1982年3月から1983年2月に、テレビ朝日系列で放映された特撮番組「宇宙刑事ギャバン」。

 銀と黒のコンバットスーツに、劇中繰り広げられる多彩なアクション、唸るようなイントロに、串田アキラ氏の熱唱でもおなじみのオープニングソングも相まって、放映から約40年が経った現在も根強い人気を誇ります。

 そんなギャバンですが、劇中にて、ギャバンが搭乗した愛車「サイバリアン」を、令和の世に完全再現した投稿がTwitterで反響を呼んでいます。

「#このタグを見た人はラフ造型とその完成品を見せる #サイバリアン製作レポ
コツコツ毎日3時間、半年かけて作りましたw (2019年作成)」

 そんなつぶやきとともに自身のTwitterに投稿したのは、関西にあるコスプレ造形チーム「BUILD BANG(ビルドバン)」に所属するギャバソ氏。ハンドルネームの通り、ギャバソ氏は冒頭の「宇宙刑事ギャバン」をこよなく愛するコスプレイヤー。

「宇宙刑事ギャバン」をこよなく愛するコスプレイヤーのギャバソ氏。

 今年でコスプレ歴は17年目となり、「質感とバランス作りに重点を置いた作品作りが得意です」と語るギャバソ氏。ハロウィンの仮装の際に、「幼少の頃から好きでした」というギャバンを作成したのがきっかけで、コスプレ活動をするようになったそう。

様々なイベントにて「電送」しているギャバソ氏。

 現在は様々なイベントで、ギャバンならびに、2012年に上映された「宇宙刑事ギャバンthe movie」にて登場した「ギャバン typeG」を「蒸着」し、その様子をTwitterに投稿。ちなみにギャバソ氏は、1970年代~90年代の特撮やロボットアニメについても同様に好まれており、それについてのコスプレ活動もなされています。

 さて、今回話題になった投稿ですが、つぶやきにもある通り2019年に製作されたもの。とあるイベントに参加するのがきっかけで作られました。

 「この年の10月に開催された『レッドブル・ボックスカートレース』に出走するために製作したんです」

2019年10月に開催された「レッドブルボックスカートレース」に参戦するために製作したサイバリアン。

 この「レッドブル・ボックスカートレース」ですが、これは世界的な飲料メーカーである「Red Bull」が主催する、アマチュアチームが各自で製作したオリジナルカートに乗り込んで、特設コースでタイムを争うレース大会。2000年から始まり、日本では2009年、2012年、2017年と続き2019年が4度目の開催で、東京都稲城市にあるレジャー施設「よみうりランド」にて実施されました。ちなみに当日は、プロレーサーの佐藤琢磨氏も「参戦」し、大きな話題となっています。

 ギャバソ氏は、前回大会(当時)の2017年大会では2位ということもあり、この大会では悲願の優勝を目指し、“同僚”のシャリバンとシャイダーとともに参戦。自身は、「現在のメインです」というtypeG型のコンバットスーツを蒸着し、サイバリアンも初代の「赤」ではなく、「青」のtypeG型で参戦しました。

「同僚」のシャリバン、シャイダーとともに参戦したギャバソ氏。
現在は2012年に公開された「宇宙刑事ギャバンthe movie」の「typeG型」がメインスーツというギャバソ氏。

 そんなサイバリアンといえば、サイドカーのような丸みのある形状が特徴的ですが、ギャバソ氏はこれを見事に再現。

 まず車体に関しては、全体のバランスを見ながら3Dモデリングで作成した図面を展開。これに「サンペルカ」というポリエチレンフォームに置換し、さらに熱加工を加えて組み立て。

まずは3DCGで図面作り。
ポリエチレンフォームのサンペルカで置換し、熱加工を加えた上で組み立て。

 そこから、「自分が担当しました」という外装部分に関しては、ただ作るだけでなく広い面が単調にならないように心がけてデザインした独自のディテールを追加し、「情報量」を増やすことに。

