花火に合わせて戦争中に使われた76mm野砲のZiS-3やZiS-5戦車砲、122mmりゅう弾砲M-30による祝砲も実施。30秒間隔で30発の祝砲が発射されました。
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、およそ1か月遅れで実施された軍事パレード。2021年は国産ワクチンの接種も進み、戦勝記念日のスケジュール通りに実施することが可能になりました。
<出典・引用>
ロシア国防省 ニュースリリース
Image:ロシア国防省
(咲村珠樹)