 表面処理は、「ガンメタツーウェー」というエナメル合皮を使用。これにより、いわゆる「メタリックブルー」と呼ばれる光沢感のある青を表現しました。余談ですが、「メインカラー」である青のガンメタツーウェーに関しては、6メートルほど使用したそう。ちなみにガンメタツーウェーを検索したところ、通販サイトでは、10センチメートル単位での取り扱いとなっており、図らずもその使用量の多さが伺えます。

表面はガンメタツーウェーというエナメル合皮を使用。
通販サイトでは10センチメートルから販売されているガンメタツーウェーを何と6メートルも使用。

 銀を含めた生地貼りを終えたそれは、劇中から「電送」されたような立体感のあるボディに。しかし、これで完成かなと思いきや、「最近のコスプレでは主流なんですよ」ということで、「アピールポイント」として、様々なド派手な電飾をプラスで搭載。

 こちらについては、リアライズプラス(Realize+ @Realize_plus)に所属するメガデブさん(@Realize_mega)が作成されたとのことで、数にして350ものフルカラーLEDが、リモコンの無線操作にて複数パターンの光り方をする仕組みに。

「最近の主流」とも語る電飾部分。350もの数のLEDを使用。

 これにより、ギャバン劇中で実際に使用したのかと思うばかりの再現度に加え、「一般のお客さんと触れ合うのが楽しいんです」と語るギャバソ氏の遊び心も加わったそれは、まさに「令和版サイバリアン」。毎日3時間の作業を半年間続けて完成させました。

半年をかけて作り上げたサイバリアン。その精巧さ劇中に使用したのかと錯覚するほどのクオリティです。

 余談ですが、今回記事にするにあたり、筆者は、ギャバソ氏から画像提供をしていただいておりますが、いずれも魅力的なもので、どれを使わせていただこうかと思わず迷ってしまうほど。そこに写し出されたものは、どれも作品愛とリスペクトにあふれ、ギャバン、宇宙刑事、メタルヒーローシリーズ、特撮、コスプレ……といったファンだけでなくても魅入られるものでした。

レーザーブレードとの1枚。

 そうそう、肝心のレースはどうなったんだろう?と言うことで、ギャバソ氏にそちらについても聞いてみた筆者。

 「残念ながら結果は4位でした。でも、『造形』と『パフォーマンス』については、高得点をいただいたので嬉しかったです。自分で作ったコスプレの乗り物を走らせる機会は中々ないので、とても貴重な経験になりました」

残念ながら本番のレース結果は4位でした。

 実は「レッドブル・ボックスカートレース」は、審査基準が造形・パフォーマンス・スピードの三部門の総合点によって争われるレース。レース部分に関しては、途中車体が破損してしまうハプニングもありましたが、企業や自動車やバイク関係者を多く含む65チーム中4位と入賞に肉薄。車体のサイバリアンならびに、「宇宙刑事トリオ」揃い踏みのハイパフォーマンスには、会場で非常に高い評価を得られたそうです。

レースは振るわなかったものの、宇宙刑事揃い踏みとなったパフォーマンスは高評価。

 ということで、今回のギャバソ氏の投稿は、当時の回想を含めたもの。しかし、これを見た多くのTwitterユーザーが、思わず振り向いてしまう事態に。リプライ(返信)欄では、サイバリアンのクオリティと、ギャバソ氏の「ギャバン愛」に、ためらうことなく賞賛の嵐となりました。

 そんなギャバソ氏ですが、せっかくの機会ということで、筆者はギャバソ氏にとっての「宇宙刑事ギャバン」について熱く語っていただきました。

愛車サイバリアンとのツーショット。まるで劇中に使用したかと思ってしまうほどのクオリティ。

 「当時視聴していた時にデザインの素晴らしさとメタリックのボディに衝撃を受けたのを今でも覚えています。個人的に、キラキラ光る真空蒸着メッキのギャバンが大好きで、コスプレ造形をする際もその質感を出したいと思っています。ちなみに今は、『二代目ギャバン(typeG)』も大好きです。まだまだ再現できていない点が多々あるので、次回はその辺もクリアしていきたいですね」

<記事化協力>
ギャバソさん(@__GYAVASO__)
BUILD BANGさん(@BUILDBANG)

(向山純平)